釣具店にズラリと並ぶ釣り竿。皆さんはどのように「マイロッド」を選びますか。メーカーの知名度?値段?著名アングラーの宣伝?しかしどんな釣り竿を選ぶにしても、素材や製造方法の知識があれば、理想的な1本に出会える可能性が高まるでしょう。
まず素材について、少し歴史も交えてご説明します。
1940年代後半、第二次世界大戦後すぐに米国シェイクスピア社が中空グラスファイバーロッドの製造・販売を開始すると、グラスファイバー素材の釣り竿は世界中に浸透していきます。竹竿(和竿)に長い伝統と高い技術をもつ日本でもそれは同様でした。
そして、それ以上に決定的なインパクトをもたらしたのが、現代の釣り竿の主流となる炭素繊維素材(炭素繊維強化プラスティックス)を使用したカーボンロッドの登場です。世界の先陣を切ったのは、1972(昭和47)年、オリムピック釣具(のちのマミヤ・オーピー)が発売した「世紀あゆ」という釣り竿でした。グラスファイバー以上に軽くて強い炭素繊維素材が、長さと軽さという、相反する要素を追求する鮎竿(アユ釣り用の竿)で初めて製品化されたのです。これを機に釣り竿の世界に素材革命が起こりました。
それでは、グラスファイバーやカーボンの釣り竿はどのように作られているのでしょうか。
カーボン竿(カーボンロッド)は、素材の段階では、「プリプレグ」という接着剤を貼った紙に炭素繊維の糸を引き揃えてシート状にしたものになっています。この接着剤は熱硬化性(熱をかけると固まる)のため、シートは冷蔵庫で保管されます。プリプレグを釣り竿にするには、シートから紙をはがしてマンドレルと呼ばれる芯金に巻き付け、釜に入れて熱をかけると中の接着剤が硬化します。そこで釜から出して芯金を抜くと、釣り竿の元(ブランクス)ができるという仕組みです。
炭素繊維素材はゴルフクラブのシャフト、テニスラケット、レーシングカー、宇宙ロケットなど多分野で使われ、プリプレグの種類も実に豊富です。それらの中から釣具メーカーは釣り竿に最適な特性を持つものを選択し、製品化しています。さらに、製造過程で芯金に巻き付ける際のカッティング、種類の異なるプリプレグの組み合わせ、芯金のテーパーなどから、無数に近い組み合わせが可能になります。またメーカー独自の技術や、ジャンルによっては穂先が中空ではなくソリッドタイプであったり金属性の素材を継いでいたりと、多彩な工夫が凝らされています。
このように多種多様な現代の釣り竿の中から自分に合ったロッドを選ぶといっても、ビギナーにはむずかしいかもしれません。自信のない方は、まずはお店のスタッフに相談するのが一番ですが、釣りものによっては以下のキーワードに注目して自分なりに調べておくと、釣り竿選びのヒントになると同時に、お店のスタッフに相談する際にも会話がいっそうスムーズに進むことでしょう。
釣り竿の基本を押さえて、より楽しい釣りライフを満喫してください。