「エサとルアーはどちらが釣れるのか?」
これは釣り人にとっての永遠のテーマのひとつだ。それぞれの釣りに独特の趣と世界観があり、優劣がつけられるものでは決してない。
一例として挙げると、マダイの船釣りではエビをエサにしたテンヤ仕掛けでねらうこともあれば、「タイラバ」と呼ばれる擬似餌(ルアー)の一種で釣ることもある。時には同じ船で、ある人はエサでねらい、ある人はルアーでねらうという状況があるので、それぞれの差が見えてきやすい。
冒頭の問いの答えから先に書くと、「どちらが釣れるかは状況次第」ということになる。
たとえばマダイが海中で積極的にエサを食べている時間帯であればエサ釣りにアタリが集中する傾向がある。食い気がある魚が本物のエサに惹かれるのは自然な話といえる。
しかし、マダイが捕食する気がないときは逆のことが起きる。エサ釣りにはまったくアタリがないのにタイラバには食べてきたりするのだ。
なぜこうなるのか?
その理由はマダイがタイラバを口にする動機にある。
マダイは必ずしもタイラバを「エサ」と認識して口にしているワケではないと考えられている。正体不明の物体に対して「いったいなんだろう?」と好奇心でつついたり、時には外敵として認識し、「あっちにいけ!」と追い払うために攻撃したりする。だからこそエビや小魚とは似ても似つかないタイラバで釣れるのだ。
ちなみに4kgを超える大ダイが釣れやすいのもタイラバの特徴だ。大きいタイほど警戒心が強く、たとえ本物のエサであってもイトやハリの違和感を察知して見切ってしまうことが多いのだが、タイラバの場合は本能を刺激することで口を開かせることができるのだ。
ここまで船での釣りを例に紹介したが、岸釣りでもルアーとエサの違いはもちろんある。
たとえば岸からマダイをねらう場合、ルアーでは1投にかかる時間が短いため、投げて巻いて……の繰り返しで広い範囲を探ることができる。1投目は右、次は左へ……といった具合だ。ねらう水深を毎回変えることもできる。
対してエサ釣りの場合、投げる地点は毎回決まっているが、そのかわりに寄せエサを使えば遠くの魚をおびき寄せることもできる。
こちらから広く探るか、それとも魚によってきてもらうか……?
どちらが釣れるとは言い切れないが、これまた状況次第でどちらかが有利になることが多い。
ここまでエサとルアーの釣りの違いを紹介したが、どちらにも替えがきかない魅力がある。
どちらも楽しむことで、魚たちの新たな一面や未知の喜びに出会えることは間違いない。