PRELUDE - 1996.11

PRELUDE
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Vehicle dynamics

ATTS

先進の技術を搭載し、つねにホンダの新しい走りを具現化してきたプレリュード。
このたび、まったく新しい技術として採用したのが、Type Sに搭載したATTSです。
左右輪の駆動力配分によりスーパーニュートラルステアフィールを実現する画期的な
システムATTSにより、新次元の走りを提供します。



ドライビングの楽しさの向上をめざし左右輪の駆動力配分を行う
ATTS(アクティブ・トルク・トランスファー・システム)を新開発。

ATTS
従来車:
ステアリングを切ることのみで曲がる
ATTS
Type S:
ステアリングを切ること+外輪の駆動力を増やすことで曲がる
ATTSは、アクセルコントロールしながらのコーナリングや、コーナー出口に向けてアクセルを踏み加速するシーンなどでドライバーの意志をより忠実にクルマに伝え、ドライビングの楽しさを向上させるシステムです。その仕組みは、旋回の状態に応じ、内輪側の駆動力を減らし外輪側へ多く適切配分するというものです。
駆動力は従来、左右輪に常に50対50の割合で固定的に配分されていました。この場合、クルマを曲げる力はステアリングを切ることによってのみ発生します。しかし、このATTSにより旋回外側の駆動力を大きくすることで、ステアリングを切ることに加え駆動力によって新たに曲がる力を発生させることができます。つまり、旋回中タイヤの性能を有効に引き出し、曲がる力を高めることができるのです。
これにより、旋回中のアクセル操作によって発生しやすいアンダーステアや挙動の乱れなどが軽減し、ニュートラルステアの安定したコーナリングを楽しむことができます。

ATTSユニットのカットモデル
ATTSユニットのカットモデル
外側の駆動力を増やして曲がる身近な例〜手漕ぎボート〜

舵(=ステアリング)のない手漕ぎボートは、外側のオールを強く漕ぎ、旋回外側の駆動力を増やして曲がる。
イメージ


ATTSの駆動力配分を実現したメカニズムと
ドライバーの意志を反映するフィードフォワード制御

旋回中
旋回中にアクセルを踏み増した場合の軌跡イメージ
ATTSのユニットには、トランスミッションからデファレンシャルギア(デフ)を経て駆動トルクが左右50対50に等分された左右輪両方の回転が導かれています。そこで、左右輪の回転を一定のギアの組み合わせで結合させることにより、一方の駆動力を他方へ振り分け駆動力の配分を行っています。
左旋回および右旋回用のギアの組み合わせがあり、旋回に応じて多板クラッチでギアの結合度合いを調整することで左右輪の駆動力配分の比率を最大80対20まで自在にコントロールすることができます。
直進時:
直進時には各旋回クラッチは作動しない。駆動力は、エンジン→トランスミッション→デフ→左右輪と流れ、従来通り左右均等に駆動力が伝わる。
左旋回時:
左旋回クラッチが減速〜固定される。すると、デフで分岐した左輪の駆動力が、左輪用サンギア→3連ピニオンギア→右輪用サンギア→デフケース→右輪と流れ、右輪の駆動力が増加する。
右旋回時:
右旋回クラッチが減速〜固定される。すると、デフで分岐した右輪の駆動力が、デフケース→右輪用サンギア→3連ピニオンギア→左輪用サンギア→左輪と流れ、左輪の駆動力が増加する。
直進時 左旋回時 右旋回時

「操る」ためのフィードフォワード制御。
ATTSの制御フロー
ATTSの制御フロー
旋回に応じて左右輪の駆動力配分を行う多板クラッチの制御は、コンピュータ(ECU)で行います。そして、その制御は、ドライバーの操作量によって制御量を決定するフィードフォワード制御という手法を中心としています。これにより、クルマに「操られる」のではなく、クルマを「操る」、ドライバーの意志に忠実な走る楽しさのためのシステムとして機能させることができました。
制御の基準となるのは、アクセルの踏み込み量とステアリングの切れ角。それに車速と横Gをあわせて旋回状態を把握し、ATTSユニットを適切に制御します。また、ヨーレイトセンサーからのフィードバック回路も設けてあり、フィードフォワードの制御量を監視します。
システム配置概念図
システム配置概念図


ATTSにあわせ、ダブルジョイント式フロントサスペンションを専用開発。
ATTSにより、旋回外輪の駆動力を内輪より大きくすると、各キングピンまわりに発生するタイヤ転舵トルクにも差が生じることになります。そこで、ボールジョイントを2カ所に設け、仮想キングピンをボールジョイントと異なる位置に設定できる専用のダブルジョイント式サスペンションを開発。これによりホイールセンターオフセットを43.7mmから25mmとすることで転舵トルクの差を低減し、より安定した操作性を実現しました。また、ダブルジョイント式サスペンションの特長を活かし、レバー比(上下/前後とも)の向上を図ることでさらにしっかり感を向上させています。
従来フロントサスペンション
従来フロントサスペンション
ダブルジョイント式フロントサスペンション
ダブルジョイント式フロントサスペンション


ATTSを搭載したType Sに専用のアクティブコントロールABSを開発。
アクティブコントロールABS
アクティブコントロールABSのシステム構成概念図
Type Sは、ATTS(アクティブ・トルク・トランスファー・システム)のヨーレイトセンサーと横Gセンサーを用い、さらに高性能なアクティブコントロールABSを専用開発し、搭載しました。
このABSは、車輪の回転速度を検知するABSセンサーの情報に、車体の運動状態を検知するヨーレイントセンサーと横Gセンサーからの情報を加えて制動力を電子制御。まず、直進制動時は、前輪のみを左右独立制御する通常の3チャンネル制御。 そして、コーナリング時は、ヨーレイトをフィードバックして4輪の制動力を個別に制御し、最適な制動を行う4チャンネル制御に切り替わります。
また、アクティブコントロールABSは、低μ路面での回避にともなう急制動時に、ヨーレイト・フィードバックにより4輪の制動力を最適にコントロールしてより高い車両安定性を実現しました。



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