日本に全部で8つある「海なし県」出身で、子供の頃から川釣りに親しんできた加藤るみさんが、そのすべての県に出かけ、その場所ならではの魚たちを追い求める旅に出発! 時にはその道のエキスパートに助言も仰ぎながら、ジャンルもフィールドも全く違う数々の釣りに、体当たりでチャレンジしていきます。一人のアングラーとしての成長もめざすこの旅。全8県の水辺を釣り尽くした時、彼女が見つける〝新しい景色〟とは?
第8回は、長野県・遠山川で“鬼アマゴ”に挑戦!本格的な渓流釣りシーズンの到来を前に、雪解け水も残る冷たい川は魚の気分もその日しだい。自然と向き合い、自分と向き合う2日間。釣れるかどうかだけじゃない、川釣りの“本気”が詰まった最終回です!
日本の海なし全8県を巡る旅もついに最終回! ラストを飾るのは、長野県の渓流でねらうアマゴです。渓流釣りは鳥のさえずりや川のせせらぎを聞きながら、ヤマメ、アマゴ、イワナといった美しい魚をねらえるのが魅力。一尾の魚との出会いを求めて川を歩けば、時間を忘れて夢中になれます。
これまでの集大成にもなる今回のチャレンジは、自分の原点でもあるフライフィッシング。前から気になっていた“遠山の鬼アマゴ”を求めて、南信州の渓流へ向かいます!
皆さんは、“遠山の鬼アマゴ”という名前を聞いたことがありますか? アマゴはヤマメの近縁種。ただ、ヤマメとアマゴは分布域が異なり、ヤマメが北海道から九州まで広く分布しているのに対し、アマゴは中日本の太平洋側に注ぐ河川と四国にのみ生息しています。長野県の諏訪湖から遠州灘へ流れる天竜川水系にも、昔から美しいアマゴが暮らしています。
南信州の秘境・遠山郷を流れる遠山川はこの天竜川の支流。南アルプス・聖岳を源流に持つ雪解け水の冷たい流れには、立派なアマゴが育ちます。その中でも特に大きく幅広い魚体をしたものは“鬼アマゴ”と呼ばれ、渓流釣りファンの憧れです。
私もそんな遠山川のアマゴに出会いたい!毛バリを自然に流さなければならないフライフィッシングでねらうとなれば、簡単ではありません。長野県でフライフィッシングをするのも今回が初めてですが、頼れる先生のサポートを受けながら、“鬼アマゴ”を目指して挑戦することにしました。
遠山川は本流と支流の両方でアマゴがねらえます。ただ、本流エリアは長い山道を進み、最後は林道歩きも必要になる本格派フィールド。そこでまずは支流に入り、最初の一尾を目指すことにしました。
シーズン初めての渓流はいつも緊張します。上手にキャストできるか? きちんと毛バリを流せるか? さらには転ばずに川を歩けるか? でも、気が引き締まるこの感触がとても心地いいんですよね。
「川釣り」制覇の旅を続けてきた中で、成長できたと思うのは焦らなくなったこと。魚の機嫌や川の状況は日々変わるので、すぐに魚が釣れないことも珍しくありません。そこで焦らず、集中力を保ってサオを振り続ける。そんな釣りとの向き合い方を学べた気がします。
この日の釣りもさっそく試練! サクラの開花が終わったばかりの山里の川はずいぶん水が冷たいようで、思ったようにアマゴが出てきてくれません。「今日は上を向いていないかな〜」と先生。フライフィッシングでは、魚にヤル気があって水面を流れて来るエサを積極的に探している状態のことを“上を向いている”と言います。
釣り開始から2時間ほどたったころ、上流に大きな堰堤が見える淵で、この日初めて毛バリを見に来て引き返すアマゴの姿を確認しました! お昼を過ぎて魚が少し動き出したのかもしれません。
心に決めていたのは「もし毛バリに魚が出たら、ゼッタイに慌てない!」ということ。これまでのいろいろな釣りでも、限られたチャンスが来た時にミスをしないことがとても大切でした。すると淵の上流にある堰堤でその時が訪れます。
「ここはきっとチャンスがありますよ」と先生。周囲をよく見てみると、堰堤の左右両側に、それぞれアマゴがいそうな深い場所があります。
まずは向かって左側のポイントにキャスト。しかし魚の反応はありません。「今日はやっぱり厳しいのかな?」と思いつつ、次に残された右側のポイントをねらいます。するとキャストした毛バリが流れに乗り、しばらく漂ったところで、“スッ”と何かに吸い込まれました!
「早アワセはしない!」心臓がドキリとしても、慌てずに一呼吸おいてロッドを跳ね上げ、反対の手でフライラインを押さえます。するとググンと伝わる手応え!「これはゼッタイに魚だ!」とにかくバラさないように、慎重にラインをたぐり寄せました。
本当にきれい! これまでフライフィッシングの経験はありましたが、ここ一番での集中力を発揮できたのは、やっぱりいろいろな川釣りの経験をさせてもらって、釣りのリズムのようなものが学べたからだと思います。うれしかったな〜。ただ、まさかこのあとに大きな試練が待っているとは、この時は思いもしなかったのですが!(笑)