春真っ盛りとなり、これらからどんどん気温が上昇するが、そこで気を遣いたいのは釣った魚の持ち帰り方だ。
新鮮な魚を美味しくいただけるのは釣り人ならではの特権。しかし、せっかくの美味しい魚も保冷法を誤ると鮮度が落ちてしまう。新鮮保存の工夫を考えてみたい。
まず知っておきたいのは、釣った魚を入れるクーラーボックスの種類。
保冷性能のカギを握るのは断熱材に用いられる素材だ。
断熱材 | 重量 | 価格 | 保冷力 |
---|---|---|---|
スチロール | ◎ | ◎ | △ |
ウレタン | ○ | ○ | ○ |
真空パネル | △ | △ | ◎ |
低価格帯モデルの多くは、ポリスチレン粒を炭化水素ガスで発泡させた【スチロール】。
その特徴を簡単にいうと自重は軽くても保冷力は低め。
一方、高価格帯モデルは、多孔質素材を金属フィルムで真空パックした【真空パネル】。
保冷力は抜群だが、自重はけっこう重い。また、真空パネルをクーラーボックスの上面、側面、底面の何面に採用しているかで保冷力や値段が変わってくる。最も高価で保冷力が高いのは6面すべてが真空パネルのタイプ。
スチロールと真空パネルの中間に位置するのが、ポリウレタンを発泡させた【ウレタン】。
重量、値段、保冷力のバランスがよい。
どれを選ぶかは懐事情もあるだろうが、高保冷力タイプを使うと氷の解けにくさに驚くに違いない。真夏の遠征時はその差がよく分かる。やはり値段が高いだけのことはあるのだ。
クーラーボックスを冷やすには厚手のビニール袋に入った氷や保冷剤、またはペットボトルに水を入れて凍らせたものを使う。
釣った魚は氷を入れて冷やしたクーラーボックスに入れるが、海の魚は真水に触れると傷みが早くなる。
注意したいのは魚を氷に直接触れないようにすること。氷が解けると浸透圧で魚が水を吸い込み、身が水っぽくなってしまうからだ。
それを防止するには、ビニール袋に魚を入れ、ロックアイスや細かく砕いた氷で包み込むようにする。もしくは、ビニール袋に入った板氷などをクーラーボックスの四隅に置き魚を真ん中に寄せて全体を冷やすようにしたい。
また、クーラーボックスに氷と海水を入れ、その中に魚を入れる海水氷を利用する手もある。
この方法も全体を冷やすことができ、海水なので浸透圧の影響が少ない。ただ、海水を入れた状態で持ち運ぶのは難しく、帰路に着く際は海水を抜いて氷だけにする。その場合、魚はビニール袋に入れるか新聞紙で覆う。特に温度が高くなるフタの裏に魚が触れないようにしたい。
刺身でいただきたい魚は、釣りあげたその場で生き締めにして血抜きを行なうのが、鮮度を保つ最高の持ち帰り方。魚はゆっくり死なせると、それだけ鮮度が落ちるからだ。
ほとんどの魚の急所は、エラ下と尾ビレ付け根の2ヵ所。
魚が生きているうちにエラブタ裏と尾ビレの付け根部分の中骨を切って生き締めにしたら次は血抜き。バッカンやバケツに海水を汲みその中に魚を入れて切り口を海水にさらせばOK。
数が釣れているときは魚をスカリなどに入れておき、アタリが途絶えたタイミングや船ならポイントを移動するときにまとめて生き締めにするとよい。
魚が釣れるたびにクーラーボックスに入れているとせっかくの保冷力が低下してしまうだけでなく、手返しが悪くなって釣果に影響しかねない。
魚は、釣りから帰って2日以内に食べるなら冷蔵庫へ。
食べ切れない分は即冷凍が鉄則。
帰宅後はその日に食べる魚を料理する前に、まずは冷凍しておく魚の下ごしらえをしたい(下ごしらえの仕方については、「釣魚別のさばき方」のコーナーを参照)。その後、1回で食べ切れる分ずつラッピングし、さらにファスナー付きのフリーザーパックに入れ、冷凍した日付を記入しておくと後で便利だ。
なお、白身魚や大型魚はさらに数日間寝かすことで、タンパク質が旨み成分であるアミノ酸に変化し、よりいっそう美味しくいただける。
解凍は食べる分だけ。冷凍は急速冷凍が適しているのに対し(雑菌の繁殖を最低限に防ぐだけでなく、細胞組織の破壊を防いで鮮度の低下を最小限にとどめるため)、解凍は時間をかける。一般家庭では冷凍庫から冷蔵庫に移す“自然解凍”がおすすめ。
調理は半解凍の段階で始めるとよい。ただし、この方法は解凍時間がとてもかかるので(小型魚でも半日はかかる)、あらかじめ調理時間を逆算して見込んでおくことが大切だ。