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デザイナーズ・トーク-Honda製品のデザインに込められたこだわり

CB1100

美しく形作られた「機械」の集合体。バイク本来の造形 「気持ちがいい」と思える走りや、理屈でなく「美しい」と思える造形。 デザイナー自身も言葉にできない「バイク乗りの心の中にある、あの気持ち」をかたちにすることは、より速く、より快適にというパフォーマンスの追求だけでは達成しえなかった。 機能部品を美しくかたちづくり、その集合体として端正なたたずまいにあらわす。そんな「モーターサイクル本来の造形」に込めた想いと、完成までに存在した数々のエピソードを語る。 本田技術研究所 二輪 R&Dセンター 小濱 光可

Hondaがバイクをつくるようになって、60年以上が過ぎました。いま振り返ってみると、その歩みはパフォーマンスを追い求めることと、常にイコールだったと言うこともできるでしょう。

より速く、より快適に走ることができるよう、さまざまなチャレンジがなされてきました。

バイクのデザインが目指してきたもの

私たちの仕事であるデザインも、その進化と無関係ではありません。
エンジンはより高いパフォーマンスを追い求めていく中で、空冷から水冷へと進化しました。必然的にそれまでエンジンを冷やすために必要だった冷却フィンは「不要なもの」として姿を消しました。エンジンのパフォーマンス向上とともにより高度な操安性能が求められ、より軽快なコーナリングのために、姿勢は前屈みのスタイルへと変化しました。空力性能を高めるためにフェアリングやカウルも必要になります。

こうして、バイクのデザインは、パフォーマンスの向上と共にどんどん洗練され、スタイリッシュなものに変化していったのです。
Hondaはパフォーマンスにおいても、スタイリングにおいても、常に新たな時代にチャレンジしてきたと自負しています。NR750やCBR900RR、RC211V……イノベーティブなモデルをたくさん世に送り出してきたつもりです。

1970年式CB750 FOURの空冷エンジン。表面積を広げて空気と触れる面積を増やすためのフィンが、エンジンの全体に刻まれている。

欧州で人気の高いパフォーマンスネイキッド、2008年式CB1000Rのエンジン。
冷却水によってエンジンを冷やす水冷エンジンなので、表面には冷却フィンが存在しない。

1992年のNR750。「何万台ものバイクが駐まっている駐車場の中から一瞬で見つけ出せる存在感」をめざした、まったく新しいスタイリングを持った一台である。

大排気量のエンジンを搭載しながら、極限までコンパクトなデザインとし、スーパースポーツに求められる圧倒的性能を実現したCBR900RR。量産車として非常に難しい処理にトライしている。

MotoGPレーサーの「RC211V」。それまでのレーシングマシンのスタイリングの概念を覆すほどのコンパクトなカウルやフェアリングが特徴。

空冷じゃなきゃ満たされないものがある

「確かに鋭い加速や、モダンでスピード感あるスタイリングは魅力的。でも、バイクの進化の道筋って、それだけではないはず」
そんな想いを最初に抱いたのは、私がヨーロッパ駐在を終えて日本に戻ってきた頃でした。その頃、鉛筆で走り描きしたのがこの絵です。

──タイヤ。エンジン。フレーム。タンク。シート。バイクを構成するために必要な要素を美しく形作り、それらを組み合わせる。
シンプルかつ合理的なダブルクレードルフレームが、しっかりと包み込むように抱えるのは、かつてCB750 FourやCB400 Fourなどを世の中に送り出してきた「4気筒のパイオニア」たるHondaの作る「空冷・インラインフォア」──。
コンセプトは「美」「匠」「楽」。つまり、美しく、手作りのこだわりがあり、構えず気楽に乗れる……ということです。

「なぜ今さら性能の劣る空冷のエンジンを新たに作る必要があるのか。きちんと納得できる説明をしてくれ」開発を始めた頃は、そんな声もありました。
気持ちは、まあ、わかります。これまで、さらなるパフォーマンスの追求をめざしてきたHondaにとっては、まるで時代を逆行するかのように感じられたかもしれません。しかし、どれだけ「なぜ」と問われても、こう答えるしかありません。

「理由なんてない。それに、空冷が好きなお客さんもいっぱいいる」

「エンジンが冷えていくときの『キン、キン、キン』という音が好き!」とか、「エンジンの中に必要なのは、水じゃなくて油でしょ?」とか、「エンジンに刻まれた冷却フィンを眺めてるだけで、ナンだかイイんだよね」とか……そういう何気ない感覚──ハイパフォーマンスなバイクでは味わえない感覚が満たされることが、無くなってしまう。

そんな未来は、いちバイク乗りとして、そしてバイク好きとして。あまりに寂しいことだと思います。同じように考えているのは私だけではないですよね?

このスケッチをもとにして「理屈抜きに乗りたくなるバイク」を最初にかたちにしたのが、1999年の東京モーターショーに出展したコンセプトモデル「CB Four」です。
おかげさまで、沢山の皆様からご好評をいただきました。そんな皆様の思いをより鮮明な形にし、2007年に再度コンセプトモデル「CB1100F」を出展。そしてついに、「CB1100」として日の目を見ることができたのです。

ヨーロッパ駐在から戻った小濱が描いたスケッチ。これを元にして1999年の東京モーターショー出展車両の「CB Four」が生まれた。

1999年にHondaがモーターショーに出展した「CB Four」。
直4CB誕生30周年を飾る「独自のエモーショナルな味わいと機能美を徹底的に追求した大人のネイキッドモデル」としてつくられた。

2007年の東京モーターショーに出展した「CB1100F」。1999年の「CB Four」に続き、「空冷4気筒を搭載したCB」にこだわってデザインされた。前後タイヤは17インチで、「CB1100」に比べてかなりスポーティ。

「スタイリング」ではなく「デザイン」をする

この「CB1100」のデザインを行うとき、常にチームに話していました。「『スタイリング』ではなく『デザイン』をしようよ」と。
この二つはとかく混同されがちですが、このふたつの言葉は本来まったく異なるものです。「スタイリング」は、「本来のあるべき姿」に、何か他のモチーフを取り入れるなどして「装飾」することだと思っています。 それに対し、「デザイン」には「設計」の要素が多分に含まれており、そこにはバイクを形作る上での「原点」があると考えています。

バイクは、クルマのようにボディに覆われていませんので、「エクステリア」「インテリア」が明確には分かれていません。むき出しの機能部品がそのまま外装になります。だから、「設計」としての視点も持ちながら、ひとつひとつの機能部品を美しく形作っていかなければいけません。金属やプラスチック、レザーやゴムなど、様々な素材を駆使し、機能を兼ね備えた美しいパーツとしてどのように形作るか。これこそ「デザイン」であり、デザイナーの腕の見せ所であるわけです。

バイクを構成するすべてのパーツを機能的、かつ「美しい」と感じられる形状にかたちづくっていく。ステップホルダーも、ディテールに至るまで、デザイナーの徹底的なこだわりが貫かれている。

かつてのCBのシンボルでもあった「丸と四角を組み合わせた形状」を現代によみがえらせたCB1100のテールランプ。メッキ部分への写り込みの美しさも考慮して造形をつくりこんである。

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