“黄葉”の湖、紅の魚影。
ブナが多い東北の森は、秋になると黄色く色付く。
普通は「紅葉」と書くことが多いが、ここでは「黄葉」。
十和田湖で10月が盛期というのが、ヒメマス釣り。
この時期湖には、真っ赤な魚体が群れをなしているという。
発荷峠を越えると、十和田湖が見える。黄色や赤に囲まれた青い湖面。
きんと冷えた空気に、気持ちが引き締まる。
峠を下りて湖畔を走ると、地元のフライフィッシャーが集まっている場所があった。
ヒメマス産卵のためのふ化場があり、その周辺には婚姻色で赤く染まったヒメマスが集まっていた。
ヒメマスのフライフィッシングでは、赤がメインの派手なフライ(毛バリ)を使う。
地元の方にフライを見せてもらうとキールタイプ、つまりフックが上を向いている。
沈めて誘う際、底に引っ掛かりにくい構造だ。
ヒメマスは基本的に、プランクトンなどを食べている。
時には小魚も食べているそうだが、なぜこんな赤いフライを食べるのかは、よく分からない。
釣りというのは結局、分からないことだらけだ。だからこそ、やめられないのだが。
ヒメマス釣りで使うのは、渓流でもよく使われる4番ロッド。
魚は目の前にいるので、遠投する必要はない。
フライを沈め、ちょんちょんと踊らせると、赤い魚影がスッと寄ってくる。
しかし......直前でUターン。フライに反応するものの、意外と難しいのだ。
なかなかくわえるまでは至らない。
その一部始終が見えるだけに、寒さを忘れて夢中になる。
黄葉が映り込んだ湖面を、真っ赤な魚体が割る。
ヒメマスは、ベニザケの陸封型。繁殖期のオスは鼻が曲がり、背が大きく盛り上がっている。
この時期に見ると、たしかにサケの仲間だと納得できる、迫力のある顔つきである。
釣りに夢中になっていると、いつの間にか湖面は夕暮れ時。
ロングドライブと釣りで疲れた身体には、やはり温泉。
奥入瀬渓流ホテルで、ゆっくりすごす。
ホテルの脇には、奥入瀬川が流れている。
黄葉に染まった美しい森を縫う流れは、春になればヤマメなどが釣れる。
その楽しみは、来春までとっておくとしよう。
湖畔の木々は、日を追うごとに黄色味を増す。十和田湖が白銀に包まれるのも、もうすぐだ。
鮮やかな秋の色に包まれ、釣り人はいつまでもロッドを振っていた。
※このコンテンツは、2016年11月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。
※掲載されている写真は事前に許可を得た場所で撮影を行ったものです。
※環境省レッドリスト等の掲載種については、法令・条例等で捕獲等が規制されている場合があります。必ず各自治体等の定めるルールに従ってください。