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Me and Honda, Career Hondaの人=原動力を伝える Me and Honda, Career Hondaの人=原動力を伝える

Honda社長が学生に語る──意志をもって動き出そうとしている、変革の主体者たちへ

2021年11月、本田技研工業 取締役 代表執行役社長の三部 敏宏が母校・広島大学で「大学キャンパス出張授業」*として講演を行いました。未来の変革の主体者である学生たちに向けHondaの歴史やグローバル企業としての責任、現在の技術、今後のビジョンを語った三部。後輩にエールを送り、質疑応答も多数交わされました。今回は講演内容と質疑応答の一部をレポートします。

*一般社団法人 日本自動車工業会が、各地の大学と連携し、会員メーカー各社の経営トップをはじめとした多彩な講師陣が若い世代の方々にクルマ・バイク、ものづくりの魅力を直接語りかけるイベント

三部 敏宏Toshihiro Mibe

本田技研工業 取締役 代表執行役社長

1987年に本田技研工業へ入社し、自動車エンジンをはじめとするさまざまな研究開発に携わり、その後、エンジン関連部門のマネジメントを担当。2019年4月、本田技術研究所社長に就任。本田技研工業専務取締役を経て、2021年4月より本田技研工業代表取締役社長。(6月より現職)

No.1スタートは、つまらない。独自性でトップを追いかけるHondaへ

日本自動車工業会では、2013年から「大学キャンパス出張授業」を行っています。自動車メーカー各社のトップが大学キャンパスで講演をするこの取り組みに、Hondaは当初から携わってきました。三部が本田技研工業の社長に就任して初となる2021年の出張授業は、三部の母校である広島大学で開催されました。

幼少期より父親の仕事の関係で日本各地を転々としていた三部は、中学時代の途中から広島に住み始めました。高校を卒業後、広島大学に入学して機械系を専攻。卒業後、大学院に進学し移動現象工学を学びました。卒業後にHondaに入社することになります。

三部 「最初に配属されたのは、本田技術研究所でした。当時は大気汚染や光化学スモッグなどのトピックが話題になっており、入社以来20年ほどは大気を綺麗にするような排ガスの低減技術に関する仕事をしていました。その後エンジンの研究を突き詰め、やり切ったという達成感を持った後に、マネジメントの方向に進み、さまざまな経験を経て2021年4月から社長を務めることになりました」

三部が広島大学を卒業しHondaに入社した理由は、シンプルに言うとNo.1からはじめるのはつまらないと思っていたからです。

三部 「1番手の会社だと、いくら努力してもその上がありません。2番目か3番目の会社なら、追われるだけの立場ではなく追いかけることができます。当時のHondaはそんな気持ちに応えるいい会社だと考えていました。

また、大学在学中にHondaの車を買いましたが、1台の車にたくさんの新しいアイデアが詰まっていたのです。こんな車を世に出す会社はきっとおもしろいに違いないと思い、Hondaへの入社を決めました。

実際に入社してみると、“当時のHondaはこれぞ中小企業”というようなまだまだ発展途上の状態でした。まだ会社が成長期ということもあり、明確なルールが決まっておらず、自分たちでルールから作りつつ前に進んでいたという印象があります。大変でしたが、今思えばそれが非常におもしろかったですね」

100年に一度の変革期は、今まで変えられなかったことを変えるチャンス

現在のHondaは、社会や産業が急速に変革に向かっている状況のさなかにあります。

三部 「モビリティだけでなく、エネルギーやコミュニケーションの領域でも新しい技術が進んでいるため、間違いなく今後、社会構造が大きく変わっていきます。

また、アフターコロナにおいては人々の考え方も変わってきています。倫理的行動の高まり、地球環境問題の解決、デジタル化が進むなかでの人間らしさへの回帰といったことがトレンドとなり、さまざまな社会課題の解決に向かう潮流が加速しているように思いますね」

そのなかでも自動車産業は、100年に一度の変革期を迎えていると言われているのです。

三部 「自動車などのハードを売ってビジネスをするというよりは、サービスを提供することが多くなり、モノづくりもかなり変わっていくと考えられます。移動でいろいろなモノをつなぐことでひとつのツールで目的地まで行けるようにするMaaS*などの概念が登場している今、我々の会社もそれに合わせて相当なスピード感で変わっていかなければなりません。

自分で運転する楽しさを味わいたいという方に向けては二輪や四輪の開発には今後も取り組んでいきますが、スマートシティ化の加速に合わせ、従来的な移動手段の提供よりも新しい価値を生み出していくことが求められます」

*Mobility as a Serviceの略。自動運転やAI、オープンデータ等を掛け合わせ、従来型の交通・移動手段にシェアリングサービスも統合して次世代の交通を生み出す動き

変革期は平時以上に先が見えないため、経営の難しさに直面するのは至極当然のこと。三部は変革期の今、Hondaの経営を担うことにまたとないおもしろさや可能性を感じています。

三部 「変革期は、今まで変えられなかったことを変えるチャンスです。新しいことをやる絶好の機会が到来したと、私はポジティブにとらえています。経営的には大変といえば大変なのですが、私としてはワクワクしているところもあります。今後どのように社会を変えていこうか、といろいろ考えることができるのですから」

2021年4月に社長に就任し、三部は改めてHondaの存在意義や目指すべき方向性を打ち出しました。

三部 「Hondaの存在意義は、“意志をもって動き出そうとしている人を支えるパワーとなること”です。何かを変えようとしている人に、パワーを与えるようなものを考えていきたいと思っています。

また、Hondaが目指しているのは、“モビリティを通じ、社会変革の原動力となる”ことです。会社全体でも考え方を一本化するため、日々方向性を共有しながら社会を変えられるような変革を打ち出そうと取り組みを進めています」

Hondaはハードウェアを作ることが得意な会社であるものの、それだけでは新しい価値が生まれません。今後はモビリティやエネルギーを進化させ、新しい価値を作っていく必要があります。

三部 「昔は車を売ったらそれで終わりでしたが、これからはOTA*というソフトウェアを通信で書き換え、購入後数年経っても車には最新のソフトウェアがアップデートされ、顧客体験を向上させることで、価値を落とさないようにできます。ハードウェアだけではなく、ソフトウェアと組み合わせながら今までにない価値を生み出そうとしているのです。

また、移動を支えるエネルギーの進化については、モバイルパワーパック*の活用拡大と車載大容量バッテリーの活用、そしてFC(燃料電池)システムの応用と展開の三層構造で考え方を整理しながら順次進めているところです」

*Over the Air の略で、データの送受信を無線通信で行うための技術を指す
*再生可能エネルギーを利用して発電した電気を蓄え、小型電動モビリティの動力や、家庭での電源として活用する、着脱可能な可搬式バッテリー

持っている技術を整理し、ドメインを変えることで新しい価値を生み出す

さらなる挑戦の舞台として、HondaはeVTOL(電動垂直離着陸機)やアバターロボット、宇宙領域への挑戦などを考えています。

三部 「たとえばeVTOLは一見するとヘリコプターに近いモビリティだと思われがちですが、安全性は段違いです。静粛性にも優れ、航続距離も長くなります。空飛ぶクルマという夢物語ではなく、かなり現実的なイメージを持って開発を進めているところです。

eVTOLに限らず、新しい時代に対してどういう価値を生み出せるのかを考えるため、Hondaが持っている技術を整理し直しています。Hondaがこれまで培ってきた技術ノウハウを活かし、地上のクルマとバイクというドメインを変えてみることで、eVTOLや燃料電池技術をベースにしたロケットなど、新しい価値を生み出せるのです」

従来のエンジン開発に関わる分野を学ぶ学生や技術者にとって、従来のエンジンを載せた乗り物が今後どうなっていくかは気になるところ。当日は、そういった分野を学んでいる学生からも、エンジンの未来についての質問が出ました。三部はHondaとして2040年までに電気自動車や燃料電池車の販売比率を100%にすると発信していますが、だからといって従来のエンジン開発に関係する学問や技術がなくなることはないと考えていると語りました。

三部 「カーボンニュートラルを達成するための手段として、我々は電気自動車や燃料電池車などが現実的だと考えています。

私自身、技術者人生でもエンジン開発にずっと携わってきたので本当は続けたいのですが、感情的な部分を除いて考えた結果、やはりカーボンニュートラルが確実に達成できる技術にこれからは集中するべきで、従来のエンジンは今後なくなると考えています。

エンジンは新しい技術や環境に適合したパワーユニットに取って代わるといいなと思いますが、決してその分野に携わる方の技術を否定するわけではありません。技術はドメインを変えると、また新しい価値を生む可能性があります。自身が持っている技術をほかで使うともっと素晴らしい価値を生むのではないか、と発想を転換していく必要があるのだと思います」

主流が従来のガソリン車から電気自動車に変わることで、車に必要な部品数が少なくなり、サプライヤーの仕事が失われて日本の自動車産業が縮小してしまうのではないか、という質問も学生から飛び出しました。しかし、Hondaはサプライヤーとともに新しい価値を生み出す方法を考え続けています。

三部 「今の技術がなくなると同時に新しい技術が生まれるので、サプライヤーの皆さんも今のまま同じものを作っていればいいということはなく、新しいパワーユニットの部品を作っていくことになります。

たとえば燃料電池も、分解してどんな部品で構成されているのかをサプライヤーさんに見てもらっています。そのなかで“うちの技術があればこの部品を作れる”と言ってもらうことも多く、一歩一歩新しい技術への移行を進めているところです。

世の中の変化に合わせて、我々もサプライヤーさんも変わっていかなければなりません。決して楽な道ではありませんが、仕事がなくなるということを意味しません。世の中がある限り、いろいろな技術が生まれ、そこに対して新たな仕事が生まれます。決して悲観的なことではなく、むしろ新しい領域を膨らませることで仕事の可能性は今より格段に広がるかもしれません」

今の技術だけに固執せず新しい価値を膨らませていくことは、日本全体の成長にもつながると三部は考えています。

三部 「新しい取り組みを地道に育んでいきながら、産業全体を変革していくことが重要です。サプライヤーさんとの連携を通じて、必ずまた新しい領域で新しいビジネスが生まれます。

日本のモノづくりは、そんなに簡単に滅びるものではありません。今でも世界と比べるとトップレベルの技術を持っているので、新しい時代でも必ずや生き残れると確信しています」

飛躍的に高い目標を立て時間軸を意識し、ポジティブに前進することが大切

今後は社会構造の変化により、自分自身の成功体験が通じない場面も増えていくと考えられます。そのなかで、変革の主体者たちはどうすればいいのか。三部は、まず飛躍的に高い目標を立てることが大切だと考えています。

三部 「自分の可能性を矮小化せず、飛躍的に高い目標を立てましょう。目標が低いと、社会変革は起きません。自身の持っている技術を足し算するだけの目標値を作ることなく、ぜひそこにプラスアルファして、ここまでいけばすごい価値を生み出せるという目標を、未来を担う存在である皆さんには、是非とも立てていただきたいです。

過去に偉業を成し遂げた方々も、最初の一歩は非常に小さいものでした。そこから大きな成果を生み出しているので、皆さんにも高い目標を作って最初の一歩を早く踏み出していただきたいと思います」

三部自身、Hondaに入社した当初から高い目標を設定して取り組みを進めてきました。

三部 「エンジンの開発が専門だったので、たとえば世界一の燃費の良さを実現できるエンジンを作るといった目標を立てていました。これは自分で立てたわけではなく、目標を立てて上司に報告すると、目標値を鉛筆で修正して、その目標値を上げられるのです。

“このくらいの目標で取り組んでも、他社が次のモデルチェンジで超えていくだろう。他社を5年分くらい引き離せば、次のモデルチェンジがあっても超えられることはない。もともとの目標値がこんなに低くてそれができるのか”と指導されていました」

一見すると無理だと思われる目標を立てて、絶望からスタートする。Hondaの開発現場ではそれが常でしたが、ひとりで目標達成の方法を考えても答えは出ません。そこで、複数人で議論することがHondaの文化となっていきました。

三部 「複数人で議論すると、こんなふうにすれば達成できるんじゃないかというアイデアが出ます。これを、Hondaでは“ワイガヤ”と呼んでいます。ワイワイガヤガヤやっているうちに新しい発想が生まれ、それが徐々に形になり最終的には目標に到達できるようになるのです。

人間は弱いので、自分のなかで厳しく高い目標を決めるのは難しい部分もありますが、周りにいる人たちと話し合いながらフィードバックを聞くことは非常に大事です。そのなかで、これができれば社会が変わる、これができれば世界初とみんなから言われるようなものであれば、その目標は間違いなく素晴らしいものだと思います」

高い目標の設定に加えて大切なことは、時間の感覚です。技術やアイデアには必ず時間軸があり、時間軸に置くと価値がよく見える。三部はそれを、広島大学で学んでいるときの担当教官から教わりました。

三部 「私の担当教官は戦時中に“これができれば日本軍は勝てる”と信じて開発に没頭し、終戦したことに4カ月も気づかなかったそうです。それだけ没頭しているのはすごいことではありますが、どのようなビジネスをやるうえでも、良いアイデアや技術が必要なときにそこになければ意味がありません。計画や構想を頭の中に作り、自分はいつまでにそれをやるんだと常に明確にしてもらえると、成果が何倍にもなると思います」

変化のなかには、より大きな価値やチャンスがある。企業も変わっていくけれど、最後は一人ひとりが変革の主体者となることで変化が実現していく。だからこそHondaは、一人ひとりの力を借りて成長していきたいと考えています。

三部 「これから変わっていく時代と向き合っていくには、自分の可能性を小さくまとめず飛躍的に高い目標を設定すること、時間の感覚を大事にすること、自分の成長や進歩に重点を置いてそれを楽しみながらポジティブに前に進むこと、といった姿勢が大事だと思っています。

モビリティの世界だけでも可能性は無限に広がっています。Hondaもぜひ皆さんの力をお借りして成長していきたいですね。私も先輩として恥じないように頑張りますので、皆さんも頑張ってください」

三部のエールが届き、変革の主体者たちが今後モビリティの世界に飛び込んでくれることを期待しています。

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