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自動運転レベル3の型式指定取得!前人未到のプロジェクトに奮闘した若手エンジニアの記録

2020年11月、Hondaは自動運転レベル3 の型式指定を国土交通省から取得しました。若手エンジニアである伊藤 真吾と古森 雄一は、さまざまな困難を乗り越えながら史上初であるこのプロジェクトを成功に導きました。開発プロセスで得たやりがいや喜び、そして、今後Hondaが目指すレベル3自動運転車の未来について、若手エンジニア伊藤と古森が語ります。

伊藤 真吾Shingo Ito

株式会社本田技術研究所 先進技術研究所AD/ADAS研究開発室

2012年新卒入社。電気電子工学専攻。物心ついた頃からモノづくりを志しており、学生時代には公益財団法人自動車技術会が主催する学生フォーミュラ日本大会に参加。そこでHonda社員のモノづくりに対する熱意に惹かれ入社を決意。

古森 雄一Yuichi Komori

株式会社本田技術研究所 先進技術研究所AD/ADAS研究開発室

2016年新卒入社。応用情報科学専攻。就職活動においてHonda社員が本気で抱いている想いに触れたことで、Hondaでなら強い想いを持って働き続けられると確信し入社。自らの技術力を生かして交通事故をなくしたいという夢を持ち開発を進めている。

前人未到のプロジェクトを成功させるべく、プロが集結し協力し合う

2020年11月、Hondaが当局に申請した車両が、自動運転車(レベル3)として型式指定されました。自動運転レベル3とは、システムから運転操作の引継ぎを求められた場合にはドライバー(人間)が操作を代ることを前提に、決められた条件下で運転操作が自動化される状態を指します。

自動運転レベル3車両の認可を取得するためプロジェクトを進めていたメンバーのなかに、先進技術研究所の伊藤と古森の姿がありました。

伊藤 「私の役割は、法規に適合するための開発の推進、法規解釈を当局と整合し認可を取得するなど多岐に渡りました。普段はエンジニアとして安全設計に関わる業務をしていますが、今回は当局との渉外や書類作成もあわせて担当しました」

古森 「私はその傍らで故障や性能限界などのシステム設計とそれらの設計情報をまとめ、当局に提示するための資料を作成していました。

自動運転レベルが2から3に変わると、ドライバーは運転中に車内ディスプレイでの動画視聴等が出来るようになります。
一方で、自動運転の走行環境条件から外れた場合には、ドライバーはシステムからの通知に応じて運転を引き継ぐ必要があり、その点に関して速やかに対応できるかの確認を行いました」

初の認可に至るまでには、さまざまな苦労がありました。

伊藤 「法規がまだ準備段階であったため、国際的な動向を見たり推測を立てたりしながら開発を進めるのが大変でした。

自動運転開発において最も重要な点の一つである安全性の要件を当局と合意していく過程で、議論を重ねながら必要に応じて仕様に反映させるということが開発の最後まで続いたところが特に難しかったです」

プロジェクト進行中は常に課題が山積みで、大変な状況が続いていましたが、困難を乗り越えていくうちにチームの雰囲気も良くなり認可という成果に結びついたと感じています。

伊藤 「一人ひとりの努力が成果につながりだすと、自分たちに自信が持てるようになり、チーム全体の雰囲気が変わっていくきっかけになったと感じます。自動運転の開発は広範囲に及ぶのですが、それぞれの担当者がプロ意識を持ち、困りごとや悩みを互いに気軽に相談し合えていましたね」

古森 「私はプロジェクトが量産開発になる前の研究段階の開発から参画し、当初はメンバーも少なかったのですが、開発が進むにつれ徐々に大所帯になっていきました。それに伴い、ロボット開発に携わっていた方やエンジンやブレーキ関係のエンジニアなど、メンバーの技術的なバックグラウンドが多様になっていきました。」

自動運転システムは走る・曲がる・止まるという車としての基本的な機能すべてに関係するものですが、どの分野にもプロがいて、現在の担当業務と少ししか関連していなかったとしても真摯に相談に乗ってもらえましたね」

熱意に惹かれてHondaに入社。困難続きのプロジェクトに熱い想いを込める

アシスタントチーフエンジニアを務める伊藤は、少年の頃から車が好きでした。大学時代には(公財)自動車技術会が主催する学生フォーミュラ日本大会に参加し、自動車業界を身近に感じて自然と就職を志していました。

複数ある日本の自動車メーカーのなかでもHondaを選んだのは、会社の考え方と社員の熱意に惹かれたからでした。

伊藤 「創業者の本田 宗一郎が語った『世のため人のため、自分たちが何かできることはないか』という言葉が、社員たちに浸透しておりすごく大切な考え方だと感じたんです。私も学生の頃からモノづくりをしていたので、その志に共感しました。

また、私が参加した学生フォーミュラ日本大会の審査員は自動車業界の人で構成されていて、そのなかに熱意あるHonda社員が多くいました。モノづくりとは、自分の意思や意味を込めてモノを作ることだと思うんです。だからこそ、Hondaという環境であれば、自分の想いもモノに込められるのかなと感じました。

今回のプロジェクトも、みんなで成し遂げようという熱意がメンバーそれぞれにあり、本当に大変な中でしたが、みんなと一緒に成し遂げたことがとても楽しかったです。」

自動運転レベル3の車両認可にHondaがこだわったのは、よりパーソナルユーザーに向けたモビリティを提供するためだったと伊藤は考えています。そして認可を取得する過程では、多くの認可書類を作成しなければならないこともありました。

伊藤 「設計の正確な情報を当局の方に理解してもらうため、実際に開発した各領域のエキスパートたちに協力を仰ぎ書類を作成しました。初の取り組みでしたが、最終的にはすべての認可書類を受理して頂くことが出来ました。コロナ禍の大変な時期にもかかわらず多くのメンバーが協力してくれたことには感謝がつきません」

無事に認可を取得できたのは、多様性のあるメンバーがそれぞれの想いをプロジェクトに込めたからだと伊藤は考えています。

伊藤 「みんなそれぞれ良いところがあり、熱い想いを持っていました。さまざまなキャラクターの人がみんなで作ったものを世の中に出したいという想いがあったからこそ、認可につなげられたんだと思います」

今回のプロジェクトを通して、伊藤は自動運転の難しさを実感するとともに、大きな学びを得ました。ただ走るだけでなく安全に走れるようにするためには、高い技術力が必要です。しかし、飛躍的に商品価値を高める技術障壁を突破しながらも、それを見せびらかすのではなく、常にお客様に寄り添って考えることが新しい体験の提供につながるものと思っています。

伊藤 「私自身は、この技術をどうしても実現したいという明確な目的があるというよりは、世の中が欲しているものにフォーカスを当ててそれを実現していきたいと考えています。自動運転はこれからのものなので、自動運転レベル3の車両を世の中に出して反応がどうなるか確認しながら、お客様が欲しているものを見極めようと思います。

お客様にとって大事なのは、どれだけ高い技術が使われているかではなく、その技術を通してどのような体験が得られるかだと思うんです。そこからかけ離れないよう、お客様が求めているものを提供するために技術を活用するという意識を常に忘れずにいたいですね」

交通事故をなくすため入社したHondaで、安心安全という軸をブレさせない

スタッフエンジニアの古森は、就職活動中に社員の本気さを目の当たりにしたことで、Hondaへの入社を決めました。

古森 「OB訪問や説明会などにおける社員の方々の話し方や表情から、今自分たちがやっている仕事と自分たちが成し遂げたいと思っていることが一致している様が伝わってきました。採用のために作られた言葉ではなく、社員が本気で抱いている想いに触れたことで、Hondaなら強い想いを持って働き続けられるだろうと思ったんです」

古森がHondaに入社する前から抱いていたのは、交通事故をなくしたいという強い想いでした。

古森 「交通事故は当事者である被害者と加害者だけでなく、その周りの方々も悲しい気持ちにさせてしまいます。事故にあうような車に人を乗せたくないという考えから、就職先を自動車業界にしようと決めました。

自動運転などの先進的な技術開発の先には、交通事故のない社会が見えてくると思っています。入社前から自分が持っている想いは、今も変わりません。今自分が携わっている仕事が最終的に交通事故のない社会の実現につながると思って働いています」

古森 「自動運転車両の認可取得においては、当局の方々には大変ご尽力頂き、立場の違いによる活発な議論もさせて頂きました。また認可に関する知識を持つ認証部のメンバーと協力して推進でき、勉強になりました。

Hondaの自動運転は、安心安全をキーワードとしています。だからこそ、認可取得の際には我々の設計の考え方を先方に正しく伝えることに重きを置いて多岐に渡る情報を開示し、きめ細やかな説明をすることに努めました」

お客様の手元に自動運転車を届けるため、さらなる技術開発を進める

レベル3自動運転車の認可を受け、Hondaの自動運転プロジェクトは大きく前進しました。

伊藤 「実際に自動運転レベル3の車両に乗ったとき、本当に自動で運転してくれる、この便利な機能を多くの人に知ってもらいたいと率直に思ったんです。将来的にはHondaとして、自動運転技術を多くの車で提供していきたいですね。

我々が取り組んできた大規模なシステムや製品の安全性の証明を行うプロセスはまだまだ国際的に見ても議論されている段階で、体系化されるまでには多くの課題をクリアしていく必要があります。日本は部品だけでなくシステム自体の安全技術にも優れているので、自動車業界全体でそれを証明する力を育てる必要があると思います」

自動運転レベル3の認可を取得するプロジェクトを経て、伊藤も古森も今後の仕事に向け改めて鉢巻を締め直しました。

伊藤 「現在は、自動運転技術をよりお客様の手に届けやすい形にするための技術開発に携わっています。今回の経験を生かし、安全性はしっかりと維持したまま、お客様にとってより嬉しい商品となるような設計ができればと考えています」

古森 「今回のプロジェクトで経験した苦労は今後の仕事に活かしていきたいです。
認可は数あるステージの最後にあるものなので、そこに至るまでの工程もきちんと行う必要があります。そして、最終的には多くのお客様の手元に自動運転車を届けられるように頑張っていきたいです。

現在、私は自動運転を開発した経験を生かして、次なる予防安全機能の技術開発に携わっています。交通事故を減らしたいという入社前から持っている自分の想いとリンクする技術開発なので、今まで以上に気合いを入れ、少しでも交通事故を減らせるような車両をお客様の手元に届けたいですね」

自動運転レベル3車の型式指定という大仕事を乗り越えてからも、自動運転車の普及に向けてさらに歩みを進めるプロジェクトメンバーたち。

彼らの仕事一つひとつが、モビリティ社会の大変革を支えるのは間違いありません。

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