エンジン(2)


●横幅の削減
 バンク角を深めてコーナリング性能を大きく向上させるため、CBR600RRのエンジン横幅はクランクシャフト部分を狭く設定しています。これは、いくつかの重要部品を配置変更することで可能となりました。まず、クランクシャフトを駆動するスターターギアを、左側端のACG(交流発電機)裏という従来の位置から、右へと移動させています。これによって、ACG本体をより車体の中央に近づけることができ、結果的にACGカバー全体の容積を小さくすることが可能となりました。これに伴って、エンジンの中心線からACGカバーまでを21.5mm短縮しています。フレームの中心線に対するエンジン中心線の位置も変更し、ACGカバーとクラッチカバーはバンク角が取れるよう下端の形状を考慮しました。このような改良を積み重ねることによって、左右両側でバンク角を3度も深めることができ、レーシングスピードでのコーナリング性能に、より十分な余裕が与えられる結果となりました。


 

●全長の削減
 新型エンジンの設計のもうひとつの目標が、エンジンの全長を短縮することでした。全長が短くなれば、より長いスイングアームを収める空間が確保できるとともに、エンジン全体とライダーの双方の重心を前方へと移動でき、車体全体の中心をステアリングヘッドへと接近させることができるからです。これにより、ハンドリングレスポンスの向上と、より確実なコーナリングコントロール性を実現することが可能になりました。
 クランクケース後部に配置されたスイングアーム・ピボットとクランクシャフト間の距離を短縮するため、トランスミッション・メインシャフトをクランクケースの中心線より約50mm上に移動。これによって、三角形のレイアウトの中でカウンターシャフトをクランクシャフトに接近させることが可能となり、その結果クランクシャフトとリア・スイングアームピボットとの距離を30mm短縮できました。
 さらに新型エンジンを9mm前方へ移動させるため、シリンダーヘッドのエキゾーストポートは、現行のCBR600F4iのエンジンと比べ30度下へ向けられています。これによってエキゾーストシステムをエンジンに接近させ、エンジンを前部で効果的に短縮させることができました。
 エンジンの長さを短縮しマウント位置を前側に移動することによって、スイングアームの全長は逆に43mm長くすることが可能となり、強烈なパワーにもかかわらずサスペンションの動作はより滑らかさを増し、スイングアーム動作範囲全体にわたってドライブチェーンへのストレスも軽減しています。


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