師走の声を聞くと、北国の釣り人は本格的な冬支度に入る。保温性の高いダウンや中綿入りのウエアに身を包み、足回りは防寒ブーツやクロロプレンウエーダー、そしてニット帽を被って……。釣り場ではそんなスタイルをよく見るが、手もとは人によってけっこう違う。

それは冬の釣りを快適に楽しむうえで手の防寒が特に重要なことを意味しているだろう。指先が冷たくなると集中力が続かないばかりか、最悪の場合、凍傷の危険性だってある。
「冬の手袋(グローブ)はどれを使うか……」は、ベテランでも頭を悩ませる北国の釣り人の永遠のテーマといえるようだ。

常にフルキャストを続けるショアのルアーフィッシング。暖かさ以外の要素も求められる
特に細かな作業が要求される氷上のワカサギ釣り。手袋選びが釣果アップのカギを握る
岸際が凍り付く厳寒期の北海道の河川。氷点下10℃を下回ると指がかじかんでくる……

イトを結んだりエサを付けたり、あるいはルアー&フライをチェンジするなど、釣りは何かと手もとの細かい作業が多い。

基本的に手袋は厚くなるほど保温性は高いとはいえ、厚手だとゴワゴワして細かい作業はしにくい。素手感覚に近い薄手の手袋のほうがさまざまな作業を行ないやすく、ロッドやリールの操作性が高いのは間違いない。
薄手でも温かさを実感できるのは内側の布生地に毛羽を出す加工が施された“裏起毛”といわれるタイプ。さらにストレッチ性の高いタイプならストレスを大きく軽減してくれるだろう。

グローブの主な素材と特徴

フリース
ショアの釣りで愛用者が多い、柔らかくて厚みのあるフリース素材。保温性は高いとはいえ、ハリの引っ掛かりが気になる。エサを頻繁に付け替える釣りなどには不向きだろう
クロロプレン・ポリウレタン
フィット感がよく水濡れに強いクロロプレン、風や水を通しにくいポリウレタンは、釣りのジャンルを問わず人気が高い素材。素手感覚に近い薄手のタイプが好まれる傾向にある
発熱素材
発熱素材を採用した薄手の手袋。こうしたタイプは普段使いも可能で、どうしても寒くて手袋を重ね履きする際、インナーとしても重宝する。予備として携帯するのもよい
防水
キャスティングに対応する補強パーツが随所に施された防水手袋。とはいえ、内部に水が入ると一巻の終わり。水の侵入を抑える手首のベルクロ部も要チェックポイントだ

手袋をはめたまま細かい作業ができるよう釣り用手袋の中には、“3本カット”などと呼ばれる親指・人差し指・中指をカットしたタイプがある。それほど気温が低くなければ3本カットはとても重宝する。
しかし、厳寒期の北国では、わずかでも指先が露出していると指がもげそうになるほど冷たくなることもしばしば。そんな状況では、指ありの手袋に頼らざるを得ない。

なお、防寒対策で重要なのは「首・手首・足首」という“3つの首”を温めることといわれている。
手袋にカイロポケットを内蔵している物もあるので、寒さに弱い人は試す価値がある。血管が集中している手首を温めると指先の寒さも和らげてくれる。

3本カットタイプは手袋をはめたままでも細かい作業ができる。引っ掛かりの少ないクロロプレンやポリウレタンなら、小さいハリにエサを付けるワカサギ釣りにも向く
手の甲に小型カイロの収納ポケットがある手袋。やはりカイロの効果は絶大。寒がりを自認する人は、こうした手袋を買い求めたい

スピニングタックルを使用すると、キャスト時は人差し指にラインを掛けるが、それがPEラインだとキャストを続けるうちラインも手袋もダメージを受ける。終日フルキャストをしていると振り切れという事態が起きるのも珍しくない。
そこで、人差し指の部分に補強素材を採用している物を選びたい。その点、釣り用手袋の多くは、人差し指や掌など摩擦が生じやすい箇所に本革などを使用しているので安心だ。

「それでも寒い……」という人は、ハンドウォーマーを使ってみたい。手袋の上からはめるとけっこう暖かい。ハンドウォーマーにカイロを入れれば鬼に金棒?

キャスティングの釣り用に開発された手袋は、ラインに指を掛ける人差し指の部分に補強素材を採用、安心してフルキャストできる
手袋とハンドウォーマーという二枚履きも一手。ハンドウォーマーは手の甲だけなので操作性に支障をきたさず、グローブの上から装着できるのもよい。写真のアイテムは内側のポケットにカイロを入れられる

最後に。防水をうたう手袋もあるが、釣行時は替えの手袋を必ず用意したい。
濡れた手袋ほど切ない物はなく、クルマのヒーターではすぐに乾かない。濡れて冷たくなったら即交換、それが最善策だ。

※このコンテンツは、2018年12月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。