お留守番中や飼い主さんの姿が見えなくなると吠え続けたり鳴いたりする、周りの物を破壊する、粗相をするなど、愛犬が普段では見せないような問題行動を起こすことがあります。それは分離不安症かもしれません。なかには、飼い主さんの一時的な在宅ワークが原因になっているケースもあるようです。今回は分離不安症の原因や症状、対処法を解説します。これから犬を飼おうと思われている方も必見です。
不安障害のひとつで「分離不安障害」とも呼ばれ、犬に限らず様々な動物に見られます。思いもよらないことで発症することもあり、飼い主さんの努力で改善できる軽度な不安症がほとんどです。愛犬のサインを見逃さず、早々に対処することが大切です。
分離不安症では、主に以下のような行動や症状が現れます。愛犬に当てはまる行動や症状がないかチェックしてみましょう。
もし愛犬が子犬であったり、家に来て間もなかったりする場合には、分離不安症ではなく、新しい環境に慣れていないだけということがほとんどです。愛犬が環境に慣れるまで、焦らず様子を見ることが大切です。
では、どのようなことで犬は分離不安症になるのでしょうか。
分離不安症の原因は様々あり、飼い主さんがその原因に気づかないこともあるようです。
分離不安症のよくある原因のひとつです。例えば、家の引っ越しやリフォーム、赤ちゃんなどの新しい家族、同居するペットが増えたというような家族構成の変化などにより、不安や寂しさを感じるようになります。
母犬から離れた子犬にとって、唯一の家族である飼い主さんの姿が長時間見えないことはとても不安でしょう。これが原因でわずか数分でも飼い主さんがいなくなると鳴き続けたりすることがあります。
目や耳などの感覚器官が衰えることで不安を感じやすくなります。
スキンシップ不足が分離不安症の原因になることもあるようです。とはいえ、過剰に愛犬を構いすぎるのも考えものです。スキンシップ自体は推奨されることなのですが、常に誰かが愛犬の周りにいる環境では、愛犬が一匹で過ごすことを恐れるようになる可能性があります。実は、コロナ禍の影響により飼い主さんが外出を自粛したり、在宅ワークをしたりと自宅で過ごす時間が増えたことが分離不安症に繋がったというケースも増えました。
また、外出前に過剰なスキンシップや声掛けをするなど、飼い主さんにとっては愛犬を寂しがらせないための行動であっても、分離不安症を引き起こす原因になります。このように、愛犬が症状を引き起こすきっかけは多様にあるため、飼い主さんは自分の行動が原因に繋がっていないか、よく考える必要があります。
軽度の分離不安症や、環境の変化がきっかけと思われる場合は、時間をかけて徐々に愛犬に慣れてもらいながら、飼い主さんの努力で解決や改善を図りましょう。しっかりと原因を探り、愛犬の不安や恐怖を取り除いてあげることが重要です。次にケース別の対処法をご紹介します。
まずはご自身の生活サイクルや環境を考えたときに、以下に当てはまっていないでしょうか。
ひとつでも当てはまる場合には、犬を迎えるべきなのか、迎えるべきタイミングは適切なのかを検討した方がよいでしょう。
一番大切なことは、飼い主さんが常に側にいなくても、愛犬が安心できる環境を作ってあげることです。愛犬にとってお留守番は当たり前と感じるようにしてあげましょう。例えば、外出の際に飼い主さんが、特別なことではないよ、普段と変わらないよ、という表情・態度を示すことで、愛犬は不安を感じにくくなります。
他にも、普段からクレートやケージに入ることに慣れさせるとよいでしょう。寝る時だけではなく、一定時間その中で待つという行動がとれるようになるだけで、お留守番中もストレスを感じにくくなるでしょう。
このケースでは、行動療法に基づいたトレーニングなどによる対処が必要です。簡単なトレーニングとして、飼い主さんが在宅中に愛犬だけで過ごす時間を作り、徐々に慣れさせていくことです。
まず、愛犬に声をかけずに部屋を出て、少ししたら戻ります。はじめのうちは5〜10分と短時間で行いましょう。ここで肝心なのは、愛犬が鳴いても決してすぐに戻ったり、声をかけないことです。愛犬に「飼い主さんは必ず戻ってくる」と信じさせるトレーニングなのです。慣れてきたら徐々に時間を延ばしていきましょう。このとき、愛犬との距離は顔や姿が確認できる距離から始めても問題ありません。少しずつ根気強く、距離と時間を伸ばすことが重要です。
コロナ禍による在宅ワークで、愛犬と過ごす時間が増えた方も多いでしょう。しかし、過度にコミュニケーションをとることは避けましょう。過度なコミュニケーションをとり続けることで、いざ愛犬がお留守番をする際に大きな不安を感じる可能性が高くなります。
鳴きやまない、物を破壊するといった行動に対し、これまでに挙げたトレーニング法で改善が見られなかったり、粗相、下痢、嘔吐、大量のよだれといった症状が続く場合には、病気など他の原因が関係している可能性もありますので、できるだけ早く動物病院に連れて行き、原因を特定しましょう。
また、トレーニングがうまくいっていない場合には、ドッグトレーナーといった専門家に相談すると個別の犬に合わせた対策を提案してくれます。
愛犬の分離不安症は、一見するとしつけの問題や愛犬の愛情表現の一種と受け取られることもありますが、その奥には愛犬の精神的な問題が考えられます。少しでも徴候が現れたら、まずは観察をして、しかるべき処置をとりましょう。
愛犬の分離不安症とは、飼い主さんの姿が見えなくなることで、愛犬が大きな不安を感じ、長時間にわたり吠え続けたり、鳴き続けたり、物の破壊や粗相といった問題行動をしてしまうことです。発症を抑えるためには、愛犬だけではなく飼い主さんの努力も必要です。個体差や生活環境の違いなどで原因は様々ですが、症状が見られたら、原因を探してトレーニングや病院などで対処をしてあげましょう。
文・監修:PECO
※このコンテンツは、2022年4月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。