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2017.12.28 update

(株)本田技術研究所 四輪R&Dセンター

大ヒットモデルのプラットフォームとエンジンを敢えて作り直す。異例の手法でモデルチェンジした2代目「N-BOX」が目指すもの。

2017年9月にフルモデルチェンジを果たしたHondaの軽自動車「N-BOX」。6年ぶり、2代目となる新型「N-BOX」は、ボディも、シャシーも、エンジンも、全てを新しく開発し直しました。累計販売台数112万台超という大ヒットを記録した先代モデルのメカニズムを敢えて刷新したのは何故なのか。2代目「N-BOX」開発チームの歩んだ経緯を紐解いて、その理由を明らかにします。

(株)本田技術研究所 四輪R&Dセンター (株)本田技術研究所 四輪R&Dセンター

2017年9月にフルモデルチェンジを果たしたHondaの軽自動車「N-BOX」。6年ぶり、2代目となる新型「N-BOX」は、ボディも、シャシーも、エンジンも、全てを新しく開発し直しました。累計販売台数112万台超という大ヒットを記録した先代モデルのメカニズムを敢えて刷新したのは何故なのか。2代目「N-BOX」開発チームの歩んだ経緯を紐解いて、その理由を明らかにします。

起死回生を果たしたHondaの軽自動車。その立役者が2011年に登場した「N-BOX」。

2017年8月31日にHonda青山本社で行われた2代目「N-BOX」発表会。
2017年8月31日にHonda青山本社で行われた2代目「N-BOX」発表会。
株式会社本田技術研究所 四輪R&Dセンター 主任研究員 2代目「N-BOX」LPL 白土清成
株式会社本田技術研究所 四輪R&Dセンター 主任研究員
2代目「N-BOX」LPL 白土清成

 2017年9月1日、Hondaは新型軽自動車「N-BOX」を発売しました。初代「N-BOX」は、競争の激しい軽自動車カテゴリーの中で、2012年、2013年、2015年、2016年の計4回に渡って年間新車販売台数1位を記録し、累計販売台数は112万台を超えた大ヒットモデルです。その「N-BOX」初のフルモデルチェンジということで、8月31日に行われた発表会には自動車関連メディアから一般誌まで多くの報道陣が駆けつけ、全容を現した2代目「N-BOX」にカメラを向けていました。

 この2代目「N-BOX」の開発でLPL(ラージプロジェクトリーダー:開発責任者)を務めたのが、白土清成(しらときよなり=株式会社本田技術研究所 四輪R&Dセンター 主任研究員)です。入社後に初めて担当したのが初代NSXのボディ設計だったという白土は、その後インスパイア、アコード、フリードなどのボディ設計でキャリアを重ね、先代の「N-BOX」ではLPL代行を務めました。そして今回のモデルチェンジで、自身として初のLPLを任されました。
「就任当初、えらいことになったと思いましたね(笑)。なんせ、このクルマが売れに売れ続けたおかげでHondaの軽自動車は起死回生を果たすことができたというモデルです。初のLPLでこのクルマを担当するのは、自分には荷が重いんじゃないかと感じました」(白土)
 しかも会社から白土へ、開発に関する具体的な指示はほとんどありませんでした。
「どんなクルマにするか考えるのはLPLの仕事。『モデルチェンジしろ』以外は白紙の状態でLPLに全権を委ねるのがHonda流です。それだけにプレッシャーは大きかったですね」(白土)

目指すのは、軽自動車の枠を超えた次世代ファミリーカーのスタンダード。

2代目「N-BOX」(左)と「N-BOX Custom」(右)
2代目「N-BOX」(左)と「N-BOX Custom」(右)
  • 開発時のコンセプトは「日本の家族の幸せのために」。

    開発時のコンセプトは「日本の家族の幸せのために」。

  • 目指したのは、軽自動車の枠を超えた次世代ファミリーカーのスタンダード。

    目指したのは、軽自動車の枠を超えた次世代ファミリーカーのスタンダード。

 白土は初のLPLという仕事に臨むに当たり、自分の中に3つの約束を課しました。まず第一に、自分が作りたいクルマではなくお客様が望むクルマを徹底的に追求すること。第二に、判断すべき時に判断し、迷わないこと。第三に、決めたことは絶対に曲げない、ぶれないこと。
「もちろん人間ですから、悩んだり迷ったり、判断を間違えてしまうことはあるでしょう。でもチームのトップに必要なのは、それを表に出さずに自分の中で消化すること。そうしないとチームが迷走してしまいます。LPLにとって最も大切なのは断固とした姿勢を見せることだと考え、そうふるまうことを自分に課したんです」(白土)

 この指針に従い、白土はまず2代目をどんなクルマにすればいいか、お客様が「N-BOX」に何を望むのかを突き詰めていきました。
「今や日本のファミリーカーはミニバンですが、実は先代N-BOXもファミリーカーとしてのミニバンに近い使われ方をされてきました。だったら、軽自動車だけでなく普通車も含めて日本でベストチョイスのファミリーカーと言われるクルマにしよう、それがお客様の望むN-BOXだと考えました」(白土)
 普通車のミニバンと比べても、それらに負けない魅力を持ち、お客様に選ばれる次世代ファミリーカーのスタンダード。広さNo.1や燃費No.1、パワーNo.1など響きの良い商品性ではなく、それら要素のトータルバランスでお客様が一番幸せを感じるパッケージ。そんなクルマを目指して「日本の家族の幸せのために」というコンセプトを掲げました。

燃費と軽量化の飛躍的進化を求め、プラットフォームとエンジンを2代目で刷新。

「将来に向けて必要なことから逆算して、ニューモデルのあるべき姿を導き出しました」(白土)
「将来に向けて必要なことから逆算して、ニューモデルのあるべき姿を導き出しました」(白土)

 一方、2代目「N-BOX」には開発前から技術的課題に挙げられていた事項がありました。それは燃費向上と軽量化です。先代「N-BOX」の発売以降、競合他社の軽自動車は大幅な軽量化を進め、それに伴って燃費も向上させていました。2代目「N-BOX」ではそれらに対抗しうる燃費を実現する必要があり、そのためには大幅な軽量化が必要だったのです。

 白土は具体的な開発に入る前に、会社の首脳陣に対して70〜80kgの軽量化を行う開発プランを提示しました。元々軽い軽自動車で70〜80kgの軽量化は、客観的には驚異的な数値であり、実際、これによって燃費も大幅に向上することが見込まれました。しかし首脳陣の答えはNO。「それで作り直す価値はあるのか?」それが白土に向けられた言葉でした。
「なぜNOなのか、先行開発チームのみんなで散々考えました。そして、今できることを積み上げるのではなく、将来に向けて必要なことから逆算してニューモデルのあるべき姿を導き出すという方向に転換したんです」(白土)

 2代目「N-BOX」が完成し、発売した後には、競合他社も新技術を投入したニューモデルを、またさらに次のニューモデルを出してくる。それらがどのように進化するのか仮説を立て、2代目「N-BOX」がモデル末期までそれらと対抗し、競争力を維持するにはどうあるべきかをシミュレーションしました。
「それまで、軽自動車のモデルチェンジとはこういうものだという常識でプランを組み立てていました。先代を流用しながら時代進化分の技術を投入していくという手法です。しかしシミュレーションした結果、2代目『N-BOX』は、まだ実現していない技術も投入してもっと抜本的に進化しなければならない。軽量化で言えば当初のプランの倍近く軽くする必要があるという結論に至りました。そしてそれを首脳陣にぶつけたんです」(白土)
 低燃費と軽量化を飛躍的に進化させた、1世代も2世代も先のクルマへ。今度の白土の提案では、開発費も跳ね上がります。しかし白土の確固たる信念に基づいた提案を、首脳陣は受け入れました。「分かった。だったらそれでやってみよう」
 こうして「N-BOX」はモデル2代目にして、プラットフォーム、エンジンを一新するという、軽自動車のモデルチェンジとしては異例の開発を行うことが決定したのです。