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この事で50km/hで定速走行するには、1.7PSあれば充分で一方180km/hを出すには52.9PSもの出力が必要になり、前述した空気抵抗は速度の2乗に比例して大きくなることが良くわかります。
次に、180km/hの伏せ姿勢(最も空気抵抗が小さいと考えられる姿勢)の走行抵抗値を(1)式により求めてみると約48PS程度になります。つまり、極力空気抵抗の小さくなる姿勢をとっても180km/hで走るためには、48PS以上のエンジン出力が必要であることがわかります。 |
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車、とくにモーターサイクルに欠かすことのできない加速について考えて見ましょう。物理の教科書の中のニュートンの第1法則F=m・αより加速度αは、α=F/mで表されています。これを、モーターサイクルの加速(走行)として考えると、一般に下記の様な関係式が成立します。
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α=P-R/W…(2)
α=加速度
P=エンジンの力
R=走行抵抗値 |
ここでグラフ(1)の走行抵抗カーブとエンジンの出力カーブをひとつのグラフに書き込んでみました。(グラフ(2)) |
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Vkm/hの速度で走行するには、Rpsあれば可能なわけです。この時、エンジンは、最大Ppsの出力を持っているので(P-R)psは、余裕出力として残っています。
そして、このVkm/hから加速しようとした時に、この(P-R)PSが実力を発揮して、次の設定速度へと引き上げて行くことになります。
また、加速度が“0”の時(グラフ(2)のX点)を考えると、これは、加速をしなくなった時のことでその車の最高速度を意味しています。 |
以上の関係により、モーターサイクルは、 |
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最高速度を出すためには走行抵抗を小さくしエンジン出力を引きあげる |
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加速性能を良くするためには、軽く、抵抗を小さく、エンジン出力をあげる |
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ということになります。同じエンジン出力であれば、 |
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“軽く、スリムな車体” |
である程良く走るモーターサイクルであることが、わかります。 |
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以上述べてきた様に、車は常に空気抵抗との戦いであり、最高速度180km/hを出すには、約53PSものエンジン出力が必要ですが、このゾーンの使用頻度、チャンスはごくまれな、限られた場所においてしか、その実力を発揮できません。また、最高速度のみを追求し、優先させると、モーターサイクルに欠くことのできない、瞬発力(レスポンス)という加速性能を損なったアンバランスなものとなってしまいます。
やはり、モーターサイクルは、それぞれの使用目的に合せて、その特性(レシオ、PS特性…etc)を選択し、最良のバランスをたもつことです。
しかも、モーターサイクルにとって最も重要なことは、一般道を、混合交通を、山坂ワインディングを、人車一体となって意のままに安定した速度で走行できることではないでしょうか。 |
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