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2018.04.26 update

本田技研工業(株)・(株)リバネス 次世代水素教育プロジェクト子どもたちに水素エネルギーの原体験を提供し、一緒に未来の答えを探す。Hondaとリバネスが共創した “次世代水素教育プロジェクト”

水素テクノロジーのパイオニアであるHondaが “水素教育” を始めるべきだ。

すべては、2014年に持ち込まれたある提案から始まった。

Honda 経営企画統括部 サステナビリティ企画部 寺岡正 部長
Honda 経営企画統括部 サステナビリティ企画部 寺岡正 部長
  • 2014年は、Hondaがさいたま市とスマート水素ステーションの実証実験を開始した年。

    2014年は、Hondaがさいたま市とスマート水素ステーションの実証実験を開始した年。

  • 同年 “CEATEC JAPAN 2014” では “SUISO JAPAN powered by Honda” をコンセプトにブースを出展。

    同年 “CEATEC JAPAN 2014” では “SUISO JAPAN powered by Honda” をコンセプトにブースを出展。

2014年11月、Hondaは新型燃料電池自動車のコンセプトモデル “Honda FCV CONCEPT” を発表した。
2014年11月、Hondaは新型燃料電池自動車のコンセプトモデル “Honda FCV CONCEPT” を発表した。
  • 同時に外部給電器コンセプトモデル “Honda Power Exporter CONCEPT” も展示。

    同時に外部給電器コンセプトモデル “Honda Power Exporter CONCEPT” も展示。

  • スマート水素ステーションと併せ、水素の「つくる・つかう・つながる」コンセプトを披露。

    スマート水素ステーションと併せ、水素の「つくる・つかう・つながる」コンセプトを披露。

 水素実験教室は、現在Hondaが推進している “次世代水素教育プロジェクト” の施策の一環として行われています。このプロジェクト発足のきっかけは、2014年、Honda経営企画統括部の寺岡正(てらおかただし= Honda 経営企画統括部 サステナビリティ企画部 部長)の元へある提案が持ち込まれたことでした。
「以前からお付き合いのあったリバネスの藤田さんと打ち合わせをした際、『実はこんな提案もあるんですが』と言って見せられたのが、水素教育プロジェクトの原型となる提案だったんです」(寺岡)
 それは、Hondaが水素エネルギー学習用の実験セットを作り、全国の中学校に配布して理科の授業で使ってもらいましょうという提案でした。1年目に実験セットや授業プログラムの開発を行い、2年目は中学校の先生向けに模擬授業を実施して下地づくりを行い、3年目は実際の授業に取り入れてもらって拡散する、という3カ年計画です。
 藤田大悟氏(ふじただいご=株式会社リバネス リバネス教育総合研究センター センター長)は、この提案を寺岡宛てに持ち込んだ理由を次のように語ります。
「政府は本腰を入れて水素エネルギーの普及拡大を目指す方針を示し、2020年の東京オリンピックでは水素先進国日本を世界に発信しようと考えていました。この化石燃料から新エネルギーへのパラダイムチェンジをスムーズかつ迅速に行うためには、学校教育の変革から行うべき。その先導役となるのは、燃料電池自動車や水素テクノロジーのパイオニアであるHondaが相応しい。そう考えて、過去お付き合いのあった寺岡さんに話をしてみたんです」(藤田)
 しかし寺岡の所属する経営企画統括部は経営方針や経営戦略に関わる部署なので、客観的に見れば水素教育は業務の範疇外。にもかかわらず寺岡は、藤田氏の提案が妙に心に刺さったと言います。
「化石燃料から新エネルギーへのパラダイムチェンジを、学校教育から行っていくというコンセプトにも共感しましたが、何よりポイントはHondaの開発現場の人間たちが学校に出向いて講師を務めることになっていた点です。世界を変えようとしているテクノロジーをどう理解させるのか、それを伝える場面をどう演出するのかを自分で考える。それはまさにリーダー教育であり、マネジメントの訓練にもなる。これは子どもたちへの水素教育というだけでなく、Hondaの人材育成に役立つ施策だと感じました」(寺岡)
 寺岡は入社以来長らく人事畑を歩んできたキャリアの持ち主です。藤田氏の提案は、長く人を見続けてきた寺岡の感性に響きました。寺岡は「自分の個人テーマとして進めるから、水素教育プロジェクトをやらせてくれ」と、当時の上司を説得し、プロジェクトをスタートしたのです。
「今回のように教育現場と企業を結びつける企画は、その目的や意義に賛同を得られても、実施に至るケースは少ない。実際に予算をつけて人員を割いてとなると、売り上げや利益など直接的な成果を求められるからです。しかしHondaは、寺岡さんが『やるべきだ』と信じるならやればいいという方針を示し、会社として本当にスタートしてくれました。未来を見据えた素晴らしい会社だと思いましたね」(藤田氏)

中学生向け授業プログラムを開発。まずは先生を集めて模擬授業を実施。

  • 経営企画統括部 経営企画部 程塚梨乃 主任

    経営企画統括部 経営企画部 程塚梨乃 主任

  • 学校の先生向けに行ったセミナーの様子。

    学校の先生向けに行ったセミナーの様子。

株式会社リバネス リバネス教育総合研究センター センター長 藤田大悟 氏
株式会社リバネス リバネス教育総合研究センター センター長 藤田大悟 氏
  • リバネス=リーブ・ア・ネスト(巣立ち)という社名の由来を示す藤田氏。

    リバネス=リーブ・ア・ネスト(巣立ち)という社名の由来を示す藤田氏。

  • “科学技術の発展と地球貢献を実現する” の理念の通り、高度な実験・検査機器を備える社内。

    “科学技術の発展と地球貢献を実現する” の理念の通り、高度な実験・検査機器を備える社内。

  • 子ども向け実験教室などを開催し、自らも講師を務めるという藤田氏。

    子ども向け実験教室などを開催し、自らも講師を務めるという藤田氏。

  • リバネス社内には、実験や授業用の教室が備わっている。

    リバネス社内には、実験や授業用の教室が備わっている。

 2015年、寺岡とリバネスの藤田氏、それに寺岡の部下である程塚梨乃(ほどづかりの= Honda 経営企画統括部 経営企画部 主任)を加えた3人で、次世代水素教育プロジェクトは始まりました。ごく小規模での発足です。
 藤田氏の所属する(株)リバネスは、理工系大学・大学院出身の研究者たちが設立した教育事業を中心に展開するベンチャー企業です。子どもたちに科学技術を分かりやすく伝えていくために、全国の中学、高校、大学等に教育プログラムを提供し、出前授業の実施、研究支援などを行っています。そんな企業でセンター長を務め、学校教育の現場に精通する藤田氏を中心に、水素実験教室の授業プログラムの開発に着手し始めます。まずは中学校の理科の先生を集めてセミナーを開催し、そこで市販FCVミニカーの走行実験を盛り込んだ模擬授業を実施しました。
「東京と大阪で開催したセミナーには、社会の最新テクノロジーに触れさせる授業を行いたいという意識の高い先生が集まり、様々な意見をいただくことができました。我々はそれを元に授業プログラムの改善や実験ツールを製作を進めていきました」(寺岡)

 授業プログラムの完成度が高まると、次はセミナーに参加した先生方を通じて実際に中学校へ出向き、生徒を相手に水素実験教室の授業を行う段階に入りました。3人が持ち回りで講師を務め、生徒の生の反応を確かめながら授業プログラムをさらに改善していこうという目論見です。
「実際に教壇に立ってみると、それまで見えていなかったことが見えてきて、衝撃を受けました。例えば我々の世代だと、水素と聞くと水素爆弾や水素爆発を連想して危ないというイメージが浮かぶんですが、今の子どもたちはそうではなかった。むしろ水素水などを連想して『体にいいんだよね』と言ったりする。生徒たちが『水素は危ない』と思っていないという事実は、一番の衝撃でしたよ(笑)」(寺岡)

 さらに寺岡は、水素の知識や可能性を教えるばかりでなく、社会の仕組みを教えていくことにも手ごたえを感じたと言います。
「Hondaは技術を開発してモノを作るメーカーだけど、理系の人間ばかりじゃなく文系の人間もいるということを教えると驚くんです。製品が世の中に出ていくには、開発や製造など理系だけでなく経理や販売、法律など文系の分野も含めたいろんな要素が必要で、そのどれが欠けてもいけない。その全てに価値があるんだよと言うと、『よくぞ理科の授業を通じて世の中の仕組みを教えてくれた』と、先生方のほうが感激してくれましたね」(寺岡)