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2019.01.09 update

本田技研工業(株)/ 日本重化学工業(株)/ 松田産業(株)

求められる、資源循環型社会の実現。業界を超えた3社が挑む、リチウムイオン電池の資源化リサイクル。

これまでリサイクルが難しいとされてきた、ハイブリッドカーなどの電動車に駆動用バッテリーとして搭載されているリチウムイオン電池。しかし今回、電池材料等を製造している合金メーカー日本重化学工業(株)、貴金属リサイクルや廃棄物処理を行う松田産業(株)とHondaの3社が、それぞれの知見を集約してリチウムイオン電池の高度リサイクル技術を確立。実用化に向けて大きな一歩を踏み出しました。近い将来、大量に発生するであろう使用済リチウムイオン電池を安全に処理し、そして有効な資源として再利用できる道筋を立てた合同プロジェクトの足跡をたどります。

本田技研工業(株)/ 日本重化学工業(株)/ 松田産業(株) 本田技研工業(株)/ 日本重化学工業(株)/ 松田産業(株)

これまでリサイクルが難しいとされてきた、ハイブリッドカーなどの電動車に駆動用バッテリーとして搭載されているリチウムイオン電池。しかし今回、電池材料等を製造している合金メーカー日本重化学工業(株)、貴金属リサイクルや廃棄物処理を行う松田産業(株)とHondaの3社が、それぞれの知見を集約してリチウムイオン電池の高度リサイクル技術を確立。実用化に向けて大きな一歩を踏み出しました。近い将来、大量に発生するであろう使用済リチウムイオン電池を安全に処理し、そして有効な資源として再利用できる道筋を立てた合同プロジェクトの足跡をたどります。

情報端末から自動車まで、あらゆる分野で使用されるリチウムイオン電池。

  • 2012年に国内で初めてリチウムイオン電池を採用した “CR-Z”

    2012年に国内で初めてリチウムイオン電池を採用した “CR-Z”

  • “CR-Z” に搭載されたリチウムイオン電池のカットモデル。

    “CR-Z” に搭載されたリチウムイオン電池のカットモデル。

他の二次電池の2倍〜5倍というエネルギー密度を持つリチウムイオン電池は、小型・軽量・大容量を実現する電池として様々な機器に使用されている。
他の二次電池の2倍〜5倍というエネルギー密度を持つリチウムイオン電池は、小型・軽量・大容量を実現する電池として様々な機器に使用されている。

 今や私たちの生活に欠かせないツールとなっているノートパソコンやスマートフォンなどの情報端末。これらモバイル型電子機器に欠かせないのが、リチウムイオン電池と呼ばれる高性能バッテリーです。

 1980年代半ばまで家庭用電池はマンガン乾電池やアルカリ乾電池などの使い捨て電池(一次電池)が多く使われ、その後は充電可能な小型電池(二次電池)であるニッカド電池やニッケル水素電池も広く普及していきました。そして1991年、さらに大容量で小型・軽量なリチウムイオン電池が初めて商品化され、携帯電話やノートPCなどに搭載されて広く普及していきました。
 一方、自動車の世界では1990年代末にハイブリッドカーが登場し、クルマの電動化が広まり始めます。当初、この駆動用バッテリーにはニッケル水素電池が使用されていましたが、より高性能なバッテリーを、というニーズが高まり、2010年前後からリチウムイオン電池が採用されるようになります。
 Hondaでは、2012年にマイナーチェンジした “CR-Z” がリチウムイオン電池を搭載したのが国内のハイブリッド初の採用例となり、現在ではHondaの電動車両(ハイブリッドカー、プラグイン・ハイブリッドカー、燃料電池自動車)の駆動用バッテリーはすべて、リチウムイオン電池になっています。

 このように、従来の二次電池より小型・軽量・大容量を実現できる優れた特性から、リチウムイオン電池はモバイル情報端末から自動車までの様々な機器に使用されるようになっていったのです。

リチウムイオン電池を取り巻くリサイクルの現状に憂い。

本田技研工業株式会社 カスタマーファースト本部 資源循環推進部 部長 阿部知和
本田技研工業株式会社 カスタマーファースト本部 資源循環推進部 部長 阿部知和
回収した使用済リチウムイオン電池を焼却してスラグ化し、路盤材などに利用する技術も開発された。
回収した使用済リチウムイオン電池を焼却してスラグ化し、路盤材などに利用する技術も開発された。

 “CR-Z” に初めて採用されて以来、Hondaは “フィット ハイブリッド” や “ヴェゼル” など新たに発売するハイブリッドカーの駆動用バッテリーに、リチウムイオン電池を積極的に搭載していきました。パワーや燃費にも有利な小型・軽量・大容量という優れた特性も含めて、ハイブリッドカーのバッテリーに最適であるという判断からです。

 しかし2014年当時、このリチウムイオン電池拡大に複雑な思いを抱く人物がいました。阿部知和(あべともかず=Honda カスタマーファースト本部 資源循環推進部 部長)です。
「リチウムイオン電池の拡大は、Hondaだけでなく自動車業界全体の傾向でした。このまま行けば、近い将来バッテリーとしての寿命を終えた使用済リチウムイオン電池が大量に発生し始める。一方、この電池にはコバルトやニッケルなどのレアメタルが使われていますが、当時はこれらを取り出して資源として有効に再利用するリサイクル手法は存在しませんでした。リチウムイオン電池の資源化リサイクル実現は、自動車業界にとっての課題になりつつあったのです」(阿部)
 それまで、パソコンや家電に使用されている小さな電池はともかく、自動車用の巨大なリチウムイオン電池を資源化リサイクルするのは困難だと言われてきました。コバルトやニッケルを技術的に取り出すことは可能ですが、元々含有量もさほど多くはないので採算が取れず、事業化するリサイクル業者がなかなか現れなかったのです。

「リチウムイオン電池のもっとも手間がかからない処理方法は焼却して廃棄することですが、それでは資源をすべて無駄にしてしまいます。そこで、焼却したものをスラグ化して路盤材(道路の舗装と地面の間に敷き詰めるもの)として利用する技術なども出てきましたが、どちらもニッケルやコバルトといった希少資源を有効に循環させるという理想像からは遠かった」(阿部)
 2014年当時、こうした状況を憂いた阿部は、自身の心の中である決意を固めました。
「循環型社会を実現するためには、競争優先かつ会社単体で物事を考えるのではなく、会社や業界の壁を越え、“協調”してリサイクル手法を確立する必要がある。そのために私は、リチウムイオン電池を搭載するクルマを作る自動車業界に携わる者の責任として、他業界とも連携し、電池を資源として循環させるリサイクル手法を見出さなければいけないと考えました」(阿部)