Case 03
2022.08.31

休む=ブランクではない
育休の中でこそ得られる、会社の成長に活かせる経験がある

当初、正直休むことに不安があったという菅さん。しかし、実際に育休を取ることで、育児参加の経験だけでなく、自分の業務や会社の成長に貢献できる、重要な経験もできたそうです。
菅さんが育休で経験した大事なこととは?
■菅 彬洋さん(38歳)

二輪・PP事業本部ものづくり統括部ものづくり企画・開発部購買・CIC統括課 チーフ ※インタビュー当時
二輪のEV開発における調達担当PLとして、コスト管理や部品戦略のとりまとめに従事。
家族構成は、妻と子供ひとり(1歳6ヶ月)※2022年第2子出産予定

■育休取得タイミング/時期
1人目出産の1ヶ月後から6ヶ月/2021年1月~6月
2人目は出産後1ヶ月取得予定

周囲に育休を取った先輩はいましたか?

菅さん:ちょうど妻が妊娠してしばらく経った時期に、 3ヶ月の育休から復帰された先輩が同じグループにいました。「24時間子供と接することで、日々の成長の変化が見られる。その嬉しさは育休を取らないと味わえない」と聞き、自分に身近な話題で、すごく心に刺さりました。

育休取得へのハードルは感じましたか?

菅さん:あまり感じませんでした。夫婦共働きで、普段からフェアな関係でお互いの仕事ができるようにしようとは話してきたため、妻だけ取るのではなく私も取るべきと自然に考えていました。グループリーダーには妻が妊娠したタイミングで、育休を取得したいと話していました。そのときに「じゃあ課長には話しておくから大丈夫だよ」とお話しいただき、とても安心しました。

育休取得を伝えたときの社内の反応はいかがでしたか?

菅さん:ネガティブな反応は全然なかったです。強いて言えば、同年代は「おおっ、いいじゃん!」といった感じでしたが、実家に相談した際は、60代の父から「復帰は早い方がいい」と言われました。「男が6ヶ月も取るのか」という気持ちがあったのかもしれません。

ご自身は、育休を取ることに不安はありましたか?

菅さん:正直ありました。父のような言葉を聞くと、まだ世の中が受け入れてくれるわけではないのかと考えたりもして……。ただ、ワークライフバランスを考えたときに、自分の中で何が大切かを確認して、今このタイミングは息子の育児に関わることだと思ったんです。第一子ということで妻も精神的に不安になっていて、サポートするべきと感じていました。

育児の過程をすべて夫婦で共有できた

実際に育休を取って、6ヶ月はあっという間でしたか?

菅さん:はい。予定日より早く生まれたので、リモートワークを活用し、断続的に何とか時間をつくりながら育児に関わった後、予定通り育休に入りました。初めて立った時、そしてハイハイ、寝返りと、いくつもの“初めての瞬間”に立ち会えたのは、なんとも言えないうれしさがありました。ピンポイントではなく、育児と成長の過程をすべて共有できたのは、今後の夫婦関係にも大きな意味があったと感じています。

夫婦で交代して育児ができるのは大きなメリットですね。

菅さん:そこは大きいですね。やはり、2人で同時に同じ育児を経験しているので、仮にどちらかが体調を崩しても、どうすればいいかある程度わかっていますし、「なんとかなる」という安心感は、育休を取得したからこそ得られたものだと強く思います。妻も「いざというときに(私が)ワンオペできることは心強い、安心して仕事に復帰できる」と言ってくれています。

育児で大変さを感じたのはどんなところでしょうか。

菅さん:子供がミルクを全然飲まなかったので、すごく不安になりました。でも、もし育休を取っていなければ、ミルクの飲む量を相談されても「そんなに大変なの?」と、何も言えなかったと思います。そういうとき、その過程をわかった上で話し合いができるのはすごくよかったです。

育児に没頭しながらも、仕事のことが気になることはありましたか?

菅さん:「いまどんな風に進んでいるのかな?」と気になる瞬間はありましたが、特に連絡はしませんでした。今思えば、状況を聞いてもよかったとは思います。

仕事で遅れを取る、という心配は杞憂だった

職場は以前と同じ業務に復帰されたのですか?

菅さん:同じ場所ですが、ちょっとした焦りと不安があったのは確かです。でも復帰してみたら、意外と難なく復帰前の状態に戻れましたね。もともと仕事が好きだったので、取得する前から、復帰後も頑張ろうと思っていました。実際、仕事へのモチベーションは高まったと思っています。

育休後の職場で、周囲の対応になにか変化はありましたか?

菅さん:特に同年代の方から「育児は大変なんだから、そっち優先で頑張ってね」と応援していただいたり、ちょっと遅い時間に会議があると「大丈夫?」と声をかけてもらえることが結構あります。そういう声はすごく心強いですし、自分は育児も仕事もしていいんだと感じる支えになっています。

育休を取ったことで、菅さんご自身の周囲に対する気持ちの変化はありましたか?

菅さん:実は昔、タッグを組んで業務を回していた方が産休に入られて、その代わりに来られた方も育児で短時間勤務をされていたことがありました。そのときは「子育てって大変そうだな」くらいにしか考えていませんでしたが、実際に自分が育児をしてみると、「あの方達は24時間フルで頑張っていたんだ」と気づき、まったく見方が変わりました。当時は相手が短時間勤務なことで、若干自分の負担が増えたりもしたので、正直ネガティブな気持ちもあって……。でも今は、彼女達はものすごく頑張っていて、しかも帰った後もその頑張りが続く生活をしていたのだとわかります。今でも「あの時、もうちょっとサポートしてあげられれば良かった」と考えることがありますね。また、私自身、育休中は、育児に専念でき、すごく充実していました。自分が悪しき前例にならないようにと意識が芽生え、「できる範囲で最大限頑張ろう」と、よいモチベーションにつながっています。

現在、菅さんご自身も24時間頑張っているわけですが、育児と仕事の両立をどう工夫して乗り越えていますか?

菅さん:小さな子供は、いつ何が起きるか予測がつきません。基本出社ではありますが、上司のご理解により、リモートワークを活用し、時間をフレキシブルに使わせてもらうことで、突発の事象も含め乗り切っています。

育休に対する社内の意識はどんどん変わっている

菅さんは、パートナーの第二子出産に備え、今、短時間勤務をされていますが、どういった経緯で、時短という選択を決めたのですが?

菅さん:Hondaには「仕事と育児・介護の両立支援ハンドブック」があり、子供ができたときにそれを熟読しました。もう「使える制度の申請は絶対に漏らさないぞ」という気持ちといいますか(笑)。ハンドブックを通じて、男性も短時間勤務という選択肢があることを知り、制度があるなら使おうと自然に考えました。

短時間勤務の相談は、最初にどなたにされましたか?

菅さん:グループリーダーです。1人目のときとはまた違う方なのですが、快く受け止めていただきました。本当にスムーズでしたね。

二人目は、どのくらいの期間、育休を取得されますか?

菅さん:1ヶ月取得予定で、その後は分割の取得も検討したいです。本当は1年くらい取りたいですが、上の子を保育園に通わせている都合上、住いのある自治体独自のルールにより、1ヶ月以上の取得ができません。

1人目の育休を相談した約2年前と比べて、社内の育休への温度感は変わりましたか?

菅さん:確かに社内の人事情報を見ると、男性従業員の方で、「育休」とか「育休から復帰」という文字を結構見かけるようになり、空気が少しずつ変わったように感じます。最初の育休を取るまでは、そうした情報はほとんど見受けられなかった気がします。最近は1年間の育休を取る男性従業員もおり、そういう例を見ると「自分の選択は間違ってなかった」と、心強く思います。

同僚の方から育休の相談を受けることもあるようですが、必ず伝えるアドバイスはありますか?

菅さん:「育児は間違いなく一人じゃ回らない」ということでしょうか。子供から目が離せない状態の中、それでもミルクだったり、離乳食を作らなくちゃいけない。それを全て1人でやろうとしたら成り立たないので、「育児は2人でやるべきだよ」と伝えています。それから、お金が関係する制度や補助のことを自分で調べることですかね。子供が生まれて6ヶ月までは育児休業給付金の支給額が67%の割合で適用されることなど、金銭的での不安が軽減される行政の支援制度もあります。会社が発行している「両立支援ハンドブック」にも色々書いてあるので、読むことを勧めています。

菅さんご自身は、育休をはじめ男性の育児参画は、Hondaにどう作用すると思いますか?

菅さん:やはり育児なり、介護なり、それぞれの事情で短時間勤務や休職をすることが普通になれば、自然と働き方の多様性は増すと思います。そして多様性を受け入れることは、すべての従業員の働きやすさにつながるのではないでしょうか。また、私が育休を通じて知ったことの一つが、街中のバリアフリーの重要性でした。日常的にベビーカーを使うようになるとちょっとした段差も苦になることを知り、エレベーターの設置がない駅は不便と気づいたんです。育児を通じて、誰もが移動しやすい社会への新たな視点が得られましたし、そうした視点を持つことで、モビリティ社会を担うHondaの成長に貢献できると思います。

素晴らしいメッセージだと思います。育休の間に、職場では得られないものを得て戻ってきたわけですよね。

菅さん:私も以前はそうでしたが、会社で働いているとどうしても「休む=ブランク」と捉えがちです。ですが育休中でも新たな気づきがたくさんあり、育児を通じて広がった視野は、仕事に対しても新たな視点を与えてくれました。そう考えると育休は決してブランクではありませんし、むしろ育休を取ることで得た経験が、これから違う形で活きたり、後のキャリアにつながることもあると思います。

最後に、これから育休取得を考えている皆さんに伝えたいことは?

菅さん:私自身、育休を取得したことでとても多くのことを得ることができました。当然、人によってワークライフバランスのどこに重きを置くかは違いますし、育休を取る・取らないの選択肢はあっていいと思います。一方で、出産後は、一生の中でも滅多にない経験ができるタイミングです。仕事にも、今後の人生にも絶対プラスになります。ぜひ育休を取って、育児を楽しんでください。

上司・同僚からのコメント
上司の声 與倉康文さん 二輪・PP事業本部ものづくり統括部ものづくり企画・開発部購買・CIC統括課 チーフエンジニア
※インタビュー当時
菅さんの育休取得後、良い変化を感じますか?

私は、今春より菅さんのマネジメントに就いています。一緒に業務を始めた際は職場全体がリモートワークの状態でしたが、他のメンバーと比べてもリモートワークの環境に上手く馴染み、Teamsなどのツールも活用しながら、不足しがちなコミュニケーションを上手く取っている印象です。加えて、菅さんは機種開発における購買領域のPLも担っていますが、LPL(開発責任者)からも「菅さんは本当によくやってくれている、コミュニケーションも問題ない」と聞き「しっかりやってくれているのだな」と思います。
今は、出社を基本とした働き方に戻りましたが、菅さんはリモートワークを上手に活用して変わらず成果を上げており、新しい働き方の方向性の一つを示しています。これは、職場のメンバーが菅さんの働き方を理解し、会議設定など色々配慮してくれていることも、大きな助けになっています。

育休を取得しやすい風土を醸成する上で、マネジメントとして、心得ていることはありますか?

各々、育児も含めて介護や自身の体調など様々な事情があると思います。業務都合を押し付けても無理なものは無理ですし、成果が上がらなければ、個人も会社も不幸になります。
本人の持てる力を最大限発揮できる環境を整えることが、長い目でみると成果の最大化につながるため、極力個々の事情に合わせて配慮しようと努めています。短期的に見ると、一人欠けることは周りのメンバーに取って大変苦しいのも事実ですが、お互いが助け合わざるを得ない環境に身を置くことで、「助けること、助けられること」が誰にとっても当たり前になり、環境変化に強い組織になると考えます。

同僚の声 宮近慎太郎さん 二輪・PP事業本部ものづくり統括部ものづくり企画・開発部購買・CIC統括課 主任
※インタビュー当時
サポートを通じ、育休に対するご自身の考え方によい変化はありましたか?

もともと育休取得は良いことだと思っていて、その気持ちは今も変わりません。菅さんの育休にあたっては、菅さんの代わりの方をつけていただくまでを主にサポートしました。代わりの方がいたことで、自分の業務にそれほど影響はありませんでした。自分も機会があれば、積極的に育休を活用したいですね。

育休を取得しやすい風土になってきたと実感しますか?

周りで育休を取る方が確かに増えているので、取得しやすい風土になってきたと感じています。

奥さんからのコメント
奥さん
「育休はブランクではない」と菅さんがおっしゃっていました。ご夫婦のキャリアで、プラスに感じることはどのようなことですか?

双方がワンオペでも対応可能になり、育休復帰後の育児(保育園からの突然のお迎え要請・子の看病他)も分担できるようにしておくことで、夫婦どちらのキャリアも大切にできています。

出産直後に育休を取得されたことでよかったと思えるエピソードを教えてください

産後数週間は出産時の傷が痛くて歩くだけでも辛かったり、乳腺炎による高熱と痛みで数日寝込んだり、病院や助産院へ通って産後ケアを受けたりする中、コロナ禍で親やベビーシッターに頼りづらく、育児家事をメインで担ってくれ、助かりました。また、主人も、子供が夜も数時間毎に泣き、連続した睡眠時間を確保できない数ヶ月間、育休により日中、子供が寝ている間、少しでも仮眠を取って体調を維持できたことは良かったと思います。

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