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Honda Face Top > CASE22:本田技研工業(株) 鈴鹿製作所 エンジン工場 鋳造2モジュール EPISODE-3

本田技研工業(株) 鈴鹿製作所 エンジン工場 鋳造2モジュール Face Top

スピンキャスト製法の仕組み

スピンキャスト製法の仕組み

木くずから発泡スチロールにビール、洗剤まで、いろいろな材料を試して完成させました。

 そんな時、開発チームのメンバーの一人が、「塗型」に凹凸を付ければ良いんじゃないか?と思いつきました。
「『塗型』とは予め金型の内側に塗っておく液状の材料で、鋳造後は固まり製品を覆ったまま一緒に引き抜かれます。だから塗型に凹形状が作れれば、そこに鉄が流れ込んでスリーブの外周に凸形状が成形されるというわけです」(西脇)
 どうやって塗型に凹形状を作るか、開発チームはさまざまなアイデアを模索しました。塗型に木屑を混ぜておけば、木屑は熱で燃えて空隙ができ、そこに金属が流れ込むだろうと考え、これを試したところ、金型の後ろから炎が噴き出して危険極まりないことがわかり断念しました。次に発砲スチロールなども試しましたが、うまくいきません。そこで塗型に発泡性の液体を混ぜれば泡の部分が凹形状になって残るだろうと考え、ビールで試したりもしましたが、結局、界面活性剤が一番適しているということが分かり、界面活性剤入りの市販の洗剤を大量に買ってきて、テストを繰り返しました。
 こうして、発泡性の液体を混合した塗型を使い、表面にスパイニーと呼ばれる凸形状のあるシリンダースリーブを作る遠心鋳造技術が完成しました。原理としては遠心鋳造ながら、ほぼすべてHonda独自の技術とノウハウで成立しているこの技術は、「スピンキャスト製法」と名付けられました。

鈴鹿製作所 エンジン管理ブロック 原田浩久 技師

鈴鹿製作所 エンジン管理ブロック 原田浩久 技師

「スピンキャスト製法」で、キュポラ(溶解炉)をコークス炉から電気炉への転換も可能になりました。

 「スピンキャスト製法」は、西脇たちの思惑どおり、2001年発売予定の新型スモールカー「フィット」への採用が決まり、これに伴って「スピンキャスト製法」の製造ラインが鈴鹿製作所に構築されることになりました。
  そしてスピンキャスト製法は、労働環境改善の大きな壁となっていたコークスを使うキュポラを、電気溶解炉に転換することも可能にしたのです。
 「砂型鋳造では、溶けた鉄の注ぎ口や通り道も、製品と一緒に成形されて取り出されます。しかし製品を外した後、残りは捨てられるので、材料に無駄がありました。しかしスピンキャスト製法ではその無駄がなくなり、材料の歩留まりが65%から90%以上へと飛躍的に向上したのです。つまり同じ製品を作るために溶かす材料の量が大幅に減ったため、電気溶解炉で対応することが十分可能だと分かりました」(古川)
 コークスの使用が無くなり、また大幅な自動化を実現した鈴鹿製作所の鋳造現場では、人々が粉塵や高温に悩まされることがほとんど無くなりました。また砂の使用もゼロになったため、念願だった廃砂ゼロも達成したのです。

表面にスパイニー(凸形状)の付いたシリンダースリーブ

表面にスパイニー(凸形状)の付いたシリンダースリーブ

鈴鹿製作所 鋳造2モジュール 橋本敦史 技術主任

鈴鹿製作所 鋳造2モジュール 橋本敦史 技術主任

鈴鹿から世界に広がった「スピンキャスト製法」は、今ではHondaのスタンダード技術です。

 新型車「フィット」はHonda史上最大ともいえるヒット作となり、2002年には早くも2本目のスピンキャストラインが鈴鹿製作所に増設されました。そしてメンバー数人が技術指導に向かい、アメリカの鋳造工場でもスピンキャストラインが立ち上がりました。
さらに2005年にはタイ工場へ、2007年には中国工場へと広がり、現在では世界で販売されるすべてのHonda車のシリンダースリーブが、スピンキャスト製法によるものになっています。
 西脇と一緒にこの世界展開に携わってきたエンジン管理ブロックの原田浩久技師は、そのモチベーションをこのように語ります。
  「鈴鹿製作所の現場の人たちが、自分たちの力で脱砂を実現し、職場環境を良くしようと熱い気持ちで取り組んだ結果、素晴らしい技術が生まれました。世界展開は、実は私たちの本来の業務ではないのですが、これを世界に広めることがオールHondaの職場環境改善につながり、さらに世界の環境保全につながると思うと、自分たちがやるしかない、そんな気持ちに自然になったんです」
  スピンキャスト製法は、単に設備を動かせばいいというものではありません。自動化されているとはいえ、温度管理、製品を金型から抜くタイミング、塗型の成分の配合割合など、人のノウハウの集大成ともいうべき技術です。このノウハウの伝授なくして、他所への技術展開はできません。だからこそ、現場を熟知した鈴鹿製作所の人間が、世界展開の主役となったのです。
 最後に、現在の鈴鹿製作所スピンキャスト製造ラインの運営を任せられている鋳造2モジュールの橋本敦史技術主任が、今後の意気込みを語ってくれました。
  「鈴鹿製作所で生まれた技術が、今やオールHondaのスタンダード技術になっている。これは私たち後輩にとっても誇らしいことです。しかし技術は磨き続けないと、廃れて他の技術に取って代わられてしまいます。スピンキャスト製法を受け継いだ私たちとしては、先輩たちが生み出した技術を常に磨き続け、常に進化させ続けていくことが、与えられた役目だと思っています」