ストレスとは、動物の心身に変化をもたらす刺激(ストレッサー)と、その刺激によって起こる反応(ストレス反応)の総称です。つまり、ストレス反応は犬が環境の変化に適応するために備わっているとても重要な反応です。一般的に「ストレス」というと「悪いもの」と思われますが、本当は悪いものばかりではありません。
例えば、愛犬を今まで連れて行ったことのない公園に連れて行くこともストレスの一種です。多くの犬は、新しい公園の環境から「良い刺激」を受けるはずです。
ストレスについて考える時に大切なことは、心身に悪影響を及ぼすようなストレッサーを避け、ストレス反応をできるだけ軽減・緩和してあげることです。
犬にとって心身への悪影響につながるストレッサーになる可能性があるものは、たくさんあります。代表的なものは次の通りです。
その他、暑い・寒いなどの気候、破裂・爆発音(雷や花火の音など)や金属音、飢えや渇きなども心身に悪影響を与える場合があります。
ストレス反応には、生理的反応と行動的反応があり、それぞれに急性的反応と慢性的反応があります。
また、犬がストレスの原因に対して「予測できない」、「対処できない」、「脅威に感じる」という場合に、ストレス反応は強くなります。つまり、ストレスが軽度か重度かということは、犬自身の感じ方によって左右されます。
ストレスを受けると、それに応答して犬の身体の中ではホルモンや神経伝達物質の分泌量が変化します。難しい話はさておき、観察できる生理的ストレス反応には次のようなものがあります。
犬は行動することでストレスに対処しようとします。主な行動的ストレス反応には次のようなものがあります。なお、犬が不快である時の基本的なボディランゲージの特徴は、耳を後方に倒す、伏し目がちになる(または目を大きく見開く)、相手と視線を外す、眉間が寄る、頭や尾が下がる、姿勢が低くなる、などです。
ストレスに対して比較的急性的に起こる行動として葛藤行動があります。葛藤行動には主に次のような行動があります。いずれもストレスに関係なくても起こる行動です。基本的には普段よりも頻繁に、または長い時間、その行動をしているとストレス反応の可能性があります。
ストレスに対して慢性的に起こる行動として異常行動があります。異常行動には主に次のような行動があります。いずれも正常な犬には起こりません。
これらのストレス反応の多くは、ストレスを受けた場面だけの特別な反応ではありません。愛犬の状況・状態を見ながら、本当にストレスから起こっている反応かどうか判断しましょう。
ストレス反応は本来自分を守るための反応ですが、過剰になると病気や異常行動を引き起こします。そうならないように、愛犬のストレスをなくしてあげたいと思うかもしれませんが、現実的にはストレスのまったくない生活を提供することは不可能です。そこで大切になるストレス対策のコツとして次のようなものがあります。
愛犬をよく観察して、よく知ることができれば、愛犬からのサインを見逃さず、悪いストレスから守ってあげることができるでしょう。
愛玩動物看護師/修士 [ 動物応用科学 ]( ヤマザキ動物看護大学 動物看護学部 伴侶動物行動管理学研究室 講師 )
麻布大学大学院 獣医学研究科 動物応用科学専攻 博士前期課程修了
人と動物の生活が豊かになるように、主に犬猫の動物行動学について教育研究に取り組んでいる。その他、動物病院にて問題行動の修正やしつけ相談、ペット用品開発の監修やアドバイスなどに携わる。共著に『知りたい!考えてみたい!どうぶつとの暮らし』(駿河台出版社)。
※このコンテンツは、2023年5月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。