Me and Honda, Career Hondaの人=原動力を伝える Me and Honda, Career Hondaの人=原動力を伝える

目指すは「働きがい」のある会社──働き方の未来をつくる人事の歩み

入社以来一貫して人事や労務の経験を積んできた堀井は、さまざまな壁や新型コロナウイルス感染症の影響などの困難に直面しながらも、従業員が“働きがい”を感じられる職場づくりを目指して取り組んできました。Hondaの人事としてのキャリアのなかで堀井が何を考えどのように歩んできたのか。彼女のリアルな姿に迫ります。

堀井 彩加Ayaka Horii

人事・コーポレートガバナンス本部 労政企画部 労政課

2006年に入社し、本田技術研究所四輪開発センター(現在の本田技研工業株式会社 四輪事業本部ものづくりセンター)の総務課で採用業務や社内広報業務を担当。2012年に本社の人事部へ異動し、新卒採用を担当。2016年からは再び栃木へ転勤し、総務のグループリーダーを務める。2019年より現在の所属。

「働きやすさ」ではなく「働きがい」を感じてもらえる制度を整える

▲幼少期の堀井と家族で乗っていたHondaアコードハッチバック

Hondaの人事・コーポレートガバナンス本部は、法務部・総務部・秘書部・人事部・労政企画部の5つの部に分かれています。堀井は労政企画部の労政課に所属し、国内の人事制度の企画や制度導入にあたっての労働組合との交渉などを担当しています。

堀井 「主に国内の働き方を担当しており、コロナ禍での働き方の指針を定めることも仕事のひとつです。感染防止に配慮した働き方として、在宅勤務への切り替えなどを進めてきました。

新型コロナウイルス感染症が拡大する以前から進めていた取り組みは、不妊治療を行う方やLGBTの方が活用できる制度作りです。不妊治療のための休職・休暇制度を整えたり、病気治療の方向けの休暇制度を策定したりしました。これまで同性パートナーは社内制度において配偶者として取り扱われていなかったのですが、積極的に認めるように取り扱いを変更しました」

従業員の声を聞きながら世の中の変化にもアンテナを張り、従業員の支えとなるものを制度化しようと取り組みを進めている労政課。制度を整備する際「働きやすさ」が重視されがちですが、Hondaのこだわりは少々異なります。

堀井 「どちらかといえば、“働きやすさ”というより“働きがい”を感じてもらえるように制度を整えているんです。単にストレスなく働けることではなく、育児や介護をはじめとしたさまざまな制約があるなかでもそれを乗り越えて成果を出し、周囲の仲間や社会から認められることでこそ感じられる達成感。その点にはかなりこだわっていますね」

大学院まで進学し文学を学んでいた堀井は、当初新聞社に就職しようと考えていました。しかし、論文を書いているときに、自分と向き合う時間が多い物書きという仕事が孤独だと感じ、自分には合っていないのではないかと悩んでいたのです。

そこで、改めて自身がなぜ文学作品が好きなのかを考えた結果、新たな発見がありました。

堀井 「私が思う文学作品の魅力は、想いを形にしたものが世の中に出て、多くの人に喜んでもらえたり時代を超えて受け継がれたりしていくことだと気づきました。それは文学作品にしかできないことではなく、メーカーの製品も同じなのではないか。人への想いと独創的な技術で生み出された製品が、世の中に出て時を経ても愛される。全く同じ公式だと思ったんです」

メーカーのなかでもHondaの入社試験を受けようと思った背景には、家族の思い出がありました。

堀井 「父がHonda好きなんです。当時住んでいた新潟で、前輪駆動のHonda車は雪道でもパワーがあって安定していて頼りになる。『Hondaの技術はすごい』と小さい頃からよく聞いていました。最終的に合格したのは新聞社とHondaだったのですが、自分とは全く異なるカラーの人たちが集まっていて、自分ひとりではできない大きな仕事ができそうだと感じ、Hondaへの就職を決めました」

人事業務を通じて学んだ、周りを巻き込む大切さとHondaの底力

2006年Hondaに入社した堀井は、栃木県にある四輪開発センターの総務課に配属されました。最初に任された仕事は、中途採用業務。当時100名ほどであった中途採用人数を、翌年から約200名に拡大することになりました。堀井は配属されて間もなく、どうすれば目標を達成できるかを考える日々がはじまりました。

堀井 「上司から『200名採用するために何をすべきか自分で考えなさい』と言われました。そこで、自分自身で何をすべきかを考え、全国各地で毎週末のように会社説明会を開くことにしたんです。最終的には目標を達成することができましたが、当時は計画や事前の段取りが不十分で、上司や先輩から叱られてばかりでしたね。

そこから、なぜ叱られるのか、どうすれば周りが協力してくれるかを考えながらアプローチを変えていったんです。目標達成のためには、自分だけでがむしゃらに取り組むのではなく、周りを巻き込んで協力してもらうことが大切だと学びました。当時叱ってくれた上司や先輩には今でも心から感謝しています」

2011年に発生した東日本大震災では、栃木にある研究所は大きな被害を受け、開発ができなくなってしまいました。しかし、そのときに堀井はHondaの底力を実感したのです。

堀井 「特に市販段階に入っている開発部隊は、お客様に直接影響が出てしまうため、開発をストップさせるわけにはいきませんでした。そこで、メンバーそれぞれが各地域にある事業所に散らばって仕事を進めることになりました。私も埼玉県和光市の研究所に間借りするチームに総務として同行しました。

当時はメンバーそれぞれの家も大変な状況だったにもかかわらず、『お客様のために絶対に開発スケジュールを遅らせるわけにはいかない』と必死に仕事をしていました。その姿を見て、仕事内容や立場は違っても社員全員がお客様のために一丸となって底力を発揮しているのがすごいと思いましたね」

その後2012年に本社人事部へ異動し、新卒採用を担当しました。現在も続くHondaの新卒採用メッセージ「どうなるかじゃない、どうするかだ。」というメッセージを掲げ、採用に取り組んでいったのです。

堀井 「採用メッセージを策定する際に、Hondaを人としてとらえることからスタートしました。『Hondaという会社が人格を持ったらどんなことを言うのか』という発想からメッセージを考えていくのは、とてもおもしろかったです。

それまでは、プロのコピーライターに作成をお願いしていましたが、『Hondaを伝えるメッセージは、Hondaで働く自分たちだからこそ考えられる』という想いのもと、チームで検討を重ねました。

作成にあたっては開発・生産・営業の第一線で活躍する従業員から彼らの経験や想いについて話を聞きました。働くフィールドは違っても、“自分たちの手で最後までやり遂げる”という決意と、それぞれの専門性に対する矜持を持って仕事に臨んでいる姿が印象的でした」

このようにHondaで働く人の想いに根差した、Hondaで生み出した言葉だからこそ、堀井は、採用活動のなかでも胸を張って学生に伝えることができたのです。

堀井 「今でも『あのメッセージは印象的だった』と言っていただくことがあります。時代を超えて人の心に残る言葉、まさに文学ですね」

その後2016年には再び栃木にあるパワートレインユニットを製造する製作所の総務に異動となり、グループリーダーを務めました。そして2019年に本社へ戻り、現在に至ります。

仕事はひとりではできず、ひとりでは楽しくない。コロナ禍で得た新たな気づき

Hondaでは2016年から在宅勤務を段階的に拡大し、2019年からは多くの社員が在宅勤務できるように環境を整えてきました。そのためコロナ禍という未曾有の事態においても、社員の安全を確保するための在宅勤務をスムーズに導入することができたのです。ただし、感染の長期化によって新たに考えるべき問題も生まれました。

堀井 「在宅勤務をもっと続けたいという人もいれば、出社しなければ競争力が失われると考える人もいて、多種多様な考え方があります。そのため、働き方の軸をどこに置くかは難しい問題ですね。

私自身は働く場所はどこでもいいと思う一方で、やはり仕事はひとりではできないし、ひとりで仕事をしても楽しくないと考えています。環境が整えばフルリモートで在宅勤務をするという選択肢もありますが、リアルと同じだけの価値があるかと言われれば、まだ足りないと思います。そういう意味では、リアルの価値を取り戻したい気持ちはあります」

堀井がひとりでは仕事が楽しくないと感じるようになった理由のひとつに、コロナ禍でコミュニケーションの方法が変わったことがあります。

堀井 「今まで私は誰かに何かを説明するときは、反論されないように準備をしていました(笑)。しかし、リモートワークになり、オンラインで説明をしたあとに何も意見やコメントがないととても寂しいと感じたんです。それなら、相手に投げかけをして、反論でもいいので反応をもらったほうが楽しいと思うようになりました。

また、ワクチンの職域接種について社内での推進にも携わりました。従業員の皆さんが少しでも安心して生活や仕事ができるようになれば、という想いだけで行動しました。日々状況が変わるので出社する必要があり、関係者と毎日顔を合わせてやりとりをするなかで、対面のスピード感を味わうとともにアドレナリンが出るのがわかりました。人と会話をすることで生まれるエネルギーはすごいなと、そのとき改めて思いましたね」

コロナ禍を経て、働き方だけではなく価値観にも変化が訪れました。堀井はこれまで以上に、仕事はひとりではできないもの、そしてひとつの仕事が誰かの役に立っているものだと考えるようになったのです。

堀井 「ひとりではできない仕事をメンバーと一緒に取り組み、知らない誰かの役に立つ。たとえ携わっているのが自分だと気づかれなくても、従業員の皆さんが会社を信頼し、全力を尽くして働ける環境を整えることが自分たちの役割なんだと思います。

採用担当をしていた頃は自分が前に出て話す機会が多かったので、学生から『堀井さんの話を聞いてHondaで働きたいと思いました』というようにリアクションがダイレクトに伝わってくるため、限られた関係の中で密度の濃い達成感を抱くことができました。しかし、コロナ禍の経験を通じて、これまでよりも自分がつながる人の範囲がすごく広がったことで、ある意味“全従業員とつながる輪の一員として自分がいる”と思えました。従業員がHondaの中で持てる力を最大限発揮できるための取り組みを進めることが、自分の使命だと思って日々邁進しています」

真の意味で多様性を受け入れるため、誰もが共感できるメッセージを発信する

堀井はこれまでHondaで過ごす日々のなかで、スピードと熱意を持って走ることで周りも協力してくれるというHondaらしさを存分に感じています。さらに、働き方を考える際「理論・アイデア・時間」の3つを尊重することを大切にするフィロソフィーも、Hondaらしいと考えています。

堀井 「理論は誰にでも通じるロジックで、アイデアは新しく独創性な考え。どちらを生み出すことも本来時間がかかることですから、限られた時間のなかでそれを最高品質でタイムリーにやりきるというかなり相矛盾したトライアングルなのです。非常に難しいのですが、すべてを成立できる人事制度や職場にしていこうという想いがHondaらしく、働き方を考える際の大きなミッションになっていますね」

時代の変化とともに働き方に対する意見も多様化していき、制度を作る労政企画部の業務はやりがいがある一方、難易度も増しています。堀井は難しさを感じながらも、誰もが共感できるコアメッセージを明確にしていきたいと考えています。

堀井 「価値観が多様になればなるほど、それに応えるために会社の制度が多様化していくと思われがちです。私自身もこれまではそのように対応してきました。育児や介護、LGBT、不妊治療などさまざまな価値観やニーズを持つ人に対応する制度を作ってきたんですよね。

しかし、これからは表層的な多様化だけでなく、従業員の皆さんが内面に持っている考え方や能力、仕事観などの“深層のダイバーシティ”をどう会社の制度にしていくかを考えなければなりません。

一人ひとりの内面に合わせた制度を作ることはできないからこそ、どんな価値観を持っている人でも共感できるコアなメッセージを明確にしていくことが大切です。皆さんに共感してもらえることをシンプルにやっていくというのが、大切なことだと思います」

多様性を受け入れるために、制度はないほうがいい。制度がたくさんできているということは、多様性を十分に受け入れられていないのではないか。堀井はそのように考え、できるだけシンプルな制度を作り一人ひとりが働きがいを感じながら仕事を進めていける会社にしたいという想いを持っています。

そんな堀井はコロナ禍を経験して、今後のキャリアのために今までよりも勉強したいと思うようになりました。

堀井 「特に人と人とのコミュニケーションについて、もっと勉強したいと考えています。たとえば顔色を伺うとか、今まで対面で何気なくできていたことでも、実はもっと深い意味があり、何かしらの解があるのではないかと考えています。学びを深めたうえで従業員が共感できるメッセージを発信していきたいです。

これまで培った経験をもとに、コミュニケーションを自分の武器としてブラッシュアップしたいですね」

時代に合った制度づくりを進め、誰もが働きがいを感じられるように──。
堀井は、Hondaを真の意味で多様性を受け入れる会社にすべく、今日も従業員のために自身の想いを形にしていきます。

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