Me and Honda, Career Hondaの人=原動力を伝える Me and Honda, Career Hondaの人=原動力を伝える

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現地の意見を重視し二輪車のコスト削減を進める社員が、駐在で感じた気づき

二輪車の購買担当として、適正な価格でお客様に製品を提供できるようにコスト削減のアイデアを提案している奥。タイへの駐在で自分と現地の意見の違いを実感した経験を活かし、現場・現実・現物を重視する三現主義を体現しながら購買業務を担っています。経験を紐解きながら奥の学びや想いを深掘りします。

奥 雄大Yudai Oku

二輪・パワープロダクツ事業本部 ものづくり統括部 ものづくり企画・開発部購買・CIC統括課

2006年Hondaに新卒入社して以来、二輪の購買部門で経験を積む。2016年から5年間はエイシアン・ホンダ・モーターに駐在し、アジア太平洋地域で販売されている年間1,800万台規模の二輪車のコストダウンに向けた取り組みを実施。2021年に帰国し、現在の所属となる。CICはCost Innovation Centerの略。

客観的な視点でコストダウンを考える購買部の社員

グローバルに展開するHonda製品ですが、二輪車は特に海外での需要が高い製品です。購買部門に携わっている奥は、海外向け二輪車の考慮しながらコストダウンの取り組みを進めています。

奥 「Hondaは2030年に向けたビジョン*のなかで『クリーンで安全・安心な社会へ』をキーワードに、安全性や環境に配慮した製品開発をしていくことを発信しています。環境や安全性の向上を目指すうえで技術の投入は必須ですが、一方で、材料や労務費など、追加でコストがかかってしまいます。

お客様に価値を訴求しながら事業として成立させるためには、魅力ある技術・機能をリーズナブルに実現する、既存部品のコスト体質向上により二輪車1台分の原価を下げる、売価に反映する、といった選択肢からいずれかの対応が必要です。一方、アジア・大洋州のユーザーは二輪車を生活のために使われる側面が大きく、リーズナブルな価格で購入したいというお客様が多いのです。そのため、信頼性が高く、高品質かつリセールバリューの高い商品づくりが必要で、高機能とコストの両立が求められます。

製品のクオリティと値段などの観点からお客様のニーズにお応えするため、我々購買と営業、生産、開発部門が一体となり、コストと商品の両立を考え戦略を立てていくのがものづくり企画・開発部の役割だと考えています」

*「すべての人に、『生活の可能性が拡がる喜び』を提供する世界中の一人ひとりの『移動』と『暮らし』の進化をリードする」というステートメントで表される2030年に向けた姿。詳しくはこちら

Hondaでは二輪車の安全性を高める取り組みのひとつとして、先進ブレーキ*に注力しています。

奥 「先進的なブレーキシステムをお客様に広く届けるためにはシステムにかかるコストを下げる必要があります。たとえば本来分かれている部品をひとつにまとめるというような工夫を行いながら、安全性とコストの両立を目指しています」

*HondaのブレーキシステムはABS(アンチロックブレーキシステム)やCBS(前後輪連動ブレーキシステム)といったさまざまな先進ブレーキシステムがある。詳しくはこちら

奥はもともと、二輪車に限らずモビリティ自体に大きな関心があったわけではありませんでした。そんな奥が就職先にHondaを選んだのは、チャレンジングな風土を感じるとともに、コアなファンではないからこそできることがあると考えたからです。

奥 「就職活動をしていた当時、Hondaともう1社から内定をいただき、どちらに就職しようか迷っていました。Hondaには惹かれていたものの、マニアックなファンが就職するイメージを持っていたため、自分は浮いてしまうんじゃないかと懸念していたんです。

しかし、両親に相談したところ『クルマやバイク好きだけが集まっても良い会社は作れない』と言われ、確かにそうだと納得しました。そこで、自分は周りと違う視点を持った特別枠になろうと考え、Hondaに入社することにしたんです」

入社後、奥は客観的な視点を持ち合わせているからこそできる提言を心がけてきました。

奥 「バイクを購入されるお客様全員がバイク好き、というわけではないと思います。そのため、俯瞰した立場から『この機能ってお客様が求めているの?』『その装備は本当に必要なの?』と意見を出すようにしていました。そんな提案がコスト削減につながることもありましたね」

5年間タイに駐在し、部品のコストを下げるためのVA大会を開催

▲パキスタンVA大会当日の様子(本人提供写真)

2016年から2021年3月までの約5年間、奥はタイにあるAsian Honda Motor Co., Ltd.に駐在しました。アジア・大洋州本部の地域統括機能となるこの事業所の駐在員として、アジアの近隣諸国に頻繁に足を運び、二輪車のコストダウンに取り組みました。

奥 「帰任後の現在は、将来に向けての戦略企画というような、大きな枠組みを考える仕事をしていますが、駐在ではアジア太平洋地域内でコストを下げるため、足元の取り組みを進めていました。

Asian Honda Motor Co., Ltd.だけではアジア太平洋地域全体をカバーしきれないため、日本本社の購買とAsian Hondaの購買で役割を分担しながら地域ごとのサポートを進めていました」

駐在のなかで印象的だったのは、部品のコストを下げるためのパキスタンVA(Value Analysis)大会を開催したことでした。

奥 「年間100万台年を超える生産販売台数があるパキスタンでは、為替がかなり悪化したため、輸入品のコストが上がり部品の調達が難しくなっていたんです。パキスタンのメンバーからコストを下げる取り組みを一緒にやってほしいという相談があったので、バイクをティアダウンし、構成部品単位で検証しながら、個々の部品ごとにもっと安くできるところはないか、攻めどころはないかといった三現主義で議論するVA大会を開催しました。

社内の開発、生産や購買に関わるメンバーのほか、お取引先の方にも来ていただき合計21社、約200名を招集し、VA大会を進めたんです。パキスタンに関わっている日系のサプライヤーさんや、輸入元である中国のサプライヤーさんを中心に参加していただきましたね。多くの方がパキスタンに部品を納めていらっしゃるので、部品の単価を下げるために何ができるかを一緒に考えました」

VA大会を開催するうえで大変だったのは、ティアダウン部品の手配でした。

奥 「当時パキスタンには中国の完成品メーカーが参入しており、我々よりも安い価格でバイクを販売していました。そこでライバルとなるメーカー車を分析するために製品を買おうとしたんですが、手配しようとしていたのは中国のメーカーが輸出用に作っているモデルだったため、部品の入手は簡単ではなく、苦労しましたね。

もともとリーズナブルな価格帯のバイクだったこともあり、非常にチャレンジングな活動でした。しかしながら、パキスタンメンバーに加え、開発・生産・購買が一体となり取り組んだ結果、コストダウンにおいて大きな成果をあげることができました。加えて、この活動を通じて知り合った新たな人とのつながりを得たり、チーム活動の大切さを学んだりすることができました。また、三現主義を具現化できた活動のひとつとしてとても印象に残っています。

また、パキスタン出張後にタイの空港経由で中国に向かったりもして、今思えばハードでしたが、振り返ると良い経験でしたね。

おそらく、このプロジェクトに参加しなければ、私の人生でパキスタンに行くことはなかったと思います。こういう機会を与えてくれた会社にも感謝していますし、現地でアテンドしてくれたパキスタンメンバーや駐在員の方にも感謝しています。今では、テレビでパキスタンという言葉が聞こえてくると作業をしていた手を止めて見入るほど、関心を持っています」

自分の「良い」が、現地の人にも「良い」とは限らない──駐在で見えた本当の三現主義

奥はタイ駐在中に多くの国を訪れた結果、自分と他国の方の価値観の違いを実感しました。

奥 「たとえばパキスタンではCD70というモデルが販売されていますが、これは私が生まれたときから作られており大きく仕様は変わっていないバイクです。

私は新しいものが好きで新しい家電が出ればすぐに買い替えたくなるのですが、パキスタンの人は昔ながらのものがいいという考えが強く、ずっと同じ製品が作られ続ける傾向にあります。

また、一般的にスクーターの周りは樹脂のプラスチックで覆われているケースが多いんですが、インドで販売されているアクティバというモデルでは鉄板が使われていました。それは、ぶつかってへこんでしまっても叩いて直せるからという理由だったんです。

樹脂だと割れてしまうので、叩いても元に戻せません。鉄板を叩いて直して使い続けるという概念は自分では考えられなかったので、現地の人はそれがいいと考えていることに驚きました」

自分と現地の人たちの考えが同じとは限らない──駐在の経験から、意見や考えを押し付けてはいけないと奥は学びました。

奥 「技術は進化しているので、新しい技術を製品に投入しようと思えばいくらでもできます。しかし、パキスタンのCD70の場合、現地の方々が新たな技術を求めていないとわかり、結局そのまま作り続けました。

理解し合いながら仕事を進める必要があることは駐在前から認識していましたが、駐在によってより広い視野で違いを体感することができたと思います」

現地に対する理解を深めるためには、生産現場をきちんと訪れる必要があると奥は考えています。

奥 「Asian Honda Motor Co., Ltd.という組織はアジア太平洋地域の本社のような位置づけなので、実際の現場ではありません。ベトナムやインドなどを含む8カ国の拠点にある生産現場を訪れ、現地の方の話を聞きながら進めなければいけないと感じました」

大企業としての伝統を活かしながら、ベンチャーのように挑戦できるのがHondaの魅力

購買の仕事は提案が基本で、図面を描いたり製品を作ったりするわけではありません。それゆえの難しさはあるものの、開発部門や取引先と合意し実際に製品ができ上がったときに奥はやりがいを感じています。

奥 「二輪車はグローバルで年間2,000万台弱販売されており、なかには1モデルで200万台生産するモデルもあるんです。自分が提案したアイデアが大規模に広がっていくところは、やりがいがあると思いますね。Hondaは特に接するお客様が多いので、責任もやりがいも強く感じられます」

三現主義を重視するHondaでは、机上で考えるだけではないモノづくりに携われることも魅力です。

奥 「購買担当であっても、まずは『現場に行け』と言われます。二輪領域は特に現場の声が大きい傾向にあるので、それを実現するために動くのが基本です。私が所属している購買・CIC統括課には、開発や生産、購買でキャリアを積んできた社員が集まっています。多部門の方々と協力しアドバイスをもらえるので、現場の声を叶える環境が整っていると思いますね」

モビリティ業界の変革に伴い、二輪車にも転換期が訪れています。しかし、タイ駐在で現場を見てきた奥は、電動二輪車の導入は簡単なことではないと感じています。

奥 「今は二輪もガソリン車がメインでHondaは世界No.1のシェアを誇りますが、EVに切り替わるにつれてライバルも変わってくるため、しっかりと準備をしなければなりません。

ただし、二輪のお客様は新興国の方も多く、バイクが生活の必須アイテムであることも多いです。そのような方々がEVをすんなり受け入れてくださるかというと難しく、当面EVとガソリン車が混在する時期があり、事業が成立する開発・生産・購買のあり方を見極めなければならないので、簡単な道のりではないと思っています。

今はガソリン車メインのコストダウンで進めていますが、いずれEV中心の市場がくることを予測しながら戦略を考えていきたいと思います」

求められ続けるガソリン車と、普及を促進していくEV。どちらにも携わるHondaの二輪車担当は、大企業の伝統継承とベンチャー企業のような新たな挑戦を同時に進めていけるのが魅力だと奥は考えています。

奥 「現在Hondaが二輪で世界No.1のシェアを誇っているのは、今まで働いてきた方々が汗水流してやってきた結果なので、私の成果ではありません。ただ、EVを含め今後のシェアについては、業界の構造自体変わってしまう可能性もあるためしっかり戦略を立てていく必要があると思っています。

今までの仕事や駐在の経験を活かしながら、20〜30年先でもHondaが世界トップの位置にいられるようにしたいですね。変えてはならない部分は守りつつ、新しいことにチャレンジしていきたいと思います」

世界中で愛されている生活の足を守るため、二輪車のコストダウンを行う購買担当として尽力する奥。今後の大きな変化を見据えつつ、現場の声を大切にする姿勢を変えることなく今後も邁進します。

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