夏を迎える頃から、多くの釣具店に設置される「ハゼ釣り」コーナー。
“ハゼ”ことマハゼは、日本の沿岸部に広く棲息している一年魚で、主な釣り場は、河口付近、海辺の水路、港、船溜まりなどです。7月頃はまだ小型で“デキハゼ”などと呼ばれますが、8月のお盆過ぎから秋にかけては、大きなもので20cm近くに育ちます。

ハゼ釣りの魅力は、なんといっても「誰でも釣れて」「美味しい」こと。
仔魚は春に生まれ、夏になると汽水域や内湾の浅瀬に押し寄せます。釣りが盛んなのは、東京エリア(東京湾やその周辺の河川)が代表格ですが、ほかにも東北の仙台湾、中京の浜名湖周辺、大阪の淀川など、ハゼがよく釣れる場所は各地にあり、今も広がっています。

ハゼは港湾部、運河や水路、河川の下流部など釣り場が多彩
ハゼは港湾部、運河や水路、河川の下流部など釣り場が多彩

ハゼ釣りは釣り方もいろいろあります。

ハゼ釣りの代表的な釣り方

  • ● 岸からのミャク釣り
  • ● 岸からのウキ釣り
  • ● 岸からのチョイ投げ(リール)釣り
  • ● 岸からのルアー釣り(ハゼクラ)
  • ● ボート(船)からのミャク釣りやルアー釣り

ミャク釣り、ウキ釣り、チョイ投げ釣りは、いずれもアオイソメを使ったエサ釣りです。
リールなしのノベザオを使うか、リールザオを使うかの違いはありますが、基本はどちらも同じで、トントンとオモリで底を軽く叩くか、あるいはオモリで底を軽く叩きながら、ゆっくり手前に仕掛けを引っ張って来ます(ウキ釣りの場合はエサが底を這うくらいのウキ下にして自然に漂わせます)。すると興味を持ったハゼが近づいてくるので、あとはエサに食い付けばアタリが出ます。アタリがあれば、はっきりとした振動が手に伝わるので迷うことはありません。

ノベザオの釣りもリールザオの釣りも基本は同じ。ハゼは底にいる魚なので、釣る時もエサが底近くを動くようにします
ノベザオの釣りもリールザオの釣りも基本は同じ。ハゼは底にいる魚なので、釣る時もエサが底近くを動くようにします
ボートからのミャク釣りで釣れたハゼと仕掛け。同じ仕掛けで岸から釣ることもできます

もう一つのルアー釣り(ハゼクラ)は、最近人気の釣り方で、管理釣り場でニジマスをねらうのと同じくらいの大きさのクランクベイトを使います。クランクベイトはリールを巻くと水中に潜り込むので、その動きを利用して、連続的に底をなめるように動かします。すると、周囲にいるハゼが、「エサを見つけた仲間がいるのか?」と興味を持って集まって来て、その時にハリ(ハリが光ることでエサのように見えているのでは? と言われます)に食い付いて釣れます。

エサがなくても手軽にハゼがねらえるため、ハゼクラはちょっとしたブーム。ただし、誰でも確実に釣れるのはやはりエサ釣りです

いずれにしても、ハゼが釣れる場所は毎年それほど大きく変わりません。釣り雑誌のフィールド紹介や釣具店に掲示されているおすすめポイントを参考に出かけてみましょう。釣ったハゼはもちろん美味しく食べられます。昔から江戸前の天ぷらでは「マハゼが一番美味」という人もいて、味のよさは折り紙付きです。

ハゼの天ぷらが味わえるのは釣り人の特権

最後に、和竿を使ったハゼ釣りもご紹介しましょう。
ハゼ釣りでは、今も天然素材の和竿を好んで使う熱心なファンがいます。「ハゼの中通し竿」は、江戸和竿の代表的なジャンルの1つで、主に船の上で使います。左右に1本ずつハゼ竿を準備。船が釣り場に到着したら、左右の手に持ったサオを交互に上下に動かして、オモリでトントンと底を叩きハゼの食いを誘います。

左右に1本ずつの和竿で楽しむハゼ釣り。一度に2本のサオを操作するので、100尾が釣れる「束釣り」も珍しくありません。道具の美しさとアタリの両方を堪能します

老若男女楽しめて、伝統の釣りも今なお残るハゼ釣り。
ぜひ一度、挑戦してみてください。

※このコンテンツは、2020年9月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。