Me and Honda, Career Hondaの人=原動力を伝える

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得手に帆を揚げて。多様なバックグラウンドを強みにする二輪のデザイナーとモデラー

Hondaの二輪デザインでは、デザイナーとモデラーが開発の一端を担っています。それぞれの役割から、お客様を考え尽くして提案されたコンセプトに合った商品づくりに尽力しています。モデラーからデザイナーに異例の転向を果たした田治と、若手モデラーとして歩みはじめた澤村が、それぞれの仕事について語ります。

田治 健太郎Kentaro Taji

本田技術研究所 デザインセンターモーターサイクルデザイン開発室 プロダクトデザインスタジオ

2014年新卒入社し、モデラーとして経験を積む。2020年デザイナーに転向し、主に大型二輪のデザインを担当。

澤村 崇太郎Sotaro Sawamura

本田技術研究所 デザインセンターモーターサイクルデザイン開発室 モデリングスタジオ

大学では彫刻を専門とし、2020年に新卒入社し、モデラーとしてフィジカルとデジタルの両面からスキルを磨く。

商品コンセプトを軸にチームで議論、お客様に驚きと感動を与えるデザインを創出

機能とデザインの両面からお客様が満足できるような二輪車開発に取り組んでいるHonda。そんなHonda二輪デザインの大きな役割を担っているのが、デザイナーとモデラーです。

開発責任者であるLPL(Large Project Leader)を中心に、デザイナーもモデラーも加わりながら商品コンセプトを練り上げます。それをもとにデザイナーは、スタイリングコンセプトからスタートし、スタイリングスケッチからエンジンやヘッドライトなどの機能部品のスケッチまで携わります。そしてモデラーは、商品としての成立性や、さらなる魅力を加えながら立体に落とし込んでいきます。

田治 「一概にデザイナーがスケッチを渡してモデラーが作業をするのではなく、それぞれがどのようなデザインが相応しいかという解釈をしながら、最終形状に向けてデザインを進めていきます。デザイナーとモデラーを含めたデザインチームは、常に強く連携しながら業務を推進していきます。

昨今ではデザイナーとモデラーの境界線がなくなってきており、職種に関わらずさまざまなツールを使ってデザイン検討をしていきます」

デザイナーとモデラー。必要な基礎技術はそれぞれ異なると両方の立場を経験した田治は考えています。

田治 「モデラーは、インダストリアルクレイ*と呼ばれる粘土を使って形を盛ったり削ったりして作っていくので、立体造形のスキルが必要です。また、コンセプトを理解したう上でデザイナーの描いたスケッチを読み取り魅力的な立体として成立させるスキルも求められます。

一方、デザイナーはコンセプトを表現するために、スケッチという手法を使ってLPLやチームメンバー、また現地の営業などを説得する力が必要です。その表現力として画力やプレゼンテーション能力が求められます」

*プロダクト製品の立体造型デザインに用いられるモデリング用化学系合成粘土

モデラーからデザイナーへ。強い意志を示しレアな職種転換を実現

デザイナーとして主に大型系バイクを担当している田治は、大学で造形デザインを学んでいました。父が好んで乗っていた影響で、自身もHondaのバイクに乗っており、もともとHondaに興味を持っていたと振り返ります。

田治 「大学生の頃に、Hondaのモデラーが講師をしてくれる機会があり、そのときの担当者の人間性に惹かれました。仕事はもちろんですが、プライベートに関しても全力を注いでいる姿から、遊びの部分も大切にする想いが自分と合いそうな感覚を持ち、Hondaで働いてみたいと思うようになったんです。

ただ、学生時代の私のスケッチはHondaのレベルには到底達していないかったことから、入社は諦めていました」

田治は他メーカーの就職試験を受けていましたが、結果的に狭き門をくぐり抜けてHondaに就職することになります。

田治 「採用選考の二次募集に挑戦する機会に恵まれ、そこで合格して、無事に入社することができました」

2014年に入社してから2020年まで、田治はモデラーとして業務にあたっていました。その後、自身の意志でデザイナーに転向することになります。モデラーからデザイナーへの転向は、Hondaでも非常に稀なケースでした。

田治 「熊本にあるデザイン部門に転勤することになった際に、デザイナーに転向したいと当時の室長に掛け合ったところ、『まずはクレイモデラーとしてしっかり役割を担えること、その上で同期のデザイナーと同レベルまでスキルを引き上げてからだね』と言われました。

そこから3年ほどモデラー業務とは別に、業務の合間を見つけてスケッチスキルを伸ばしたり、休日は美術館やディーラーに出向いたりするなど、感性を磨く努力をしたんです。

熊本から埼玉にあるデザインセンターに戻ったタイミングでもう一度転向の意志を示したところ、社内の試験を受けられることになり、それを達成して、晴れてデザイナーになることができました」

田治がモデラーからデザイナーに転向したいと思ったのは、開発の源流に立ちたかったからです。

田治 「通常クレイモデラーの立場では、コンセプトメイクやスケッチなどの商品づくりの始まりから直接的に携わる機会が少ないです。数年間モデラー業務経験を積むなかで、もっと商品が生まれる源流にいたい、という思いが強くなりました」

田治はモデラー時代、熱い想いを持ったLPLとプロジェクトに取り組むなかで、Hondaらしいモノづくりを強く感じました。

田治 「X-ADVという、現在欧州のスクーター市場で最も人気のある機種を担当した際、LPLとともに自分たちが魅力的だと思うデザインを実現できたことは良い経験になりました。

営業担当者から、『収益率の観点からこの予算で作ってほしい』というようなオーダーがきたのですが、当初の予算だと自分たちがベストであると思うデザインができないという問題に直面しました。

しかし、LPLとチームは、商品コンセプトと顧客視点を踏まえたうえで、自分たちが魅力的だと思うデザインを実現させようと考えたのです。さまざまな工夫を凝らして機種全体のコストを見直した結果、デザイン側の望む仕様を入れ込むことに成功しました。当初の意見は営業側と意見の相違がありながらも、なんとかありたい姿を実現できたときは、非常に感動し、LPLと固く握手を交わしました」

商品コンセプトは、お客様が何を求めているかが表れる部分であり、開発において最も大事なポイントです。そのコンセプトから求められる表現を死守しながらも、優先すべき点を残しつつ許容できる範囲でバランスを取る。デザインと費用を両立させてモノづくりをした経験は、現在も田治の仕事に活きています。

彫刻専攻からモデラーへ。創造力を発揮できる環境で強みを活かす

2020年にモデラーとしてHondaに入社した澤村は、学生時代は彫刻を専攻していました。周りにはアーティストを目指す学生が多く、就職は一般的な道ではありませんでした。

そんななかで、彫刻を専攻していた先輩がHondaのモデラーとして働いていると知り、話を聞いてインターンシップを受け、入社しました。

澤村 「バイクに乗っていた自身のこれまでの経験に加えて、インターンシップでモデラーと話をしたのも契機になりました。一台のバイクに最後まで一貫して携われるという話や、道具から自分で作っていく職人気質な話を聞いておもしろそうだと率直に思ったことが、Hondaに挑戦しようと決めたきっかけです。また、モデラーと彫刻家で仕事との向き合い方についても似た雰囲気を感じました。

ただ自ら生み出して自己完結できてしまう彫刻よりも、自分が作ったものがお客様に届き感動してもらえるモデラーという仕事の方が、やりがいがあり自分に向いていると思ったんです」

インターンシップでは、5日間かけて用意された課題に取り組みました。

澤村 「当時の課題は、実際の開発で使われていた発売前の1/1のモデルが用意されていて、そのガソリンタンク部分を制作するというものでした。開発さながらの環境の中、ワイガヤをしながら実際の製品に負けないつもりで制作しました。

タンク以外が既に存在しているので制作にあたっての制約はあるのですが、かえってその制約が自分には心地よかったんです。というのも、彫刻は何もないところから新しいものを生み出すのに対して、他の構造や部品との関係性を踏まえて形を作っていくモデラーの方が、より誠実な仕事ができると感じました」

インターンシップを経てHondaのモデラーになった澤村は、立体造形や彫刻などモノづくりのバックグラウンドを持つ人が集まる環境で仕事に励んでいます。

入社後、澤村の強みを活かせた仕事として、グリーティングカードの制作が挙げられます。

これは新人研修の一環で、デザイナーとモデラーがクリスマスに向けてお客様に配信するクリスマスカードを作成するプロジェクトで、それぞれの提案をもとにコンペティションを行い、最終的には社長に対してプレゼンをすることになったのです。

澤村 「周りのデザイナーが絵を描いてアウトプットするなかで、彫刻をやってきたモデラーとしての自分の強みはやはり立体を作ることだと考え、会社の作業室でHonda製品をかたどったおもちゃを木材から削り出し、写真におさめることにしました。学生時代にずっとやってきた彫刻が活かせる機会だったので、力を発揮することができたと思います」

立体の強みを活かしたカードは前例があまりなく、最終的に副社長用のグリーティングカードに採用されました。

「作ったおもちゃは現在、青山オフィスに飾ってあるようです。入社当初から自分の強みや創造力を発揮できる環境があるのは、Hondaで働く魅力のひとつだと思います」

▶グリーティングプロジェクト詳細はこちら

仕事の垣根がなくなるなかで、幅広いスキルを身につけ良いモノを作る

2020年に入社したばかりの澤村は、これから自身が関わったモノが製品になっていくのを楽しみにしつつ、現在は先輩の背中を見ながら仕事を教わっています。

澤村 「モデリングの仕事の中身として、クレイモデリング、データモデリング*、ハードモデル*などがありますが、昨今はクレイモデリングとデータモデリングの得意とする部分を掛け合わせた推進が主流になってきています。

もともとデータ担当者、クレイ担当者と分かれていましたが、最近はあまり垣根がなくなってきているんですよね。やりがいがあって幅広いスキルを身につけられる反面、専門性を突き詰めていく部分と、どうバランスを取っていくか苦労しています」

*1 設計の前段階であるデザイン領域において、デザイナーのイメージする車体や部品形状の3次元データを作成。デザイナーと設計者の橋渡しを行う
*2 クレイモデリングに対して、樹脂や鋼板による固いモデリング

田治もまた、時代とともに仕事の垣根がなくなってきていると感じています。

田治 「 “この人がこの仕事だけやればいい”というスタイルは、二輪のデザインにはあまりなくなってきていますね」

モデラーからデザイナーに転向した田治と、モデラーの道を歩みはじめたばかりの澤村。ふたりはそれぞれ、Hondaが新規事業として打ち出している分野に興味を持っています。

田治 「大型モータサイクルのデザイナーを続けていきたいと思っていますが、EV事業などにも興味があります。これからの時代を先駆けるような商品とサービスを、Honda発で出したいと思いますね」

澤村 「まだまだ勉強中の身ではありますが、今後のモビリティとして世界的に急拡大するEVのバイクなど、日本ではまだまだ市場開拓中のバイクのデザインに携わり、世界中のお客様に感動を与える仕事をしたいです。PL(プロジェクトリーダー)として、データも含めてモデラーの仕事に携わっていければと思います」

さまざまなバックグラウンドを持つ人が集まる二輪デザインでは、どのような人材が求められるのか。田治と澤村は、それぞれ実体験をもとにした意見を持っています。

田治 「Hondaの二輪デザインは、周りに流されず自分を持っている人がいいと思います。強い意志を持ってこうなりたい、こうしたいと想えば必ず叶う会社だと感じています。私がデザイナーになれたのもそんな想いがあったからだと思います。

“自分がどのようなことを表現したいか”という意志を強く持っている人が多く集まれば、お客様が感動してくれるデザインが作れるのではないでしょうか。そして、お客様のライフスタイルをより楽しくできるような商品が生み出されると思います」

澤村 「何かひとつ強みがある人が多い印象を受けます。たとえば自分であれば仏像や木彫作品を制作していたというように、これまでの経験やバックグラウンドがおもしろい人が多くいます。

バイクに詳しい人も多いですが、そうではなくても自分だけの得意領域がある人はHondaに向いていると感じますね」

モデラーからデザイナーに転向した田治と、彫刻専攻からモデラーとしてのキャリアを歩みはじめた澤村。

それぞれ異なる立場から二輪デザインに携わり、お客様に自分の想いを込めた製品が届くその日を心待ちにしています。

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