カキ養殖のイカダから釣りイトを垂れる。
名古屋を過ぎ、伊勢湾沿いの道を南下してゆくと、
車窓からの眺めは無機質な都市部の風景から一変する。
工場や倉庫が建ち並んでいた直線的な海岸線が、
伊勢を過ぎるころには自然に入り組んだリアス式海岸に変わる。
大きな貨物船やタンカーが浮かんでいた海には、
いつの間にかカキなどの養殖のためのイカダが散見されるようになる。
今回の釣り旅の目的地のひとつは、そんなイカダの上である。
イカダへ船で渡ると、周囲にはサッパの群れが見えた。
イカダ釣りというとクロダイがメインターゲットだが、場所によってはシロギスやカワハギもねらえるし、
サッパなどの小魚がいれば、それを食べるヒラメなども底に潜んでいるはずだ。
「最近は毎日、いいヒラメがあがっているよ」
渡船の船頭さんの言葉を信じて、まずはサビキ仕掛けでサッパを釣り、
それをエサにヒラメをねらってみる。
ヒラメ釣りは、アワセのタイミングが難しいとされる。
エサの小魚を食べ始めるゴツッ、ゴッゴッという硬質なアタリがあってから、
場合によっては数分も待つという。
それだけエサを食い込むのに時間がかかるのだが、
我慢しきれない釣り人は、ついついアワセを急いでしまう。
はやる気持ちを抑え、じっと魚の感触を読み、
ここぞという時に大きくサオを上げて合わせると、
鳥羽の豊かな海で小魚をたくさん食べて育ったヒラメがあがってきた。
複雑に入り組んだ海岸線を持つ志摩半島。
古くから水産業が盛んで、よく知られるイセエビのほか、
的矢湾のカキやノリ、英虞湾(あごわん)では真珠やアオサの養殖も行なわれる。
湾内は波も穏やかで養殖イカダも多く、それゆえイカダ釣りも盛んになった。
英虞湾で夕日を眺めていると、たしかに大小の岬、入江、そして島が連なる。
自らの足で歩いて日本地図を作った伊能忠敬が、
このあたりの地図作成ではたいへん苦労したというが、それもうなずける。
今、この豊かな自然環境を残す志摩半島は、大部分が伊勢志摩国立公園に含まれている。
一夜明けた翌日。
またも釣り人は、夜の明けきらない道をひた走る。
この日の目的は、船からねらうアオリイカ。
ティップランと呼ばれる釣法にチャレンジしてみる。
日本に古くから伝わる「餌木」という疑似餌をシャクって、アオリイカのかすかなアタリを待つ。
釣り始めてしばらくすると、時合が来たのだろうか。
やがて船上には、ドラッグが鳴るジーッという音とともに、
釣り人たちの歓声が響き渡った。
鳥羽周辺のボートエギング情報
【取材協力】
(イカダ釣り)浜辺丸 URL:http://www.hamabeya.com/fishingi.html
(ボートエギング)魚勘丸 URL:https://www.uokanmaru.com/
※このコンテンツは、2016年12月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。
※掲載されている写真は事前に許可を得た場所で撮影を行ったものです。