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2018.04.26 update

本田技研工業(株)・(株)リバネス 次世代水素教育プロジェクト子どもたちに水素エネルギーの原体験を提供し、一緒に未来の答えを探す。Hondaとリバネスが共創した “次世代水素教育プロジェクト”

初年度トライアルの手ごたえは充分。プログラムを進化させて活動を本格化。

生徒たちに充分な体験を提供するため、オリジナルのFCVミニカーの開発に着手。

次世代水素教育プロジェクトで開発したオリジナルFCVミニカー(写真は最新型のバージョン4)。
次世代水素教育プロジェクトで開発したオリジナルFCVミニカー(写真は最新型のバージョン4)。
  • 注射器を水素タンクとし、ボンベから水素を充填。

    注射器を水素タンクとし、ボンベから水素を充填。

  • 燃料電池スタックに水素を送り込むと、LEDライトが点灯して発電したことを確認できる。

    燃料電池スタックに水素を送り込むと、LEDライトが点灯して発電したことを確認できる。

  • 燃料電池スタックを一から組み立てることも可能で、そのための設計図も添付される。

    燃料電池スタックを一から組み立てることも可能で、そのための設計図も添付される。

  • セルの数を変えて発電量の違いを比較するなど、専門的な実験にも対応可能。

    セルの数を変えて発電量の違いを比較するなど、専門的な実験にも対応可能。

 2016年を迎えてプロジェクトが2年目に入ると、寺岡らは水素実験教室授業プログラムの最後の課題、オリジナルFCVミニカーの開発に着手しました。従来は市販のFCVミニカーを使用していましたが、中の構造が分からない、分解できないなど、寺岡らは実験教材としての機能不足を感じていました。もっと実験の幅を広げ、生徒たちに充分な体験を提供するには、オリジナルのFCVミニカーを開発するしかない。模擬授業を行う度に、寺岡らはそう痛感していたと言います。
「そうした状況の中、1年目の活動の成果が認められて2年目は活動を拡張できることになった。それでオリジナルFCVミニカーを開発できるだけの予算が付いたんです」(寺岡)

 リバネス側には燃料電池の研究者なども新たにスタッフに加わり、全員でミーティングを重ねてオリジナルFCVミニカーの仕様を詰めていきました。求めた条件は、燃料電池、水素タンク、モーターなどの構造が見えること、燃料電池を取り外してLEDランプ点灯実験などにも使用できること、子どもたちの扱いに耐える頑丈さを持っていることなど多岐に渡りました。
 こうした条件を洗い出すと、それをまとめて藤田氏の付き合いのある教材メーカーに製作を依頼。試作品が出来上がると、実際に使用してみて改善点をまとめ、メーカーにフィードバック。そして設計開始から約5カ月の後、ついにオリジナルFCVミニカーが完成しました。
「ボディを持たず、透明なパーツを使っているので、構造が一目で分かります。また水素タンクには注射器を流用し、水素の量を正確に計量することも可能。さらに燃料電池を構成するセルやセパレーターなどのパーツを一から組み立てられるようにし、組み付けるセルの数によって出力を変えることもできるので、小中学生の授業だけでなく、大学などの専門的な研究にも使用できる汎用性を持っているという自信作です」(藤田氏)
 2016年度後期、オリジナルFCVミニカーの完成を待って、希望校を巡る水素実験教室授業がスタートしました。
「初年度、ご希望いただいたのにこちらのキャパシティの問題で水素実験教室を実現できなかった学校がいっぱいあったんです。2年目はそうした学校を中心に回ることにしました」(寺岡)

研究所の開発者が順番に講師役を務め、生徒たちと交流する機会を創出。

本田技術研究所の水素技術開発スタッフが講師を務める実験教室。
本田技術研究所の水素技術開発スタッフが講師を務める実験教室。
  • 講師の指示に従ってFCVミニカーを組み立て、水素を充填する生徒たち。

    講師の指示に従ってFCVミニカーを組み立て、水素を充填する生徒たち。

  • “クラリティ FUEL CELL” の実車を持ち込んで授業を行うケースも。

    “クラリティ FUEL CELL” の実車を持ち込んで授業を行うケースも。

 2016年度の水素教育プロジェクトには、オリジナルFCVミニカーともう一つ、新たな進化が加わりました。それは、本田技術研究所の水素技術開発スタッフが実験教室の講師役を務めることになったことです。これはもともと藤田氏の提案に含まれていた施策で、講師役を務めることがHondaスタッフ自身の人材育成にも役立つ、という点に寺岡も惹かれてこのプロジェクトを立ち上げた経緯があります。それが2年目でようやく実現した形です。
「研究所のマネージャーが共感してくれて、新任管理職の育成に役立つからと、順番に開発スタッフを派遣してくれました」(寺岡)
 普段研究所にこもって開発に明け暮れる開発者たちにとって、外部の人々と直接接触する機会は多くはありません。それが未来溢れる中高生たちと交流できるとなれば、自分にとって新鮮な刺激になる。そう考えた開発スタッフたちは喜んで教壇に立ちました。しかも授業を終えた彼らの誰もが、授業前とはまた違う意味で、これが本当に自分の開発の糧となる機会であることを実感しました。
「授業の中では、自分がこれまで手掛けてきた開発の概要、これから開発する技術などについても説明します。開発者たちは自分の仕事の歴史を振り返り、まとめ直すプロセスを経るため、自分の中に新たな視点が生まれ、新たな発見がある。それが今後の自分の開発に役立つと言うんです」(寺岡)
 加えて、予備知識の無い生徒たちに自分の開発をいかに分かりやすく伝えるかを考えることは社内プレゼンと同じことであり、その訓練にもなります。寺岡の考えていた通り、水素教育はHondaにとって人材育成に役立つプログラムであることが開発スタッフたちの感想によって実証されました。

2017年から2018年、各種イベントにブースを出展して水素実験教室を開催。

2017年、“京都エネルギーフェア” で開催した水素実験教室。
2017年、“京都エネルギーフェア” で開催した水素実験教室。
  • “エコ&セーフティ神戸カーライフ・フェスタ2017” で開催した水素実験教室。

    “エコ&セーフティ神戸カーライフ・フェスタ2017” で開催した水素実験教室。

  • 子どもたちだけでなく、FCVに興味津々の大人たちがスタッフを質問責めにする場面も。

    子どもたちだけでなく、FCVに興味津々の大人たちがスタッフを質問責めにする場面も。

  • 群馬県嬬恋村で開催された “ソトデナニスル?” での水素実験教室。

    群馬県嬬恋村で開催された “ソトデナニスル?” での水素実験教室。

  • Hondaのファン感謝イベント “Enjoy Honda” での水素実験教室。

    Hondaのファン感謝イベント “Enjoy Honda” での水素実験教室。

2018年3月、埼玉県が中学生向け環境教育DVD制作のためにHondaの水素実験教室の模様を公開収録。生徒役にお笑いコンビ “ザ・たっち” のお二人が登場し、先生役はHondaスタッフが務めた。
2018年3月、埼玉県が中学生向け環境教育DVD制作のためにHondaの水素実験教室の模様を公開収録。生徒役にお笑いコンビ “ザ・たっち” のお二人が登場し、先生役はHondaスタッフが務めた。

 2017年、水素教育はさらに進化を遂げます。学校へ出向いての出前授業に加え、各種イベントにブースを出展してそこで子ども向け水素実験教室を開催するようになったのです。
「鈴鹿市や宮城県など水素エネルギー導入に積極的な自治体は、市民への認知拡大のために環境イベントを開催します。他の自治体からも、水素教育のことを知り、ぜひ自治体の環境イベントの中で水素実験教室を開催してほしいと依頼があったんです」(寺岡)
 加えてHondaが毎年全国8〜9カ所で開催するファン感謝イベント “Enjoy Honda” でもブースを構えて水素実験教室を開催することになり、活動規模が一気に拡大しました。
「イベントで水素実験教室を開催すると、そのイベントに来場した学校関係者や自治体関係者から、『次はうちでもお願いしたい』と連絡が入るんです。そうやって人と人のつながりが生まれ、輪が広がっていきました。Hondaと社会とのつながりを深め、Hondaという企業のブランディングにも貢献する。水素教育はそんな活動だと感じています」(寺岡)

 発足以来このプロジェクトを支える重要な柱となってきたリバネスの藤田氏は、3年間を振り返ってこう語ります。
「世の中には答えの無い課題がたくさんあります。その課題を自分で考え、熱意を持って自分の力で解決していく。そんな子どもたちを育てていきたい。それがリバネス教育事業の目標です。そのためには、新しいものを生み出し、新しい社会をつくり出す現場にいる大人たちが、子どもたちと一緒に考える場を作っていくこと。その場の一つが水素教育だと思っています。今後はHondaだけではなく水素に関わる多くの企業が一緒になって水素教育を手掛けるようになれないかと考えています」

 そしてプロジェクトの中心人物として水素教育を牽引してきた寺岡は、今後の展望をこう語ります。
「20年後、30年後の水素エネルギーがどうなっているのか、その答えを握っているのは今の子どもたちです。水素教育は彼らにきっと何かを残してきたはずです。また、企業として学校教育に接点を持つことは、子どもたちにとっても、先生方をはじめとする学校関係者にとっても、そして企業側にとっても大きなメリットがある。それが3年間の活動を通じて実証されたと思っています。この水素教育が今後どう発展していくのか、自分としても期待しています」

 2018年度の次世代水素教育プロジェクトは既にスタートしています。全国各地のイベント会場で、そして学校の教室で、Hondaと子どもたちとの出合いが生まれ、そこには持続可能な未来社会の礎が生まれています。