適正な排便排尿は健康のバロメーターと言われています。人間も犬もそれは同じ。みなさんは愛犬のおしっこの回数を気にしたことはありますか。実は寒い季節になると、自然に水を飲む量が減り、おしっこの回数も少なくなります。本記事では、犬のおしっこの平均回数、おしっこが減ることで考えられる病気、飲水量が減った際の対策法をご紹介します。
愛犬の健康管理のひとつとして、おしっこの回数や量を日ごろからチェックすることを心がけましょう。まずは犬の平均的なおしっこの回数を目安として知っておくことが大切です。
子犬は膀胱が未成熟なこともあり、少ない量のおしっこを何回かに分けてします。しかし、生後半年を過ぎるころには膀胱も成熟し、おしっこの回数が少しずつ減っていきます。
成犬になると膀胱がすっかり成熟し、回数も安定してきますが、去勢・避妊手術の有無、個体差によって差が出てきます。また、それぞれの犬の癖もあり、いろんな場所で複数回に分けて少しずつ出したい犬もいれば、一か所で大量に出したい犬もいます。
老犬になってくると泌尿器の機能が徐々に低下し、膀胱に十分な量が溜めにくくなります。そのため、成犬の頃よりおしっこの回数が増えていきます。
以上はあくまで目安であり、犬には個体差がありますので、愛犬が健康な状態のおしっこの回数をチェックしておき、それを目安にすることがおすすめです。
一般的に成犬では、健康な状態で1日のおしっこの量が「体重1kgあたり28ml〜47ml」とされています。そのため、体重1kgあたり7ml以下になると「乏尿」、2ml以下になると「無尿」とされ、病気などの異常が起きている可能性が考えられます。
しかし、おしっこの量を正確に測ることは難しいため、一日の飲水量を計ることをおすすめします。
例えば小型犬であれば、500mlのペットボトルを用意し水を入れ、このペットボトルからおうちで飲む水、散歩時に飲む水を与えます。朝500mlだった水が翌日の朝までに、どの程度減っているかで大体の一日の飲水量を把握することができます。
人間も暑い季節はたくさん水を飲みますが、寒くなるとその量が減りますよね。同じように犬も、寒い季節には散歩の回数や運動量も少なくなりがちで、その分水も飲まなくなります。その結果、おしっこの回数が減ることになります。
愛犬のおしっこの回数が減った場合、健康のためにどのようなことをすれば良いのでしょうか。ここでは、対処法をご紹介します。
まずは基本として常に新鮮な水を用意してあげましょう。寒い日には水を人肌程度に温めるなどして、愛犬が飲みやすく飲水量が増えるようにしましょう。また、水飲み場が寒くないかも確認しましょう。できれば愛犬が最も長く過ごす部屋に水飲み場を設置すると良いでしょう。
それでも飲水量が少ない場合、ドライフードからウエットフードに替える、またはドライフードを人肌程度のぬるま湯でふやかすことで、ごはんを食べながら水分が補給できるようにします。水よりぬるま湯のほうがフードの美味しい香りが立ちやすいため、食欲増進にもつながります。
愛犬におしっこを我慢させてしまうと、膀胱炎のリスクが高まります。愛犬が散歩の時だけおしっこをする習慣がついている場合、冬に散歩時間が減ることでおしっこが十分にできずに我慢している可能性があります。そのような状態にならないためには、普段から室内でもおしっこができるようにトレーニングしておくことも大切です。
では、おしっこの回数や量が減ると、どのようなトラブルが起こりやすくなるのでしょうか。考えられる病気を解説します。
尿路結石症は、腎臓から尿道までの尿路に結石が生じる病気で、特にオスに多い病気です。原因としては主に細菌感染やストレス、食事などが原因で起こりますが、飲水量の減少により尿が濃縮され、結石ができやすくなります。
オスは体の構造上、尿道が狭くて長いため、できた結石が詰まりやすい傾向にあります。一方でメスは尿道が太くて短いため結石は流れやすいですが、細菌感染を起こしやすく、そこから尿路結石ができてしまうことがあります。
また、結石ができると刺激により粘膜が炎症し、頻尿や血尿、排尿痛などの症状が出ることがあります。さらに尿道炎や膀胱炎を併発することもあります。
膀胱炎は、主に尿道から細菌に感染し、膀胱で炎症を起こしたときに発症します。また、細菌による炎症の他にも結石や腫瘍、ストレス、寒冷による炎症もあります。膀胱炎は、一度かかると慢性化することがあり、腎盂炎(じんうえん)や尿路結石などの原因にもなります。
この病気は主にメスに多く見られます。尿道が太く短く、尿路が肛門に近いため大便から細菌感染しやすいという理由からです。症状は、頻尿や血尿、おしっこをしようとしても出ないことがあり、排尿痛を伴うことがあります。また、発熱や食欲不振など、病気の際に起こる一般的な症状も見られます。
慢性腎臓病は、数カ月から数年かけて腎臓の機能が徐々に低下していく病気です。原因は細菌感染や免疫異常による腎炎、薬物中毒など様々ですが、結石による尿路閉鎖でも起こります。
この病気は、高齢の犬ほどリスクが大きく、発症すると多飲・多尿の症状が現れ、食欲不振からくる体重減少や嘔吐、貧血なども引き起こします。病状が進むと尿毒症に発展します。下痢やけいれんなどの神経系の症状が見られ、深刻な状態に陥ることもあります。
前立腺肥大症は、去勢手術をしていないオスの老犬に多く見られます。加齢に伴い男性ホルモンが減少することで、女性ホルモンとのバランスが崩れやすくなることが原因と言われています。
初期症状はほとんどありませんが、病気が進行すると尿道および腸が圧迫されることから、尿や便が出にくいといった症状が出ます。
犬のおしっこの回数や飲水量は、減るだけでなく増える場合にも注意が必要です。例えば、暑い季節でもなく、運動したわけでもないのに愛犬がいつもより頻繁に水を飲みたがったり、おしっこを何度もしたがったりする場合は、何らかの病気を疑ってみるべきでしょう。
多飲・多尿の症状が出た場合に考えられる病気としては、糖尿病や慢性腎臓病、上皮小体(副甲状腺)機能亢進症、副腎皮質機能亢進症などの可能性があります。
寒い季節になると、散歩の回数や時間が減り、水を飲む量も減ってしまいがちです。愛犬のおしっこの回数が減ってしまった場合、できるだけ飲水量を増やすことが大切ですが、それでもおしっこが出ない、血尿が出るなどの異変が起きた場合は、すぐに動物病院で診察してもらいましょう。
文・監修:PECO
※このコンテンツは、2022年12月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。