品質と性能を兼ね備えた、日本の釣り具メーカーのサオやリールは、世界中でハイクオリティと高く評価されています。
そんな中、Tenkaraという日本語そのままで、海外でも愛好者を増やしている釣りに「テンカラ」があります。

シンプルなサオ、ライン、毛バリの3点セットで始められるテンカラは、体力的にも多くの人に始めやすく、近年は自然の中でアクティブに遊びたい女性にも人気

テンカラとは、和式毛バリ釣りのこと。
ヤマメやイワナなどの渓流魚を釣る方法として、昔から日本各地の山間部で行なわれてきたものが、戦後になり全国的にそう呼ばれるようになりました。

「テンカラ」の語源自体は、実はよく分かっておらず、中部地方の一部で羽虫がチョンチョンと水面を跳ねるようすを、そのように言い表わすことから付けられたなど諸説があります。

いずれにしても、毛バリで魚を釣る文化は、実は日本に限らず世界で見られます。
西洋のフライフィッシングはその代表格。
では、フライフィッシングとテンカラは何が違うのかというと、たとえば以下のような点が挙げられます。

フライフィッシング

毛バリの種類は無数。特に自然科学が盛んになった近代のイギリスでは、元になるカゲロウのオスとメスを、毛バリでも作り分けるような試みが行なわれた歴史もある。また、リールの付いた専用のサオで複雑なフライキャスティングを行なう。

フライフィッシング用の毛バリの一例。水面に浮いて流れる、カゲロウの亜成虫の姿を模したパターンで、左右に伸びる羽根、長く伸びた尾など、毛バリの中にも実物のシルエットを意識的に盛り込んでいます
テンカラ

毛バリは簡素。さらにそれを扱うためのサオとイトも構造はシンプル。キャスティングはするが、フライキャスティングほど複雑な動きは必要ない。

テンカラ用の毛バリの一例。特定の虫に似せることはほとんど意識されておらず、水面直下を流した時に「なんとなく虫っぽいシルエット」を幅広く演出できる、最小限のパーツだけで巻かれています

複雑に色を重ねる西欧の油絵に対し、墨の濃淡だけで自然を表現する水墨画。
そんな比較にも通じるシンプルさが、テンカラの特徴です。

日本にTenkaraがあると知った、アメリカやヨーロッパのフライフィッシャーには、
「フライフィッシングは、ともすると複雑になりすぎたのではないか?」
「シンプルなタックルで魚とやり取りすると、それ自体が面白い」
ということで、実際にテンカラに転向する人も出てきました。

左の写真は、日本のテンカラ釣りに魅了され、母国でもその楽しさを紹介しているアメリカの釣り人。日本の川を訪れた時の1枚。シンプルな道具を上手に使いこなして1尾の魚と出会う。そんな楽しみもテンカラの大きな魅力です
典型的なテンカラ釣りのスタイル。毛バリそのものは、水面下に沈むので見えませんが、魚が反応することで生じる、水面近くのラインの動きや魚のきらめきを察知してアワセを行ないます

誰でも気軽に始められ、やるほどに奥深いテンカラ釣り。
冬が終わり、山の魚たちも活発に動きだすこれからの季節は、一年の中でも渓流での釣りが最も楽しくなる時期にあたります。

興味の湧いた方は、ぜひ挑戦してみてください。

※このコンテンツは、2019年3月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。
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