3月を迎えると、全国で「渓流釣り解禁」の声が聞かれる。長い冬の間、熱心な釣り人たちが再会を待ちわびるのが、ヤマメ、アマゴ、イワナといった、河川でも水が澄んだ上流部、つまり“渓流”に生息する魚たちだ。

ワインのボージョレーヌーボーの「解禁日」は、もともと、人気のあったボージョレー産の新酒ワインの、売り急ぎによる品質悪化を防ぐために作られたそう。

渓流釣りの解禁というのも、飲み物と生きものとで、対象の違いはあるが、大きく見れば、同じような目的から決められている。

代表的な渓流魚

ヤマメは渓流釣りの花形ターゲット。アマゴの生息域をのぞく、北海道から九州の広い範囲の渓流に棲息する。動きは俊敏で、パーマークと呼ぶ体側の藍色の斑点模様が美しい
アマゴは中部~西日本の太平洋側(瀬戸内側)に注ぐ河川に生息するヤマメの亜種。姿はヤマメとほぼ同じだが、パーマークに加えてこまかな朱点が体側に複数見られる
イワナはヤマメやアマゴの生息域より、さらに上流の源流域を中心に生活する渓流魚。かつては幻の魚ともいわれた

ヤマメ、アマゴ、イワナといった渓流魚は、サケの仲間だ。サケはよく知られているように、親魚が秋に海から川にやってきてペアリング・産卵。卵から孵化した稚魚は、しばらく川で過ごしたのち、翌年の春になると、栄養やエサがより豊富な海へ降りて成長する。

ヤマメ、アマゴ、イワナの先祖も、元々は同じように海に降っていたが、氷河期に陸地に取り残されたあと、一生を川で過ごすライフサイクルを獲得。現在のような、「渓流魚」になった。

ただ、今でも海に降りていた頃の性質はしっかり残されており、ヤマメの中には、地域によって、サケと同じように海に降って大きく育ち、サクラマスになるタイプがいる。アマゴで同じケースにあたるのがサツキマスだ。イワナも北海道に生息するタイプのアメマスは、海と川を往来するものがいる。

ヤマメが海に降って大型化したサクラマスは、体長60cm(時には70cm)にまで育つ。こちらも釣りでは人気の対象魚だ

このように、渓流魚は今もサケの仲間としての性質を色濃く受け継いでいる。
そのため、産卵の時期も、サケと同じ秋(だいたい10~11月)なのである。

渓流魚にとっては生涯最大のイベントである産卵の時期と、その後の稚魚が育つ春までの間は釣りをガマンして、その他の採捕も行なわない。そのために、地域により多少の違いはあるものの、全国的にだいたい10~2月の間が、渓流釣りの禁漁期と定められている。

春を迎え、山の木々が緑を増すといよいよ渓流釣りシーズン
禁漁を含めたルールを守ることで、大きく元気な魚が釣れるチャンスも増える

禁漁期のおかげで、かえって解禁が待ち遠しくなるのはワインと同じ。
魚のためのルールは、釣り人自身のためにもなっているのだ。

※このコンテンツは、2019年2月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。