VFR - 1986.03

VFR750F
VFR
 
開発にあたって

株式会社 本田技術研究所 朝霞研究所
専務取締役後藤 勇
  専務取締役 後藤 勇

 昨年は、ホンダの2輪にとりまして、研究開発分野は勿論のこと、生産、販売、全分野に亘って基本に立ち帰った見直しと準備の年でありました。今年は、真に力強い新しい幕開けの年、“新2輪元年”としたいと考えております。端的に申し上げますと、圧倒的に強い商品競争力をもった魅力的なモデル群の投入と、世界最速イメージを確固たるものとするHRCを軸としたレース活動の両面より、名実共にホンダがリーダーシップをとって、モーターサイクルマーケットの活性化、拡大に全力を注いで参ります。業界を取り巻く環境は益々厳しく、しかも、単にモーターサイクルという商品ジャンルの中だけで論ずる訳にはゆかなくなり、他の魅力的な遊びの商品(ウインドサーフィンやVTR等)との競合関係に置かれる様になりました。
 このような背景から、これからの商品づくりのために最も大切なことは、単に技術、スペックを売り込むことのみにとどまらず、若者達の目を絶えず惹きつけるファッション性と手頃な価格を実現する、ということと考えます。そして、その基本に流れる心は、“人間尊重の車創り”であります。テクノロジーのみが目的であった時代に終止符を打ち、あくまでお客様に満足が得られる、トータルバランスに優れた魅力あふれる車創りをして参ります。即ち、商品開発の共通ターゲットとして、全ての商品の「質」を感性のレベルにまで高め、これをベースに一つひとつのモデルに対して、個性明快で“心のときめく車-知性と感性に溢れた高い質感の車創り”を行っていきます。昨年、モーターショー等で御紹介した、VFR750F/400R、CBR250FOUR等は、この様な考え方のもとにつくられた新しい世代のモデル群の第一弾であり、「第二」、「第三」…と準備が進行中です。これからのホンダに御期待下さい。モーターサイクルが人間の知性と感性に訴えるものを持ち続ける限り、永遠の商品であると信じております。
 ホンダは、これからも手を抜くことなく、粘り強く、魅力的なモデルを、リーダーシップをとって投入し続けて参ります。このことは、単に各メーカーとの競争ということだけではなく、モーターサイクルマーケットの永続性、活性化、拡大のために、ホンダが率先してやるべきことと考えるからです。又、活気のある健全なモーターサイクルマーケットづくりには、皆様、ジャーナリストの方々との一体となった展開が必要と考えますので、今後共、御支援、御指導の程、宣しくお願い致します。



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