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FCXクラリティが対馬市に初上陸。市長の試乗走行やクラリティカフェなどのイベントを開催。(取材日:2月29日)

19日、長崎県対馬市でHondaの燃料電池自動車“FCXクラリティ”展示イベントが開催されました。財部能成(たからべやすなり)市長が自らハンドルを握っての試乗走行や、同車の外部給電機能で電力を賄う“クラリティカフェ”でコーヒーを無料でふるまう催しが行われ、同市に初上陸を果たしたFCXクラリティの周りには、報道陣や市民、観光客が詰めかけました。

対馬市の未来のエネルギーを考える報告会の開催に合わせてイベントを開催。

 長崎県対馬市は、福岡市から海路で約138kmの位置にある、南北82km、東西18kmの細長い島です。人口は約3万1,000人で、漁業と林業を主な産業としています。地理的には日本より韓国に近く、島の北端部と釜山市とは約50km弱しか離れていません。そのため、晴れた日には北部の海岸から釜山の街並みを望むことができるほどです。

 この対馬市で、2月19日、「対馬環境エネルギーコンソーシアム」が主催する“分散型エネルギーインフラプロジェクト・マスタープラン策定事業報告会”が開催されました。このプロジェクトは、現在、化石燃料に頼っている島のエネルギーを、太陽光、風力、木質バイオマスなどの再生可能エネルギーに転換して安定的な自給を実現し、豊かな自然と人々の繁栄の両立を目指すプロジェクトで、コンソーシアムの委員と各界の専門家たちが対馬市にとって最適なエネルギーインフラのマスタープランを練り上げ、市民の皆さんに披露したのです。

 プロジェクトが描くマスタープランの中で重要な役割を果たすのが「水素」です。
 再生可能エネルギーによって得られた電力を無駄なく活用するためには、水素という形で大量の電力を貯めて必要な時に取り出す燃料電池が有効。また比較的大きな島である対馬の中の移動には、電気自動車(EV)だけでなく航続距離の長い燃料電池自動車(FCV)が必要。
 こうしたプロジェクトの構想に見事にマッチしたのが、Hondaの「つくる・つかう・つながる」という水素社会のコンセプトです。水素エネルギー導入を具体的に検証するエネルギー検討分科会では、スマート水素ステーション(SHS)と燃料電池自動車(FCV)のパッケージなど、Hondaの水素製品群に大きな期待を寄せています。またHonda自身も、自社のコンセプトは対馬市のような離島の環境下で有効であると考えています。

 そんな背景を受けて、今回の報告会に合わせた燃料電池自動車“FCXクラリティ”展示イベントが企画されました。市民の皆さんに、水素社会が身近なものであることを少しでも実感してほしいという思いからです。FCXクラリティを報告会の会場である対馬交流センターのエントランススペースに展示し、さらに外部給電機能を使った“クラリティカフェ”によるコーヒーの無料配布イベントも実施されました。

対馬市の位置。距離的には日本より韓国に近く、古来、朝鮮半島との交流の要として重要な役割を担ってきた。

報告会の前に、財部市長自らハンドルを握って試乗走行。

報告会の前に、財部市長自らハンドルを握って試乗走行。

「航続距離600kmなら、島の端まで行って帰ってきても充分余裕あるね」

「航続距離600kmなら、島の端まで行って帰ってきても充分余裕あるね」

集まった報道陣と一緒にHondaスタッフの説明に聞き入る財部市長。

集まった報道陣と一緒にHondaスタッフの説明に聞き入る財部市長。

報告会ではHondaの「つくる・つかう・つながる」コンセプトも紹介された。

報告会ではHondaの「つくる・つかう・つながる」コンセプトも紹介された。

「つくる・つかう・つながる」をワンストップで提供するHondaの水素コンセプトに期待。

 2月19日の午前11時、対馬市でもっとも賑わう場所のひとつ、対馬交流センター前に“クラリティカフェ”が開店しました。“FCXクラリティ”は対馬初上陸とあって、行きかう人々は「見たことないクルマ。Hondaの新車かな?」と足を止めます。そこでスタッフたちがコーヒーをふるまいながら、燃料電池自動車と外部給電機能についてご説明していくという流れです。お客様の一人にお話を伺うと、広い面積を持つ対馬では、島内の移動で100km以上走行することも珍しくないため、FCVの航続距離の長さにまず魅力を感じるとおっしゃいました。
 カフェがもっとも盛況だったのは、報告会の終了後です。報告会で発表された水素エネルギー社会を担う製品の実物が展示されているとあって、講演者や聴講者の皆さんがいっせいにカフェを訪れ、コーヒーを飲みながら展示された“FCXクラリティ”や可搬式インバータボックスに見入り、意見を交わし合っていました。

 今回、Honda自身が離島におけるエネルギー問題の切実さと水素社会に対する期待の大きさをあらためて実感したイベントになりました。日本には数多くの島々があります。また海の上だけでなく、「陸の孤島」と呼ばれる地域も多く存在します。水素社会の実現は、対馬市だけでなくまさに日本中から期待されている夢なのだと言えるでしょう。

財部能成(たからべやすなり) 対馬市長

「今回、FCXクラリティを自分で運転してみましたが、パワーも乗り心地も、いつも乗ってるガソリン車より良い印象を持ちました。こんなクルマを、ぜひ市の公用車に検討したい。しかし対馬の産業を考えると、水素エネルギーで動く漁船も現われてほしいと思ってます。石油価格の乱高下に左右されず、自前で作った水素で動く漁船で出漁する。そんな未来が来たら、島の漁業は安定し、ひいては島の暮らしが安定します。水素って、そういう夢を見たくなるエネルギーですね」

森原 淳 対馬環境エネルギーコンソーシアム 会長  東京工業大学 特任教授

「私が会長を務める『対馬環境エネルギーコンソーシアム』の中では、水素エネルギー導入はもっとも力を入れているテーマのひとつです。今回の事業報告会では、水素社会はもはや夢物語ではなく、すぐそこまで来ている現実だということを、市民の皆さんに感じていただきたかった。それで対馬市を通じて、FCXクラリティ展示イベントをぜひやってほしいというお願いをさせていただきました。結果的には、市民の皆さんの理解が深まった実りある報告会になったと思います」

松嶋稔郎 本田技研工業株式会社 四輪事業本部 事業企画統括室 スマートコミュニティ企画室 参与

「今回の事業報告会の内容を聞いて、対馬市が水素社会の実現に本気で取り組もうとしていること、その中で『つくる・つかう・つなげる』コンセプトを掲げるHondaに強く期待していることをあらためて実感しました。我々は、その期待にしっかり応える製品を開発し、提供していかなければなりません。その第一歩として、FCXクラリティ展示イベントを通じて多くの市民の皆さんに未来の水素社会に触れていただけたことは、大きな成果だと思います」