Case 07
2023.11.30

課長を務める中、育休取得。妻のキャリアも尊重し、仕事と育児を両立

四輪の事業管理を担う部門の課長を務める中、第2子誕生時に育休を取得し、現在は青山本社にある財務部IR課 課長である丹羽さんの事例です。妻も他社でマネジメントをし、「妻のキャリアも尊重し、フェアな育児分担を目指したい。『育休取得は当たり前』の意識を広めたい」という思いがありました。
■丹羽 亮輔さん(43歳)

コーポレート管理本部 経理財務統括部 財務部 IR課 課長※インタビュー当時

家族構成は、妻と子供2人

■育休取得タイミング/時期
1人目が生まれた時は取得なし/2018年5月
2人目が生まれて育休1ヶ月と特休・有休を合わせて約2ヶ月弱/2023年1月〜2月

丹羽さん
丹羽さん

共働き世代が増える現代、男性も育休を取得しないと育児は成立しない

第2子誕生の時に、育休を取得された経緯を教えてください。

丹羽さん:共働き家庭で、妻は別の会社でマネジメントをしています。第1子の長男が生まれた時に、私が育休を取得しなかったことで、妻の負担がかなり多くなりました。第2子の誕生で、長男の育児もあり、より負荷が高まるため、事実上、私が育休を取る以外の選択肢はありませんでした。

第1子誕生時、夫婦の役割分担はどのような割合ですか?

丹羽さん:妻が出産後すぐに実家に戻って、約2ヶ月間、実家の両親と一緒に長男の面倒を見てくれていました。私は異動のタイミング、かつ管理職になったばかりだったため、ほぼ100%仕事に没頭していまして……。生まれた直後の2ヶ月間という、妻がいちばん大変なタイミングで何のサポートもできなかったことが、第1子誕生の時の反省点です。「妻が実家に帰っていれば逆に安心だ」くらいに思っていて、親として自覚が欠けていました。

親として自覚が欠けていたとのことですが、奥さんからそうした指摘を受けたのでしょうか?

丹羽さん:そうですね。妻から、産後のつらかったエピソードと共に、指摘を受けていました。そうした第1子誕生時の反省点があり、第2子の時は育休取得に迷いはなく「育児と仕事をどのようにうまく両立させていくか?」を考えていました。

男性の育休取得に対して、どんなイメージをお持ちでしたか?

丹羽さん:誰もが育休を取得でき、共働きが増えている現代社会では、男性も育休を取得しないと成立し得ないという感覚です。ただその感覚に至ったのは、子供が生まれてからです。それまであまり子供に関わることがない生活だったので、育休そのものに対してもイメージがありませんでした。

第2子誕生時の育休取得期間や、取得のタイミングはどのように決めたのでしょうか。

丹羽さん:生まれた後すぐの約1ヶ月間、育休を取得することにしました。その時期がいちばん体力的につらいので、育休の必要性が高いという話をしていました。時期的にもちょうど仕事の繁忙期から外れていて、取得が現実的なタイミングだということも見えていたので、そこで取ろうと決めました。

丹羽さん
丹羽さん

フェアな育児分担を目指したい

育休を取得することを、上司にはいつ伝えましたか?

丹羽さん:安定期に入ったタイミングで伝えました。その場で「じゃあ、育休を取るんだね」という感じで、取ることありきで背中を押してくれ、そのままスムーズに話が進みました。世の中の流れ的にも共働きが普通になっていく中で、上司も「男性が育休を取るのは当たり前」という考え方をお持ちだったので、非常に相談しやすかったです。

育休を取得するまでに、どんな準備をされましたか?

丹羽さん:同じ課に管理職の同僚がいて、もともとタッグを組んでの仕事が多かったんです。育休前はその要素をより強めて、仕事の業務計画を立てる時も常に一緒に入るようにしていましたが、いつ自分がいなくなっても、その管理職の彼が回せる状況づくりを心がけていました。正直、その同僚の仕事量は増えてしまいましたが、彼とは20代の頃からずっと一緒に仕事をしてきて、気心の知れた関係だったので、「育休を取るからよろしく頼む」という話をしたら、「わかった」と快く引き受けてくれました。

第2子出産当時は栃木勤務でしたが、どのような働き方だったのでしょうか?

丹羽さん:妻の職場が東京でしたので、当時は栃木まで新幹線通勤でしたが、リモートワークや青山本社での仕事も組み合わせながら働いていました。育児に関しては栃木に出社する日とそうでない日それぞれできることをする形です。

育児の中で分担していたことを教えてください。

丹羽さん:朝食の用意とお弁当づくり、幼稚園への送り迎え、夜に子供と遊んで寝かしつけるまでが、基本的に私の担当です。ただ、栃木出社の日の場合、送り迎えは妻がしていました。

現在の1日のスケジュールを教えてください。

丹羽さん:朝6時に起きてお弁当、朝ごはんを作って、8時半に子供を幼稚園に預けてから出社します。18時過ぎに帰ってきて、妻が用意してくれた夕飯を食べて、仕事がある場合はその後にリモート会議をする時もあります。ない時は子供と遊び、20時から21時の間に寝かしつけます。

  • 6:15 起床・長男お弁当準備・朝食準備
  • 7:00 朝食
  • 7:30 長女登園準備・長男勉強サポート
  • 8:45 長男幼稚園送り・長女保育園送り
  • 9:30 出社
  • 9:30 課内会議・報告・投資家取材等
  • 12:00 昼食
  • 13:00 課内会議・報告・投資家取材等
  • 17:00 退社
  • 17:30 お迎え等
  • 18:00 入浴、夕食、子供と遊ぶ など
  • 20:00 長男寝かしつけ
  • 21:00 会議(with管理職)
  • 23:30 就寝
  • 6:15 起床・長男お弁当準備・朝食準備
  • 7:00 朝食
  • 7:30 長女登園準備・長男勉強サポート
  • 8:45 長男幼稚園送り・長女保育園送り
  • 9:30 出社
  • 9:30 課内会議・報告・投資家取材等
  • 12:00 昼食
  • 13:00 課内会議・報告・投資家取材等
  • 18:30 退社
  • 19:00 入浴、夕食、子供と遊ぶ など
  • 20:00 長男寝かしつけ
  • 21:00 個人作業(終わるまで)

しっかり育児を分担されていますね。

丹羽さん:上のスケジュールはMAXに育児ができた時で、出張時は全て妻に任せる形になります。本来なら17時頃には会社を出て幼稚園に迎えに行かなければなりませんが、お迎えに行くことができない日が続くことがあります。妻ばかりが毎日お迎えに行くことになり、育児分担のフェアネスが若干足りないんじゃないか、という指摘が当然ですがあります。そこをもっとバランスよく分担できるように、今後のやり方を見直さなきゃいけない、というのが目下の課題です。

育休から復帰され、その後、栃木から青山勤務になり、働き方は変わりましたか?

丹羽さん:仕事の内容自体がかなり変わりました。異動時期の4月が経理の決算と重なり、そこから株主総会のある6月中旬までが、部署の中でもいちばんの繁忙期だったんです。そのため、ある意味第1子の時と似た流れになってしまいました。妻には「異動してから最初の2ヶ月半だけは、キャッチアップの意味でも仕事に集中させて欲しい」というお願いをして、やれる育児は当然やりつつも、仕事に重心を置いた生活をしていました。
それ以降はだいぶ仕事の感覚も掴め、育児の分担をしているものの、思うようにはお迎えに行けてはいません。特に、妻が忙しいタイミングにもっとサポートできるようにならないといけないな、と。今は少しずつ、お互いの仕事の山谷(繁忙期)がズレるタイミングもわかってきたので、今後はお互いにサポートし合えるようにしたいです。

育休を取得して、仕事面ではどんな変化がありましたか?

丹羽さん:子育てにある程度の時間を割かざるを得ないので、仕事に使える時間はどうしても前よりは減ってしまいます。そこでメリハリをつけて、いかに効率的にパフォーマンスを出すかを意識するようになりました。

奥さんも他社でマネジメントをされ、さらに期待されていると思いますが、夫婦の、仕事と育児のバランスはどのような形が理想でしょうか?

丹羽さん:今は私が出張などで育児ができない時は、仕事を優先してしまい妻に対応してもらっています。今後は逆に、たとえば妻が海外出張に1週間行く時、安心して私に育児を任せ、仕事に集中してもらうことが理想です。妻も、今年、私と同じく4月1日で異動になり、以前よりも出社頻度が増えました。妻が必要な時にいつでも出社できるように、私も仕事を調整するようにしています。どちらか一方が我慢するのではなく、お互いがフェアに仕事と育児のバランスを取っていくことを目指したいです。

丹羽さん
丹羽さん

「育休を取ることは当たり前」という意識を広めたい

現在の職場で、周囲のサポートはありますか?

丹羽さん:上司の理解は大変大きく、リモートワークを組み合わせやすい環境を作ってくださっています。管理職の同僚達も理解してくれています。私だけリモートで会議に参加となる場合も快く受け入れてくれます。また、うちのメンバーは半分以上が子育て中なので、育児が事由でのリモートワークをかなり流動的に取り入れています。ご飯を食べさせるなど、育児が忙しいタイミングはだいたい一緒です。どうしてもミーティングが必要な場合は、子供が寝るまでの時間や、寝た後など、皆がやりやすいタイミングで、あまり遅い時間にならないようにしながら、都合の良い時間に設定しています。みんなが仕事と育児のバランスを上手く取れるように工夫しています。

育児中でも、働きやすい環境ですね。

丹羽さん:私の前任も同じく子育てをしている課長でしたので、課の風土として子育て中の働き方に理解があり、自然と私もそのマインドに入っていけたと思います。
私もそうですが、メンバーそれぞれ、スケジュール上でいつ帰宅してお迎えに行くかなどの情報を共有できるようにしています。たとえば17時〜18時、18時〜19時と会議が連続した場合、子育て中のメンバーはその前に帰宅しないといけない。ですので、15時に一旦会社を出て、自宅からリモートで会議に参加する働き方などを積極的に取り入れるようにしています。

本社の経理財務部門は、かなりのハードワークを想像しますが、その中でもみなさん上手く子育てとのワークバランスを取っているのですね。

丹羽さん:IR課に限らず、経理部は決算に合わせた忙しさの山谷があって、繁忙期は子育て世代に関わらず、かなり忙しくなります。反面、そのメリハリがわかってる分、メンバー同士も互いに希望する働き方を提案しやすいところがあります。
直属の係長も奥さんがバリバリに働いていて、曜日ごとに夕飯の分担を決めるなど家事・育児を完全に分担しているようです。身近にそういうお手本がいてありがたいですし、私もそういう存在になれればいいなと思います。

部下から育休の相談を受けた場合はどのような対応をしますか?

丹羽さん:取得する前提で話を始め、“取らない”という選択肢はない前提で会話すると思います。私が育休を取得しようと考えたのは、自分の人生で数少ない経験になる、と思った部分も大きいです。育児ができるのは、子供が2人生まれたら2回しかないチャンスだし、3人だったら3回だけのチャンスです。育児を通じ、これまでと違う視点を持つことで、価値観も変わるので、仕事にも何かしらのフィードバックが必ずあります。

育休を取得することで、その後のキャリアや収入などさまざまな不安を抱える方も多いですが、不安解消のために管理職として何ができると思いますか?

丹羽さん:取るのが当たり前になれば、取る人/取らない人の差もなくなるはずですが、現在のHondaの人事制度は柔軟性を増しています。一度育休で会社を離れた期間があったとしても、戻ってきてからのパフォーマンス次第でキャッチアップは充分可能です。育休に対する会社の意識、会社の評価制度も、進化してるんだよってことを、しっかり伝えたいです。

育休を取りたいと思っていても、なかなか上司に言い出せないという方へのアドバイスはありますか?

丹羽さん:上司は育休取得に対してポジティブに受け止めてくれます。おそらく、今のHonda社内に、部下が真面目に育休を取りたいと相談してきた時に「いや、困るよ」と答える上司はいないです。

また、繁忙期と出産時期が被った場合など、周囲に迷惑をかけたくないと育休取得を迷ってしまう人はいると思います。

丹羽さん:出産は限られた機会ですからそちらを優先するのは当然。たとえば私の部門は決算が年に4回あります。育休で決算を1回休むとしても、周囲が多少無理するにしても、経験者にヘルプを頼むなどして、なんとかサポートできます。どういう状況であれ、やりようはあるので、まずは言ってもらうことが大事です。1年とか長期の育休を取りたい場合も、会社側はフレキシブルに対応できるので、家庭の環境を優先してもらって大丈夫です。私は経理財務人材全体のジョブローテーションを考える仕事もしています。その中で育休取得者がいる場合は、当然そのポジションが空きますが、前向きに補充を考えます。また、育休を終え復帰する際もそれまでの経歴や実績を踏まえて、原籍復帰にこだわらずに適した仕事に就いてもらえるように考えます。そこはマネジメントが工夫して対応するので、育休期間についても、まず要望を伝えて欲しいです。

では最後に、育休取得を考えている方に、マネジメントの視点でアドバイスをお願いします。

丹羽さん:まず育休の取得にあたっては、取ることが当たり前の時代に自分たちが生きているという気持ちで、まったく遠慮なく伝えてもらえればと思います。そしてその後、ご自身がマネジメントになった時に、部下が育休の話をしてきたら、当たり前のものとして受け入れる。そういう流れを作り出せたらいいと思います。

上司・同僚からのコメント
上司の声
上司の声 廣田 和久さん 執行職
コーポレート管理本部
事業管理統括部
<統括部長>
※インタビュー当時
丹羽さんから「育児休職を取りたい」との意向を受けた時、どのような気持ちでしたか?

管理職であれ、一般の組合員であれ、育休は自然なことだと考えていたので快諾しました。そして、自分がするべきこととして、復帰した時に、育休を取得したことでご自身が会社に迷惑をかけたと思わないように、丹羽さんが抜けた後の仕事の質を落とさずに、どのようにまわしていくかを考えました。また、管理職でも育休が取得できるという前例を作ることで、より多くの人に育休が広まれば良いと考えました。

育休を取得しやすい風土を醸成する上で、トップマネジメントとして、心掛けていることはありますか?

普段からコミュニケーションをしっかり取ることだと思います。丹羽さんは既に生まれていた長男の育児でも苦労をしていたので、普段から長男のことについて会話をしていました。仕事はもちろんのことですが、プライベートに深く踏み込まないようにしながらも、家庭の状況などについても世間話レベルで話すことが大事だと思います。

同僚の声
同僚の声 大谷 太吉三さん コーポレート管理本部 事業管理統括部 四輪・電動事業管理部 事業企画課
主幹
※インタビュー当時
丹羽さんが育休に入る前や育休中にサポートされた際、やりにくさを感じたことや工夫したことなどありますか?

丹羽さんが新幹線通勤となり、栃木に出社されないこともあったので、従来から上位層への対応や部下たちへの指示・指導を行っていました。自分自身が課長のつもりで仕事をしていたため、特にやりにくさはありませんでした。

これまでの記事