デザイナーズ・トーク-Honda製品のデザインに込められたこだわり

CR-Z

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新しい時代のコンパクトスポーツをつくりたい(株)本田技術研究所 四輪R&Dセンター 所 洋介
オーナーが輝いて見えるデザインを

クルマは、ただの「持ち物」ではなく、その人のものごとに対する「想い」を表すようなものだと思います。たとえば、家族と過ごす時間を大切にするとか、趣味を思いっきり楽しんでいるとか、環境に対する配慮を忘れないとか。

いろいろなクルマがありますが、持つ人の様々な「想い」が魅力的に見えるデザインこそが、本当に魅力的なエクステリアデザインとなるのではないでしょうか。

私たちは、常に「クルマを手にする人が魅力的に見えるデザイン」を意識していて、表面的な見え方だけで造形をしているわけではありません。乗る人の気持ちを考えてフォルム全体をイメージし、細部に至るまで造り込んでいます。形には「なぜそうなるか」という理由があるのです。だから、クルマを運転する人が輝いて見えるシーンに出会うと、嬉しくなります。

Honda独創の軽量・コンパクトなハイブリッドシステムにより、優れた燃費性能を実現しながらも、気持ちのいい加速やキビキビとしたハンドリングを持ち、日々のちょっとした移動でさえもわくわくするような時間に変えていくことができるクルマとして開発が進められたCR-Z。

このクルマのデザインを行うにあたっては、「わくわくするようなエモーショナル感」と、「時代を先駆ける先進性」を表現したいと考え、乗る人の生活をポジティブにできるようなパワーを秘めた、躍動感あるデザインにこだわろうと思いました。

魅力的なコンパクトカーのデザインへのヒント

開発において日本で骨格をデザインした後、実際にクレイモデルをドイツに持ち込んでブラッシュアップを行いました。そこでは老若男女誰しもが、ハイウェイから街角までコンパクトなクルマをスポーティに、楽しそうに走らせているように見えたのが印象的でした。そこで、CR-ZもHonda独自のアプローチによって、構えることなく乗れるコンパクトなサイズの中に、乗る人の姿が魅力的に見え、思わず目を奪われるようなデザインを実現させようと考えました。

ヨーロッパでは、アベレージスピードが速いことや、日本と空気や光、空気感が違うことなどによって造形の見え方が違います。自分たちがいいと思っていた面の表情も、環境を変えるとイメージと違ったりするため、モデラーと試行錯誤を繰り返し、弾丸のように突き進む、先進的でかたまり感のあるフォルムや、思わず触れたくなるような官能的な表情を追求。

そして、大きなクルマにはない、凝縮された躍動感や美しさといったものをつくりだしていきました。

走る姿を魅力的に見せるための、Honda独自のアプローチ

まずこだわったのは、かたまり感あるフォルムのスタート地点となるボンネットの低さです。ここを守りきらなければ、クルマ自体のシルエットが完成しませんし、全高が高くなることで着座位置が上がってしまえば、せっかくのスポーティなドライビング感覚をスポイルしてしまうことにも繋がります。ですから、狙いとするポイントを定め、それを実現することをめざして造形を決めていきました。

内側に納められるエンジンとの空間をきちんと確保し、万が一の衝突事故時における歩行者保護性能を満足させながらも、「狙った低さ」を追求するということは、かなりハードルの高いものでしたが、設計の担当者とともに何度も図面を見直しながら、目標を実現させていきました。

LEDを数多く用いた、先進的なヘッドライトとリアコンビネーションランプ

その低く構えて走る姿に躍動感を与えるため、タイヤを包み込む前後のフェンダーは、かたまりから大きく、力強く盛り上がってきたかのような造形としました。フェンダーからなめらかにつながるボディは、豊かな陰影をたたえた面を丹念につくりこむことでスポーツカーらしい「情感」を表現。その上で、シャープなキャラクターラインをその中に貫通させ、表情をぐっと引き締めました。経験豊かな大人のドライバーの方も満足していただける、品のある色気を漂わせるスタイルができあがったと思います。

また、これら心に訴えかけるスタイリングと、運転のしやすさや優れた燃費性能などを両立させることもHondaらしいデザインとして意識したところです。たとえば今回、フロントピラーを大きく後方に引くことでサイドビューにしっかりとした存在感を持ったボンネットをつくりだしていますが、これは同時にドライバーの視界を大幅に広げるということにも通じていますし、そのフロントピラー自体にも新たな構造を用いることで、ウインドウとの段差をなくし、フロントからサイドへの流れるような一体感を実現。ウインドウとピラーの間に余計な段差がないので、空気抵抗を軽減して燃費性能の向上にも効果を発揮します。このクルマには、随所に機能にこだわった造形が存在します。「形に理由がある」というのは、そのようなことなのです。

走ることの楽しさ、それはHondaの原点

CR-Zは「走ること」という、クルマの根源的な魅力を楽しんでいただくために生まれてきました。コアとなるのはHondaの原点とも言える想い。人は生活を送る上でさまざまな移動を行いますが、それをもっと楽しくしたいということです。もちろん、別に理由なんかなくても「走ることが楽しいから走る」のだっていいと思います。新しい時代のハイブリッドコンパクトスポーツで、新しい感覚を持ったデザインと走りをぜひ感じてもらいたいと願っています。

一人でも、友達同士でも、恋人同士でも夫婦でも、ぜひいろいろなところに出かけていって、このCR-Zを楽しんでみてください。その姿がかっこよく見えるということを、私は自信を持ってお伝えしたいと思います。