MENU
HONDA
検索
Honda Face Top > CASE36:(株)本田技術研究所 航空機エンジンR&Dセンター EPISODE-3

Face (株)本田技術研究所 航空機エンジンR&Dセンター Face Top

池田法史 研究員

池田法史 研究員

児玉亮 研究員

児玉亮 研究員

吉田州一郎 研究員

吉田州一郎 研究員

飛行試験で実証されるHF120の卓越した性能。そしてスピードと連携力で危機を乗り越えていく。

 2007年、GE Hondaが開発を進めてきた「HF120」の地上での性能実証試験がスタート。それから3年後には、「HF120」を搭載した量産型初号機が初飛行に成功しました。
 推力や燃費などエンジンの全体性能を担当する池田法史研究員は、「HF120」の飛行試験に同乗し、自ら“飛び心地”を確認しました。その時の模様について、「その日は風が強く、低高度をしかも低速度で飛ぶ試験だったので、機体は怖いくらいに揺れていました。でもそんな状況の中で、エンジンは何の不調も無く力強く回り続けた。仲間たちがこれほどまでに丈夫なエンジンをつくってくれたんだ、と強く実感しました」と語っています。
 エンジン開発自体は比較的スムーズに進みましたが、型式認定の認定試験は大きなハードルだったと言います。中でも、飛行機のエンジンに鳥を吸い込ませて安全に支障がないか確認する「バードストライク」試験で、大きな危機が訪れました。バードストライクによる性能低下25%以内が試験クリアの要件ですが、空力を大幅に進化させるためにファンを改良していたことによって、鳥の衝突による形状変化が大きく、試験をクリアできない可能性が判明したのです。
 「残り日数が少なかったので、問題を短期間で片付けていかなければなりませんでした。そこで力を発揮したのがHondaの現場力です。GEのエンジニアたちは、Hondaスタッフの柔軟性と問題解決のスピードにびっくりしていましたよ」(野田)
 開発チームはこの問題にメンバー全員を集めて情報を共有し、あらゆる部署から大勢の人が集まって知恵を出し合いました。そして非常に短期間で、コンピュータ上でエンジンに鳥を吸い込ませ、ダメージをシミュレーションする、高精度の鳥衝突シュミレーション解析技術を確立し、何種類ものファンのスタディを繰り返すことができました。部門横断の連携力と三現主義。「とりあえずやってみよう」の現場力と行動力で、見事に問題をクリアできたのです。
 Honda初の認定試験を担当した児玉亮研究員は、HondaとGEとの違いをこう語ります。
 「GEというよりもアメリカは、徹底して分業するシステムです。全ての業務に役割と手順書が決まっていて、効率的な働き方をしています。一方、自分の担当ではないところ、つまり役責を超えた働き方はしないという考え方です。対してHondaは、とにかく現場力が強い。現場の人間が自分で物事を考えて率先して進めるという文化なので、仕事の進め方はまさに好対照だったと言えます。認定試験の際、適合審査官の抜き打ちの質問に対して、本来、指示に従ってテストを実施しているだけであるはずの私が何でも知っていて何でも答えられるので、驚いていましたよ(笑)」
 さらに「HF120」は、生産技術の効率化、環境負荷低減技術でも進化を遂げました。ターボファンエンジンは、ファンの後方に、空気の流れを整流するファンステーターという固定された羽根があります。Hondaはこれに組み入れる42枚の羽根を、軽量化を目的に、このクラスとしては世界で初めてCFRP(炭素繊維強化プラスチック)で造りました。これを実現したのが、吉田州一郎研究員です。
 「HF118では、物性の極めて高い熱可塑性CFRP材料を選定していました。しかしこの材料を用いた時の羽根1枚の生産性は1日に1個。HF120では量産を意識し、高速硬化性CFRPを採用したため、成形に必要な時間を1個当たり20分に短縮。1個わずか20分です。しかも羽根だけでなくシュラウドも含めて一体で作ることが可能です」(吉田)
 時間やコストだけでなく、製造エネルギーまでも大幅にカットできる画期的な方法によって、量産型へと進化させていたのです。

CFRP(炭素繊維強化プラスチック)で造ったファンステーター

CFRP(炭素繊維強化プラスチック)で造ったファンステーター

研究所には実際に試験で使われた「HF120」が展示される

研究所には実際に試験で使われた「HF120」が展示される

Hondaがやる以上、環境負荷を減らしていく。“環境”というビジネスジェットの新しい価値。

 「HF120」は、開発当初から高い環境性能を目標に掲げて開発してきました。その結果、軽量、高出力、高性能はもちろん、クラス最高水準の低燃費、さらに低エミッション、低騒音、定期保守間隔の長期化、点検項目の削減など、Hondaが理想とする環境性能を追求した、次世代のターボファンエンジンが完成したのです。
 「実はHF120のような推力6,000ポンド未満のエンジンには、スモーク以外のエミッションの規制がありません。しかし我々は、自主的に大型エンジンの規制を参照して独自に目標を設定し、それをクリアすることを当然のこととして開発を進めてきました。Hondaがやる以上、製品の環境負荷を減らしていくのは当たり前。規制がないから気にしなくていいというのは論外です。それに加え、スタッフたちの技術者としての良心と使命感がありました」(野田)
 小型ビジネスジェットはこれまで、航続距離や最高速度などで競い合ってきました。そこにHondaは、環境性能の高さという新しい価値基準を盛り込み、これを訴求していこうとしています。
 「四輪車の世界では、環境意識の高い人たちがEVやハイブリッドを積極的に購入します。これと同じように、ビジネスジェットの世界でも、Hondaを選ぶ人は環境意識の高い人だ、と言われるようになっていきたい。それがHondaが創ろうとしているビジネスジェットの新しい価値であり、市場を変え、意識を変え、次世代をリードしていく可能性だと信じています」(野田)