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2019.03.28 update

本田技研工業(株) /(株)駒井ハルテック / Romblon Electric Cooperative, Inc. 風力発電の電気を貯めた可搬式バッテリーで、電動バイクが走る島。環境課題の解決と、豊かな暮らしの実現を目指して。

ロンブロン島での実証実験を行うことの意味。

実証実験を日本から支える、開発者の想い。

 そして、このロンブロン島での実証実験を日本から支えるメンバーたちがいます。
「今回の実証実験では再生可能エネルギーの余剰電力の受け皿としての活用が中心ですが、着脱して交換・持ち運びができるモバイルパワーパックは、単に電動バイクのバッテリーを交換式にして利便性を高めるだけではなく、移動の手段以外の用途でも使うことができます。しかしどのような製品でも、ユーザーのみなさまの生活に馴染み、喜んで使ってもらわなければその価値を発揮することはできません」。
 こう説明する、モバイルパワーパックプロジェクトの研究開発責任者を務める岩本淳(いわもとじゅん=株式会社本田技術研究所 R&Dセンター X 主任研究員)もその一人です。

着脱して交換・持ち運びができるモバイルパワーパック
着脱して交換・持ち運びができるモバイルパワーパック
可搬式バッテリーを搭載した電動バイク「PCX ELECTRIC」
可搬式バッテリーを搭載した電動バイク「PCX ELECTRIC」
バッテリーを交換しにきた、ロンブロン島の「PCX ELECTRIC」ユーザー
バッテリーを交換しにきた、ロンブロン島の「PCX ELECTRIC」ユーザー
現地から送られてくるデータは、今後再生可能エネルギーを本格的に活用していくうえで、とても重要な価値を持つ。
現地から送られてくるデータは、今後再生可能エネルギーを本格的に活用していくうえで、とても重要な価値を持つ。

 現地で問題が出ていないかを確認するだけでなく、みんなに喜んで使ってもらうために、製品性能の向上と効率化を目的として、データの収集と解析を行っているのが、遠藤広考(えんどうひろたか=株式会社本田技研研究所 R&Dセンター X)です。
 ロンブロン島から送られてくる車両やバッテリーの使用状況と発電や充電のデータから、実際の生活の中でどのような使われ方をしているのかを推測しています。また、バッテリーの長寿命化や効率的なバッテリー交換の方法なども、解析結果を元に検討しています。

 こうした移動に利用するエネルギーのビックデータを収集して最適化を進めていったその先で、ユーザーの豊かな暮らしにつなげていきたいと遠藤は語ります。
「バッテリーの充放電量の的確な予測は地域に適したエネルギーマネジメントの提案に、充電タイミングを元に行う渋滞の予測は、渋滞の緩和に役立つ可能性も高くなります。こうしたモバイルパワーパックを使った新たな付加価値の提供は、再生可能エネルギーを本格的に活用していく上でも重要であると考えています」 。

 そして、このモバイルパワーパックを搭載する「PCX ELECTRIC」の、LPL(ラージプロジェクトリーダー:開発責任者)を務めた三ツ川誠(みつかわまこと=株式会社本田技術研究所 二輪R&Dセンター 主任研究員)が説明します。
「世界の二輪市場で高いシェアを獲得しているHondaとして、二輪車の電動化は避けては通れません。今回『PCX ELECTRIC』の開発にあたっては、航続距離が限定されることやバッテリー充電の待ち時間などの課題をクリアする技術として、着脱・交換式のバッテリー搭載を前提に車両の開発を進めてきました」。

(株)本田技術研究所 R&Dセンター X 主任研究員 岩本淳
(株)本田技術研究所 R&Dセンター X 主任研究員 岩本淳
((株)本田技術研究所 R&Dセンター X 遠藤広考
(株)本田技術研究所 R&Dセンター X 遠藤広考
(株)本田技術研究所 二輪R&Dセンター 主任研究員 三ツ川誠
(株)本田技術研究所 二輪R&Dセンター 主任研究員 三ツ川誠

本当の意味で、CO2フリーの移動を実現するために。

 こうした開発者たちの想いが形になった、モバイルパワーパックを搭載した「PCX ELECTRIC」は、ロンブロン島の街中の至るところで見かけることができます。そしてユーザーはみな、難なく充電ステーションでバッテリー交換を済ませ、日々の移動手段としてつかっていました。
 ユーザーが近づくと自動で開く充電ステーションに使用済みのモバイルパワーパックを置けば、入れ替わるようにして充電済のモバイルパワーパックが出てきます。これを受け取り「PCX ELECTRIC」に載せるだけ。10数秒も待たずにバッテリー交換が完了し、再び走り出すことができるのです。これだけ簡単なバッテリー交換システムなので、ユーザーは充電時間を気にする必要はありません。また充電ステーションが島内5カ所に設置してありバッテリーの充電が切れる前に交換ができるため、航続距離の心配もありません。

街中の至るところで見かけることができる「PCX ELECTRIC」。バッテリー交換の時間や手間がかからないことから、島民の日常の足としてすっかりなじんでいる。
街中の至るところで見かけることができる「PCX ELECTRIC」。バッテリー交換の時間や手間がかからないことから、島民の日常の足としてすっかりなじんでいる。

 現在100台を超える「PCX ELECTRIC」が走り回っている、実証実験の舞台ロンブロン島。しかし、この電動バイクのLPLである三ツ川は、ただ “電動バイクを多く走らせるだけ” ではCO2排出量の低減につながらないと語ります。
「電動バイクは、走っているときはCO2フリーです。でも環境負荷を語る上では走行時だけでなく、その電気をつくる過程でもCO2排出量を減らさなくては、本当の意味でのCO2フリーは実現できません。国や地域によって発電方法は違うわけですから、ただ電動バイクを走らせるだけでなく、電気をつくるところからCO2排出量を減らすことを考える必要があります」。

 三ツ川の言う「Well to Wheel」の考え方から見ると、ロンブロン島のように、風力発電で作られたクリーンな電力で電動バイクを走らせることこそが、本当の意味でCO2フリー社会につながっていくのです。

 さらにモバイルパワーパックの観点から、岩本が説明を続けます。
「ロンブロン島のように再生可能エネルギーを導入し、かつ島や都市など地域ごとに電力供給網をつくる分散型発電は、これから世界各地で増えていくと考えています。余剰電力の受け皿になり、移動の手段だけでなく日々の暮らしでも使えるモバイルパワーパックは、電力供給が安定していない地域でも、大いに価値を発揮するでしょう」。

 そして岩本はこのバッテリーが広く普及することで、更なる価値を提供できるのではと語ります。
「最終的には、乾電池のような気軽さでモバイルパワーパックを入手できるような社会インフラの構築を目指しています。そうなることで、いつでも、どこでも、だれでも、クリーンな電力を得られる効率的な、持続的な社会が実現すると考えています」。

本来の意味は、石油を採掘してから車が走るまで。石油以外でも、エネルギーを作り出してからそのエネルギーを使って車が走るまで。

みなさまに喜んで受け入れられてこそ、本当の意味で豊かで持続可能な社会を実現する。

 ロンブロンの港町を見下ろす白い風車は、そのふもとで子どもたちが遊び、家族で写真撮影を行うなど、竣工直後から島のランドマークとなって親しまれています。そしてこの風力発電機でつくられた電気は、島の送電網を通じて島民の暮らしだけではなく、島内にある充電ステーションとつながり、モバイルパワーパックを通して電動バイクの動力にもつかわれています。

 再生可能エネルギー普及の必要性を、ロメルコのレネ氏が想いを込めて話します。
「私たちのように、大きな組織ではなくても再生可能エネルギーと電動車両を導入することで、CO2排出量を低減できることを広くPRしています。気候変動への対応に貢献できるということを、他地域の電力組合にも伝えていきたいです」。
 そして「島の外の人に自慢できたり、風車が回ってるだけでも嬉しくなったり、島民から愛される風車になってほしいです。風車が回ることでこの島の電気がつくられていることを、子どもたちに知ってもらえたらいいですよね」と語る(株)駒井ハルテック豊田氏の次世代へとつなぐための社会浸透の想い。

 それぞれの想いを胸に、長い時間をかけて共に準備を進めてきた彼らの言葉を受けて、街を走る「PCX ELECTRIC」を目で追いながらHondaの榊が語ります。
「多用途に使用ができ、再生可能エネルギーの活用の幅を広めるモバイルパワーパックに、再生可能エネルギーの余剰電力を貯め『PCX ELECTRIC』を走らせる。このロンブロン島の実証実験はまさにHondaの将来像と言うことができます。
 風車も、街のシンボリック的な存在となりました。また、バイクのユーザーからは『充電が想像よりも簡単』『とても走りやすい』との声を多く聞くことができました。 
 こうして島民のみなさんに喜んで受け入れられることこそ、その先の地球環境課題を解決し、豊かで持続可能な社会を実現することにつながるのだと私たちは考えています」。

登場人物の所属・役職は取材当時のものです。