リチウムバッテリーの電源がもたらす

更なるオーディオ製品の
音質強化に注目。

オーディオ評論家福田 雅光

オーディオシステムの機器は電源供給経路の品質が音質を左右することを十数年前に発見した筆者は、この重要性を専門誌で主張してきた。本格的なオーディオ用電源パーツが開発されるようになり現在にいたっている。その上で、バッテリー電源による方法もマニアの間で興味を持たれてきた。
最近はリチウム電池を使うようになり、Hondaがオーディオ用に開発したLiB-AID E500 for Musicをテスト試聴すると、低音エネルギー供給力とSN比の高いクオリティーを達成していることに注目した。また、電源経路は部品の品質が音に影響する。この点でもHondaは、現在最高級品質として世界で認められているフルテックのロジウムメッキ電極を採用するコンセントNCFを採用して音質性能を徹底しているのはちょっと驚く。この結果、帯域特性は広く解像度の高い性能が現れている。難題の高域特性も倍音成分を繊細に表現、きっと音にこだわるマニアも納得できる価値を感じるだろう。

[試聴したオーディオシステム]★CDプレーヤー:Marantz SA-11S3
★プリアンプ:LUXMAN C-700u
 パワーアンプ:Accuphase A-70
 スピーカー:DIATONE DS-5000

★印の機器にLiB-AID E500 for Musicを接続

オーディオ評論家福田 雅光

ふくだ まさみつ:共同通信社技術部を経て1985年よりフリーランスとして活動。「オーディオアクセサリー」(音元出版)、「Stereo」(音楽之友社)などの専門誌に執筆。少年時代より電子回路に興味を持ち、真空管ラジオの製作などを趣味にしてきた。70年から「電波科学」(日本放送出版協会)でアンプの設計製作、製品テストを執筆。76年よりオーディオ専門誌で評論活動に入る。
オーディオシステム、ケーブル、あらゆる製品を徹底した試験検証に基づいた記事は読者から高い評価と信頼を得ている。

ノイズフロアが明らかに
下がり、
音の質感表現力が
見事に向上する。

オーディオ評論家鈴木 裕

テストは筆者の自宅にて、メインのオーディオシステムを使って行なった。
まず、プリアンプのみをLiB-AID E500 for Music(以下、E500 for Music)から給電してのテスト。音の背景が静かになり、空間の透明度が向上。音場空間自体は前後左右に伸びやかに拡大し、特に奥行き方向に深い。音像どうしはよく分離している。音の感触としては、中高域は水準的でやわらかくも硬くもないが、低域はやや締まって、若干硬めの印象。ちょっとダンピングが強めの感じ。また音のコントラストも強めだ。音色感としては、たとえばヴォーカルの描写など、細かいニュアンスが出てくるのが印象的。エコー成分はノイズフロアが下がるので多めに感じられるが、音の立ち下がり(しゃがむ速さ)自体は速くなっている。

第2段階として、プリアンプとCDプレーヤーの両方をE500 for Musicから給電する。音の重心が上がることもなく、さらに透明度が増し、エコー成分が豊潤に。音の色彩感がよりよく出てくる。音場空間は左右のスピーカーの外側にまできれいに展開。音の立ち上がりの情報量が多く出てくるし、しゃがみもいい。ノイズフロアが下がることが再生音すべてに対して良好な影響をもたらしており、たとえば楽器の材質である皮とか木、金属といったそれぞれの質感表現力が見事に上がっている。印象的なのは音楽ソフトの持っている荒々しさや炸裂する感じと、まろやかさやマイルドな感じといった相反する要素がそれぞれにきちんと表現されること。E500 for Music自体がモノトーンではなく、音質的にニュートラルな電気を発生させているのを感じる。ちなみに本体の表示を見ると、4時間程度は問題なく使える容量のようだった。
最後に、Hondaが推奨する使い方ではないが、E500 for Musicに充電をしながらプリアンプとCDプレーヤーに給電して音楽を再生するという条件でテストしてみた。中高域の透明度が落ちるだけでなく、音像の前後方向の分離が若干悪化。また、低域の押し出し感、馬力感が落ちるのが明白だった。充電しながらの使用はオーディオの再生音としても推奨できないということがわかった。充電ケーブルひとつで音質に影響が出ることからも、オーディオにおける独立電源の効力を垣間見ることができた。

「結論など」
現在、日本の一般家庭の電源環境はオーディオにとって悪くなる一方である。冷蔵庫やエアコンなどのインバーター電源、電気ポットやトイレの洗浄器といったマイコンを使った製品、そしてルーターやPCといったパソコン関連の発生する高周波のノイズの存在がまずある。また、空中を飛び交う地デシ放送やケータイ用の電波、ルーターからのワイファイの電磁波など、すべてデジタル(つまり矩形波)の高周波であり、こうしたものがオーディオの再生音の足を引っ張っている。音楽の音の帯域は以前は20kHzまで、現在のハイレゾでも40~100kHz程度と思われているが、たとえば携帯電話の0.7GHz~2GHz、ブルートゥースやワイファイといった2.4GHz~6GHzあたりの高周波の電磁波が再生音に悪影響を与えているのを確認している。
ちなみに拙宅では、オーディオの機器以外用にフェライトマグネットを使ったノイズフィルター、いわゆるパッチンコアを30個程度使用。各コンポーネントの電源は二重三重によりそい型の電源フィルターや並列型の電源フィルターを使用している。そういった環境でもE500 for Musicから給電される電源の純粋で素直な特性には及ばないことが今回のテストでわかった。
なお音色感については、今回プリアンプやCDプレーヤーの電源を直接、E500 for Musicのコンセントに差した結果であり、音の明/暗、硬い/柔らかい、といった要素についてはコンポーネントとの間に使用する電源ケーブルや電源タップの使用でコントロールできることは付け加えておきたい。

[試聴したオーディオシステム]★プレーヤー:エソテリックK-03Xs
★プリアンプ:サンバレー SV-192A/D
 バラメトリック・イコライザー:アヴァロン・デザイン AD2055
 パワーアンプ:サンバレー SV2-PP(2009)
 スピーカー:ソナス・ファベール エレクタ・アマトールⅢ

★印の機器にLiB-AID E500 for Musicを接続

オーディオ評論家鈴木 裕

すずき ゆたか:ラジオディレクター、オーディオ評論家。ラジオのディレクターとして35年以上のキャリアを持ち、2000組以上のミュージシャンをメインとするゲストを迎えている。また、レコーディングディレクターの実績を持つ。大学のオーケストラ部ではヴァイオリンを担当。ジュネス・ミュージカル・オーケストラにも参加。小林 研一郎、尾高忠明の薫陶を受ける。
オーディオライターとして20年以上活動してきて、現在は月刊レコード芸術、月刊ステレオ、季刊オーディオ・アクセサリー、季刊ネット・オーディオなど音楽・オーディオ誌に執筆。オーディオ機器に関する各種賞の選考・審査委員を歴任。このほかにもクルマ、オートバイ、自転車についても執筆している。オートバイのロードレースの元・国際A級レーシングライダーという経歴も持っている。

耳触りの良い音が超高域まで
素直に伸び、
声や楽器の質感、
余韻がより細やかに。

オーディオ評論家生形 三郎

パワーアンプ以外の機器に対し、LiB-AID E500 for Musicから給電を行なってみた。一聴して感じたのは、バッテリー電源ならではの耳触りの良さ、聴きやすい肌触りである。声や楽器の質感、音の余韻がより細やかに感じられ、超高域まで素直に伸びる。いわゆるオーディオの音を聴いているという力強い感じとは逆で、音の存在感がなくなるというか、極端に言えば「電気で音を出してない感じ」とも言えよう。ミックスやマスタリングでたっぷり音圧を稼いだような音源を聴いても聴き疲れることがない。
オーディオ機器の電源回路の規模であったり、省電力系のクラスDアンプであったり、組み合わせるコンポによっていろいろな効き具合が楽しめそうだ。

[試聴したオーディオシステム]★レコードプレーヤー:テクニクスSL-1200GR
 (カートリッジ:オーディオテクニカAT-ART9)
★SACD/CDプレーヤー:アキュフェーズDP-560
★フォノイコライザー:アキュフェーズC-37
★プリアンプ:アキュフェーズC-2850 
 パワーアンプ:アキュフェーズA-48
 スピーカー:フォステクスRS-2 with NW-3
 クリーン電源:KojoテクノロジーAray6MKⅡ

★印の機器にLiB-AID E500 for Musicを接続

オーディオ評論家生形 三郎

作曲家、録音エンジニア、サウンドアーティスト。昭和音楽大学作曲学科首席卒業、東京藝術大学大学院修了。独学での作曲や演奏活動を経て大学在学中に国内外の作曲コンクールで受賞後、短期渡仏し電子音響音楽を学ぶ。大学卒業後はコンサートやワークショップ、海外音響レーベルからの作品リリース等を行いながら、書籍の企画・執筆など「音」に関する活動を広く展開する。音楽家、オーディオ評論家の知見を活かした録音エンジニアとしての仕事も多数。オーディオ機器に関する各種賞の選考・審査委員を歴任。