わんこを外出させれば夏場は蚊に刺される可能性が大です。蚊の活動時期には、蚊が媒介する病気、フィラリアの予防薬をしっかり服用させましょう。服用時期は地域によって違うので、必ず「いつぐらいにどこに旅行するか」を動物病院に申告して相談を。
また、普段からノミ・ダニの駆除薬も使っておくほうが安心です。ノミは刺されると強いかゆみを引き起こし、アレルギーの原因になったり、瓜実条虫(サナダ虫)という消化管に寄生する寄生虫を媒介したりすることがあります。多くの種類があるダニうち、野山などで感染してしまう可能性が高いのがマダニ。マダニは体が膨れ上がるほど吸血するため(下の写真参照)、大量に感染すると貧血を起こすことがあります。また、少数でもアレルギー性皮膚炎を引き起こしたり、感染症を媒介したりすることがあるのです。人が刺されると、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を発症することもあるので注意が必要。
薬剤の説明書はしっかり読んで、愛犬が使っている薬は①どんな種類のノミ・ダニに②どのくらいの期間効果があるのか、を知っておいてください。耳ダニには効くけれど、マダニには効果がない、というノミ・ダニ駆除薬もあるからです。
たとえば、人畜共通感染症として知られるレプトスピラ症は、東日本よりも西日本で多く発生しています。また、沖縄などに生息する一部のダニは、関東などで処方されるノミ・ダニ駆除薬では効果がない、という報告もあります。わんこ連れで遠方へ旅行する場合には、インターネットなどで現地の感染症や害虫の情報を調べておきましょう。レプトスピラ症には予防するためのワクチンがありますし、地域性の強いダニには、現地で処方されているノミ・ダニ駆除薬をつけてから遊びに行く、という方法もあります。
虫やヘビに咬まれたときは、蛇口から流しっぱなしにした水道水などの流水で、患部をきれいに洗い流すのが基本的な対処方法です。ただし、ダニには注意が必要。わんこの体にダニがついているのを発見したとき、あわてて体を洗ったりダニを取り去ろうとすると、頭だけがちぎれて残ってしまうことがあります。ダニがついているのを見つけたら、すぐに近隣の動物病院に相談するか、滴下タイプでダニの成虫に効果のあるノミ・ダニ駆除薬を体にふりかけ、ダニがわんこの体から落ちてから患部を洗ってください。ハチやヘビなど、毒があるかもしれない相手に刺されたり咬まれたりした場合は、患部を洗ってすぐに動物病院へ。
わんこにノミやダニがついた場合は、クルマの中や家の中も念のため殺虫剤で虫の駆除をしてください。体から落ちたノミ・ダニが潜んでいるかもしれません。
内田 恵子
獣医師。元ACプラザ苅谷動物病院 専務取締役統括院長。JAHA認定獣医内科医、JAHA認定パピーケアスタッフ、日本小動物血液療法研究会会長。内科・神経科・行動学を中心に、脳と心の治療の研究がライフワーク。