第4回

ウキ釣りの最高峰! 野ベラの釣りに山上湖で挑む
〜山梨のヘラブナ釣り編~

第4回は、山梨県でヘラブナをねらいます。ヘラブナは大正期から釣り用の魚として関西で放流されるようになり、やがて東日本にも人気と釣り場が広がりました。今回はそれらの中でも「特に一尾の価値が高い」とされる山上湖での野釣りに挑戦! 周囲に広がる雄大な景色に癒されつつ、エサ付けからウキの動きの観察まで、手も頭も常にフル回転の釣りにチャレンジします!

元祖日本のゲームフィッシュと真剣勝負!

こんにちは、加藤るみです。「海なし県」全8県をめぐって川釣りを制覇するこの旅も、いよいよ第4回。山上湖でヘラブナの野釣りに挑戦です。

ヘラブナはひし形の立派な体躯を持ち、引きも力強いことから「釣りを楽しむための魚」として各地に放流されてきました。一方で、フナの仲間の中でも、音や気配に敏感で警戒心が高く、さらに植物プランクトンをエサにするという独特の生態から、釣りは一筋縄ではいきません。魚を寄せるための練りエサはねらった水深(タナ)で上手く溶けるように微妙な加減がキモ。さらに長いサオでの振り込み、ウキの動きから水中のようすを理解する判断力など、ビギナーには難しさの連続! そんな高いハードルを乗り越えつつ、山上湖という最高のロケーションで、立派な「野ベラ」を釣り上げます!

【今回のチャレンジ】
山上湖の野性味あふれるヘラブナを、
ボートからの繊細なウキ釣りでキャッチ!

9月初旬、やって来たのは富士五湖の1つである山梨県の西湖。隣の精進湖と並んで、関東の野ベラ釣り場として、聖地ともいわれるフィールドです。湖畔にはヘラブナ釣りの案内をする複数の船宿があり、今回は根場(ねんば)地区にある「西湖レストハウス」のお世話になりました
先生を買って出てくれたのは生井澤聡さん。ヘラブナ釣りが大好きで、プロアングラーとして活躍。釣り具メーカーの道具開発にも携わり、年間300日以上を水辺で過ごすという名人です

日本で釣りの対象魚として長い歴史があるヘラブナ。調べてみると、山梨県の富士五湖は東日本の中でもいち早くヘラブナ釣りの人気フィールドとなった歴史があり、さらに野釣りが楽しめる貴重な場所だそう。いわゆる管理池(ヘラブナの専用釣り堀)を飛び越えて、いきなり野釣りは無謀かな?とも思いましたが、頼れる先生にレッスンしていただけることになり、思い切ってチャレンジすることにしました。

ヘラブナ釣りのウエアはアウトドアで過ごせる一般的なものでOK。オープンエアで日差しも強いので、長袖・長ズボンで日焼け対策は万全にします。この釣りは持ち込む道具が多いのですが、それらを効率よく収納&携行できるバッグ類が充実。ロッドケースとタックルバッグ(座布団にするクッションも付く)を持ち運びます
釣りのポイントまではボートで移動。今回はエンジン付きボートで引っ張ってもらう引き舟のサービスを利用しました
ワンド(湖にある小さな入江)に張られたロープにボートを係留したら準備開始。西湖の水はクリアで青く、絵葉書の一部になった気分です!
この日のサオは15尺(4.5m)。サオ掛けを船べりにセットしたら、周りにタモ、エサ(ボウルの中に複数の粉と水を合わせて作る練りエサを準備)、クッション、タックルバッグを整頓して配置します
気づくとボートの下に大きな魚の影(バスでした)! 西湖は水がとても澄んでいるので水中の魚もはっきり見えます。このポイントの水深は岸際で4mほど、エサを打つ少し沖で8mほどとのことでした。思った以上に深い!

最初の練りエサ作りから
システマチックな釣りに驚く

ヘラブナ釣りの基本の1つが練りエサ作り。この日は3タイプの粉をブレンドして作ったのですが、驚くのはその正確さ。作業は必ず計量カップを使ってきっちり行い、粉や水を入れる順番も必ずレシピどおりに進めます。「一度しか言わないから、なくなったら次の分は自分で作れるように!」と先生。すぐに動画でメモです(笑)
粉と水を混ぜたエサはボウルの中でそぼろ状にしておき、使う分をそのつど丸めてハリに付けます。この時の練り加減や圧力の掛け方が難しい!「まずはエサの真ん中にハリをしっかり入れればOK」とのことですが、このあと何度もアドバイスいただくことに
上のハリに練りエサ、下のハリに食わせエサ(固形のエサ)を付けたら準備完了!
仕掛けはボートからサオ1本分ほど先の定点(同じ場所)に振り込んで魚を集めますが、これがまた難しい!

ヘラブナ釣りを開始して、何より驚いたのがその緻密さ。適当は絶対にNG! たとえば練りエサは必ず計量カップでレシピ通りに作ります。さらに練りエサをハリに付ける際の形や圧力でも水中でのばらけ具合が変わり、それらを常にコントロールしながら釣りをします。先生いわく「ヘラブナ釣りは一に慣れ、二に慣れ」とのことですが、失敗を繰り返していく中で、その言葉の意味がじわじわと理解できてきました。

釣り開始からしばらく、小魚(ブルーギル)にちょっかいを出されたりしますが、これもエサの練り加減や振り込みが上手く行っていないことが原因、とあとから理解します

そしてウキの動き。魚がエサを食べたらスパッとウキが沈む、という基本は他の釣りと同じなのですが、ヘラブナ釣りではそれ以外にもたくさんの情報をウキから得ます。

水中の仕掛けの状態をすべてウキの動きで理解するのがヘラブナ釣り。慣れないうちはこれがまた、とっても頭を使うのです

ヘラブナ釣りの仕掛けは、上から順に、ウキ、オモリ、ハリス、ハリ(そこにエサが付く)が並んでいるので、仕掛けを振り込んで着水したウキ、始めはしばらく水面に倒れていて、その後、オモリまでがなじむと立ち上がります。次に練りエサの付いたハリまでがなじむと少しずつ沈んで行くのですが、ほどなくエサが徐々に水中で溶けていくので、今度は逆に少しずつ上がってきます。この一連の動きが「なじみ」ですが、慣れない私は仕掛けがしっかりなじむ前に、だいたい途中のどこかで練りエサがハリから取れてしまう……。すると釣りにならず、「こんなに難しいの!」と心の中で静かに叫びまくりでした。

「手(エサ付けと振り込み)」も「頭(ウキの観察)」も大忙し! もはや美しい景色そっちのけです(笑)
それでも頑張っていると、釣り開始から1時間ほどたったところでウキに動きが! 急いでアワセを入れると、サオがギュインと曲がります!
うれしい人生初ヘラブナ! 手順を踏んで自分の前に魚が釣れる状態を少しずつ作っていくという、この釣りの醍醐味がちょっと見えてきました
  • ※走行中は安全のため、シートベルトをお締めください。
  • ※安全のため、走行の際は後方視界をしっかり確保してください。
  • ※このコンテンツは、2025年9月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。