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Honda Face Top > CASE18:(株)本田技術研究所 二輪R&Dセンター ニューミッドコンセプトシリーズ開発プロジェクト EPISODE-1

(株)本田技術研究所 二輪R&Dセンター ニューミッドコンセプトシリーズ開発プロジェクト Face Top

上から「NC700X」「NC700S」「INTEGRA」。2012年6月には、有段式自動変速機のデュアル・クラッチ・トランスミッションを搭載したタイプも、「NC700X」と「NC700S」に追加
上から「NC700X」「NC700S」「INTEGRA」。2012年6月には、
有段式自動変速機のデュアル・クラッチ・トランスミッションを
搭載したタイプも、「NC700X」と「NC700S」に追加

会社から最初に与えられた命題は、「大型FUNバイク※1の価格を大幅に下げろ」でした。

 2012年2月、Hondaは新型バイク「NC700X」を発売しました。この「NC700X」は発表から数日の間に年間販売予定台数の4割を超える1,500台を受注し、いわゆる大型クラスのバイクとしては異例のヒットを記録。続く4月にはエンジン・フレーム・足回りなどが共通の兄弟車「NC700S」「INTEGRA」も発表され、シリーズでの人気に拍車が掛かっています。
「ニューミッド※2コンセプトシリーズ(以下、ニューミッド)」と名付けられたこのシリーズの大きな特徴は、FUNバイク※1であるにも関わらず「低燃費」を売りにしている点です。日常走行域での楽しさを重視して最高出力や最高回転数を抑えた代わりに、大型クラスでは敵無しで、400ccクラスにも勝る41.5km/L(NC700S・60km/h 定地走行テスト値)という燃費性能を誇ります。
 「ニューミッド」の開発責任者は、(株)本田技術研究所 二輪R&Dセンターの青木柾憲上席研究員です。このスマッシュヒットの生みの親に、前例の無い「低燃費の大型FUNバイク」はいったいどのような経緯で生まれたのか尋ねたところ、意外な答えが返ってきました。
 「私がLPL(開発責任者)に任命された時点で会社から与えられた命題は、低燃費ではなく『もっと気軽に手が届く、大幅に価格を下げた大型バイクを作れ』だったんです」
 何度も経験してきたとはいえ、新車開発を任されるというのはエンジニア冥利に尽きる仕事です。LPLに任命されて気持ちが昂ぶる一方で、今回の会社のオーダーには戸惑いました。
 「単純に利益を削って赤字覚悟で、というわけにはいきません。製品としてのクオリティを保ちながらコストダウンして販売価格を下げる必要があります。そこでプロジェクトの目標を、従来機種に対して30%のコストダウンと定めたんです。そもそも新車を開発するのに、そのオーダーが『価格を下げろ』というのも珍しい話なのですが、会社の意図はよく分かりました。年々縮小するマーケットを再び活性化するため、いずれ誰かが開かなければいけない扉なら、よし自分が開いてやろうかと」(青木)
 日本自動車工業会のデータを見ると、251cc以上のバイクの日本での販売台数は、1985年が約14万6,000台だったのに対し、2008年が約5万台、2010年が約2万5,000台と、ピーク時から大きく減少しています。販売台数が少なくなると1台当たりの製造コストは割高になり、価格は上昇せざるを得ません。するとますますユーザーの新車離れが進み、販売台数も減少するという悪循環。この悪循環を断ち切ってユーザーを呼び戻すには、画期的に低価格のバイクを作り出すこと。そのために青木に白羽の矢が立ったのです。
※1 単なる移動のための道具ではなく、バイクに乗ることそのものを楽しむ、バイクを操ることを楽しむ、FUNライディングのバイク。
※2 700tクラスは、日本では大型免許が必要な大型バイクに分類されますが、欧米ではミドルクラスと考えられています。よってグローバルでの販売を想定していたこのシリーズには「ニューミッド」という名が冠せられました。

(株)本田技術研究所 二輪R&Dセンター 青木柾憲 上席研究員

(株)本田技術研究所 二輪R&Dセンター
青木柾憲 上席研究員

どんなバイクを作ればいいのか、その完成形がイメージできなかったんです。

 とはいえ、30%ものコストダウンを図るのは容易ではありません。実際、青木の前には2人の前任者が志半ばでプロジェクトを離れていったといいます。
 「それまでもHondaはコスト度外視でバイクを作ってきた訳ではありません。それどころか1円でも安くなるよう必死の努力を積み重ねてきたんです。そこから更に30%ダウンなんて、常識では考えられない目標でした」(青木)
 そしてもう一つ、青木をはじめとするプロジェクトメンバーたちの頭を悩ませたのは、これからどんなバイクを作ればいいのか、その完成形がイメージできないという問題でした。
 「コストダウンはあくまで手法論です。開発チームとしては、自分たちがこれから開発するのはこんなバイクだ、というゴールが見えないことには、作りようがなかったんです」
 分かっていたのは、もっと気軽に手が届く低価格の大型バイクとして、ミドルクラス(600cc〜750cc)のバイクを開発する、ということだけでした。
 とにかく命題となったコストダウン30%を達成するため、材料や表面処理を見直す、部品点数を減らす、製造方法を見直すなど、さまざまなアイデアを出して蓄積する一方で、これから目指すゴールはどんなバイクなのか、それを模索する日々が続きました。しかし、なかなか明確な答えに辿り着くことができません。そこで青木はあるアイデアを思い付きます。
 「よし、プロジェクトのメンバーで北海道に行って合宿しよう」