鈴鹿サーキットのパドックに、1台また1台とNSXが集まってくる。クルマを降り、仲間との再会をよろこび合うオーナーたち。みな、晴れやかな表情だ。いや、晴れやかだけではない。誇りに満ちた表情に見える。
スポーツカーに、新しい価値を創造した世界に誇るHonda。名門スポーツカーメーカーに多大な影響を与えただけでなく、20年経てもなおサーキットを走れるだけの耐久性を実現した希有なクルマ。その歴史に残るクルマのオーナーだからだろう。
開会式の会場となったプレスルームは、史上最大数の参加者で埋め尽くされた。見渡すと、まさに世界のNSXオーナーが集まったというにふさわしい風景である。
記念すべきNSX fiestaには、多くのゲストも参加した。NSXが発売された当時の社長、川本信彦。彼は、NSX fiestaの前身である、1992年のNSXオーナーズ・ミーティング・スペシャルには現役の社長として参加している。そして、研究所専務であった鈴木久雄、開発責任者の上原繁、エンジン開発を担当した尾崎俊三郎、デザインを担当した中野正人、営業を担当した渡邉一、稲田博保、サービスを担当した新井順一、販売促進を担当した渡辺春樹。海外からは、NSXの欧州でのクラブ活動やル・マン参戦に尽力した元スイスホンダ社長のクロード・サージ。さらに、オーナーズ・ミーティングを支え続けている特別顧問の黒澤元治氏、特別講師の清水和夫氏。
「NSXが誕生しなければ、ポルシェもフェラーリも今のようなしっかりとしたスポーツカーメーカーにならなかったのではないか」 「20年経ちましたが、われわれのNSXに対する熱い想いは少しも変わらない」という黒澤・清水両氏の挨拶で20周年のNSX fiestaはスタートを切った。
NSX fiestaは、1991年からはじまったNSXオーナーズ・ミーティングの一年の締めくくりとして、全国から参加者を募り、NSXオーナーが里帰りする祭典があってもいいではないかと、当時の営業担当だった渡邉一が企画したイベントである。1992年に急遽開催することになったため、名前を考える暇もなく、NSXオーナーズ・ミーティング・スペシャルという名称ではじまった。NSX fiestaになったのは、1994年からだ。
はじめは身内が進行までを行う手づくりのイベントだったが、だんだんとGTマシンを走らせるなど大掛かりなものとなっていった。しかし、NSXオーナーが求めているのは、全国のオーナーが集い、語らうことではないかと考え、近年は発足当時のようなシンプルなイベントへと原点回帰することとなった。
記念すべき20周年のNSX fiestaは、パレードとディナーパーティと走行メニューという基本のプログラムと、ギャラリーやトークショーなどNSXを愛で、語り合う内容である。
加えて、メンテナンス相談、リフレッシュプラン紹介コーナーや用品紹介コーナーなどが設けられ、長年乗り続けているオーナーの相談に応じる用意がなされた。
さあ、オープニングランがはじまった。同伴者だけでなく海外からの参加者も助手席に乗り、先導車が引っ張る形で4台ずつで走行する。そして、走行している姿をカメラマンが撮影し、後日USBメモリに写真を入れ、このNSX Pressとともに一人ひとりのオーナーへ配布するという趣向である。このページをご覧のNSX fiesta参加オーナーは、すでにご自身が鈴鹿サーキットを走る姿を捉えた記念写真をご覧になっていることだろう。
オープニングランのあとのプログラムは、スポーツ走行のみ。走行を行わない方は、ゆっくりとホスピタリティラウンジなどで語らいの時間を楽しめる。
スポーツ走行を終え、すでに日が落ち切ったサーキットにサプライズが起こった。海外からの参加オーナーに、1周ずつNSXに乗っていただくプログラムが急遽組まれたのだ。発案者は、自身もスポーツカーで走ることが大好きな川本元社長である。「せっかく日本までいらしたのだから、乗せて差し上げよう」と。
数台のNSXが用意され、日本でしか発売されなかった2代目TYPE Rが多くを占めていた。海外の方にとっては、きわめて貴重な経験である。英語が堪能な清水氏がブリーフィングし、現場でも案内役を務めた。
参加者のよろこびは尋常ではなく、なかにはTYPE Rにあたって飛び上がってよろこぶ人までいた。清水氏いわく「試乗車はほとんどがTYPE Rで、なかには外れてアンラッキーな人もいるけど、世界的にも有名な鈴鹿を走れたことは貴重な経験になったと思いますね。それに、夜走ると遊園地や周囲の照明がきれいで幻想的。メモリアルランとしては絶好のシチュエーションだったんじゃないかな」とのこと。感動の試乗を終えた海外からの参加者は、嬉々とした表情でホテルへと向かった。
駐車スペースには、まさに20年の歴史を物語る色とりどりのNSXが集まってきた。たたずむNSXも感慨深げに見える。
再会を果たしたNSXオーナーとその仲間たちは、誇らしげな笑顔で語り合い、とっておきの記念品にサインをもらう姿も多く見られた。
オープニングランのスタート。海外からの参加者が壮大なNSXの隊列を見守っている。
2009年で参戦を終えた、NSX GTマシンが展示されたコーナーでは、コクピット体験試乗も行われた。
元気にNSXの走りを楽しむ元スイスホンダ社長のクロード・サージ(右)。左はスイスのNSXクラブ会長のジーン C.ズッカー氏。
走行メニュー終了後、急遽開催された、海外参加オーナーのNSX試乗プログラムの様子。みなさん嬉々として鈴鹿を堪能していた。