

モーターサイクルらしいナチュラルなハンドリングと、水平対向6気筒エンジンがもたらす、走りの楽しさ。ライダーとパッセンジャーを走行時の風圧から守り、包み込むような大型のフェアリング、豊かな厚みとゆったりとしたサイズを持ったシートによる、まるで上質なソファに身を預けるかのような「極上のモーターサイクル」としての快適性。そして、他の何にも似ていない、独特の存在感。
こうした、GL以外のいかなるモデルでも味わえない、まさに唯一無二の「GLだけの世界」とも言うべきものは、1975年に登場した「初代」からずっと、経験豊かなライダーの求める理想を追い続けてきました。
そのコンセプトは、1975年にデビューした「GL1000」においては「ツアラーやクルーザー、スポーツバイクなど、あらゆるモーターサイクルの頂点に立つ『キングオブモーターサイクル』」という言葉で表されていました。
低振動、低騒音といったロングツーリングでの優れた快適性と、圧倒的な動力性能を発揮した新開発の水平対向4気筒エンジンは、Hondaにとって初の水冷エンジン。冷却フィンなどは持たないものの、補強用のリブやヘッドカバーのメッキの質感などを用いて豊かな表情をつくりだし、「エンジンはライダーの愛着を受け止める美しさがなくてはいけない」という、その後のHondaのモーターサイクルにも共通する思想が色濃く表れていました。
一方で、バイクを構成するメカニズムのレイアウトは、低重心による優れた走行安定性とメンテナンス性を追求するために、自由な発想が貫かれていました。燃料タンクをシート下に搭載することでさらなる低重心化を図り、それまで燃料タンクのあった位置には、エアクリーナーなどを収めた「シェルター」を設けたのです。
このように、長旅になるほど重要となる、快適なライディング性能としての斬新なメカニズムを持ちながらも威風堂々のスタイリングを誇り、「あらゆるモーターサイクルの頂点に立つ『キング』としての気品」を実現していたのが、「GL1000」のデザインの特徴でした。
1975年にデビューした「GLシリーズ」のルーツ、「GL1000」。
新開発の水平対向4気筒エンジンを搭載している。
「GL1000」のエンジンのスケッチ。
補強用のリブやメッキの質感を活かして豊かな表情を持たせた。

この「初代」GLののち、今回のGL1800に至るまでのデザインの方向性を決めたのは誰あろう、アメリカの「GL1000」オーナーたちでした。どこまででも走り続けたくなるようなパフォーマンスに惚れ込んだ多くのライダーたちがさらなる快適性を求めて、「GL1000」に市販のフェアリングやサドルバッグを取り付けて北米大陸を自由に走りまわり、仲間たちと旅を楽しみ始めたのです。
ただし、こうしたアフターパーツと「GL1000」が本来備えていたスポーティーな走り、キングとしての気品あるたたずまいは本来同居の難しいものであったのも確かです。
フェアリングやサドルバッグを装着すれば、その重さから走りは緩慢になり、本来追い求めていたはずのスポーティーさは失われることになりますし、モーターサイクルとしての完成されたバランスの良い"スタイル"を成り立たせることも難しくなっていきます。
そんな中、1980年にデビューさせた「GL1100 INTERSTATE」のスタイリングは、アメリカの経験豊富なライダー達の高い理想に応えていくことこそが真の「キングオブモーターサイクル」のデザインへの道であると信じたHondaからの、ひとつの回答であったと言えます。
1980年にデビューした「GL1100 INTERSTATE」。エンジンの排気量を拡大
するとともに、快適性をめざしたコンセプトとスタイリングを示した。
1984年にはエンジンの排気量をさらに拡大して「GL1200」となる。
熟成が進み、スポーティーさにも磨きをかけた。
ライダーとパッセンジャーを大型のフェアリングで守ることで、ほとんど風圧を感じさせず、それまでのモーターサイクルの快適性の概念をすっかり変えてしまうほどに徹底されたエアーマネージメント、大人ふたりが旅するために必要な荷物を収めることのできる容量を持つサドルバッグやトランク……このパッケージングから始まる新しいライフスタイルをイメージしていただける、唯一無二の威風堂々としたスタイリングを完成させたのです。
もちろん、Hondaがつくるバイクとしてのスポーティーさ、経験豊かなライダーも満足できるようなクオリティーと気品を保ったままで。
「GLシリーズ」はお客様とHondaとが共に創り上げていくモーターサイクルである──という考え方も、この「GL1100」から「GL1200」の時代にはっきりしたものになったと言えます。
アメリカで行われた「GLシリーズ」のオーナーズイベント。
こうしたイベントで得られた「使われ方」「楽しみ方」のデータもデザインに活かされる。

