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Honda Face Top > CASE18:(株)本田技術研究所 二輪R&Dセンター ニューミッドコンセプトシリーズ開発プロジェクト EPISODE-2

(株)本田技術研究所 二輪R&Dセンター ニューミッドコンセプトシリーズ開発プロジェクト Face Top

鷹栖プルービンググラウンドは、広大な敷地内に世界中の様々な路面を再現し、走りを鍛える総合テストを目的に建設されたテストコース

(株)本田技術研究所 二輪R&Dセンター 大須賀貴則 研究員

(株)本田技術研究所 二輪R&Dセンター 大須賀貴則 研究員

低燃費No.1バイクを作るという目標を、チームで自主的に設定しました。

 本田技術研究所は、北海道に「鷹栖プルービンググラウンド」というテストコースを持っています。サーキットのような周回路だけでなく、ヨーロッパの一般道を再現したコースまで備える総合テストコースです。青木は世界中のミドルクラスのバイクをここに持ち込みました。
 「ミドルクラスのお客さんにとって本当に必要なものは何なのか、プロジェクトメンバー全員で考え直したいと思ったんです。そのためにテストコースにいろんなバイクを持ち込んで、みんなでさんざん乗り回しました」
 昼は世界中のバイクをとっかえひっかえ乗り尽くし、夜は近くの飲み屋で時間を忘れてバイクについて語り合う。そんな中で、少しずつ分かってきたことがありました。
 「結局、バイクを楽しむには、日常で使いきれる性能があれば充分なんじゃないか。めったに使うことのないような高速走行領域での性能を得るためにコストを掛けて価格が上がってるんだとしたら、思い切ってそれを無くしてしまえば本当に必要なものだけが残る。すると価格も性能も、もっと気軽に楽しめるバイクになるんじゃないか、ということです」(青木)
 これは、実は以前からみんな感じていたこと。しかし前モデルに比べて性能が上がったかどうかで評価される製品開発の世界では、どうしても数値的な性能を高める方向での開発になっていたのです。しかし今回のプロジェクトでは、発想の転換が求められました。馬力や最高速といった性能ではなく「乗り味」や「扱いやすさ」といった性能を突き詰めていく。そのためには、街中でほとんど使うことの無いような性能ではなく、日常のライディングを楽しむために本当に必要な性能とは何なのかを突き詰めていく。そんな方向が見えてきました。
 「もっと気軽に買えて、気軽に乗れて、どこまでも楽しく走っていける。そんな体に馴染む道具のようなミドルクラスのバイクを作ろう」と全員のイメージがまとまってきた時、メンバーの一人、大須賀貴則研究員が意見を出しました。
 「だったら、馬力とか最高速じゃなくて、低燃費が必要なんじゃないか?」
 実は青木も、大須賀と同様、密かに低燃費バイクというコンセプトを思い描いていました。
 「成功するプロジェクトには、何かで一番になるという目標が必要なんです。二番を目指しますって言ってもモチベーションは上がらないでしょう(笑)。じゃあ今回は何だろうと考えた時、低燃費No.1バイクを目指すということは、実は心の中で決めてました」
 こうして、「低燃費で勝つ」という自主的な目標が設定されたのです。
「どうせやるからには、データ上で何%向上などではなく、ユーザーがバイクに乗って、給油してみて『え、これだけしかガソリン減ってないの?』と驚くくらい圧倒的な低燃費にしてやろう、と飲み屋で盛り上がりました」(青木)

(株)本田技術研究所 二輪R&Dセンター 根来正明主任研究員

(株)本田技術研究所 二輪R&Dセンター
根来正明主任研究員

四輪の低燃費ノウハウを吸収して、新しいエンジンを試作しました。

 北海道での合宿は大きな成果をもたらしました。漠然としていたゴールが明確なイメージとなって現れ、研究所に戻ってからは、そのイメージを現実にしていく作業のスタートでした。
 圧倒的な燃費No.1を達成するには、どんなエンジンを開発するかに懸かっています。しかしエンジン担当の根来正明主任研究員の心の中は複雑でした。
 「本音で言えば、エンジニアとしては馬力でも回転数でも負けたくない。でも北海道で、『低燃費で勝とう』ってみんなで決めましたから」
 根来は未知への挑戦に戸惑いながらも、エンジン開発に着手します。
 「そもそもどんなエンジン形式が適しているのか、その検証から始めました」(根来)
 さまざまなエンジン形式を検証・試作し、どんなエンジンにするべきか試行錯誤する日々が続きました。低燃費、しかも圧倒的な低燃費を追求した大型FUNバイクの開発は、Hondaにとってもこれが初めてのケースでした。しかし、量産エンジンを積んだモビリティの中で世界一の燃費を誇る「スーパーカブ」を筆頭に、小型バイクの世界では世界屈指の燃費向上技術を持っているのがHondaです。そのうえ、熾烈な燃費競争を戦っている四輪車の低燃費技術も持っているのがHondaなのです。
 根来はある日、メンバーが飲み屋で発した一言にはっとします。
 「フィットのエンジンを半分にして載せちゃえば、直列2気筒の670ccになりますね」
 もちろん、それがそのままバイクのエンジンとして使えるはずはありません。発言したメンバーは冗談のつもりでしたが、これを聞いた根来は本気で試してみようと思ったといいます。
 「四輪でも燃費競争が特に激しい小型車のエンジンは、ちょうど大型バイクのエンジンの大きさと重なります。今回開発するミドルクラスバイクは、フィットのエンジンを半分にすればピッタリの大きさ。そしてフィットの低燃費は小型車の中でもトップクラス。それならフィットのエンジンを題材にして、四輪の低燃費ノウハウも融合してしまおう。そんなエンジニアとしての興味からでした」
 それまで根来が手掛けてきた大型バイクは、1万回転以上で高効率を発揮するような仕様が多かったのに対し、今回は低燃費を狙うためにアイドリングから6,000回転あたりまでの低回転域での効率を極限まで追求する必要がありました。そのためのノウハウをフィットのエンジンから吸収して、試作エンジンの製作に取り掛かりました。
 冗談から出たアイデアを本気でレイアウトした、フィットの半分と同じ直列2気筒670ccエンジン。四輪の技術と二輪の技術を融合した、まさにHondaならではのエンジンでした。