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NSXfiesta 2009 Report ずっと楽しみ続けたい! NSXオーナーズボイス&データ

The truth of NSX #1 だから純正タイヤがいい 上原 繁

The truth of NSX #2 NSXが一生楽しめる理由 清水和夫

News&Topics SUPER GT 2009 SERIES

The truth of NSX #2 Kazuo SHIMIZU NSXが一生楽しめる理由 清水和夫

NSXは、アルミボディ以外のパーツの耐久性も高い

NSXについて、オールアルミでボディが長持ちすることがよくフィーチャーされますが、ボディだけ長持ちしてもだめなんです。その点NSXは、トランスミッションが壊れないし、ディファレンシャルギアやブレーキも壊れない。

エンジンも丈夫だよね。ものすごく信頼性が高い。そこがオールアルミボディと同じくらい重要なところだと思います。

20年前、すでに環境にやさしいグリーンマシンだった

アルミは比重が鉄の1/3です。同じく剛性に関わる数値である弾性係数(ヤング率)が鉄の1/3なので剛性は低い。でも強度は同じです。
つまり、NSXのボディをはじめ鉄でつくったとして、それと同じ構造でアルミ化すると「軽くなるけど剛性が低くなる」ので、よりリッチな構造にして剛性を高くしていくと、鉄の場合よりも強度がかなり高くなるんです。
だから、NSXのボディは剛性が高いとよく言われますが、実はそれ以上に強度も高いんです。強度と剛性は物理上似ていてわかりにくいのですが、強度の高さがNSXのオールアルミボディの耐久性に寄与しているのではと思っています。もちろん、アルミの腐食しにくさが最大の理由ですけどね。

それはともかく、アルミは、ビール缶でいえばリサイクルしやすいから環境に優しいわけじゃないですか。だからリサイクルまで考えると、これからクルマのボディもアルミが有力になるのではと感じています。NSXが30年乗れて、ボディをもう一回リサイクルして生まれ変われるとしたら、50〜60年も乗れるということです。まさにグリーンNSXですよね。燃費もいいですし。
アルミは、リサイクル性を考えると、これからの自動車技術のど真ん中の素材かもしれないですね。近年でいえば、NSX、アウディのA8、A2、初代のインサイト、ジャガーがアルミボディです。Hondaは近年すでに2車種つくっているわけです。

シャシー馬力が高いから乗りやすい

たとえば初代のタイプRでいえば、もともと280馬力のエンジンで、400馬力クラスのクルマの速さを追いかけたわけです。クルマの「走る・曲がる・止まる」の性能で言えば、「曲がる・止まる」の性能が高い。
この素質は、NSXのGTカーも基本的に同じ。
タイヤの「走る・曲がる・止まる」に関する能力を円形のグラフで表す“摩擦円”で言うと、走る=加速性能だけが高いと縦長の円になるんだけど、NSXの場合は曲がる=旋回性能が高いから横にも広い。

つまり、シャシーの運動性能がすごく高いわけです。
その一方でパワーが相対的に低いから、シャシー馬力に対してエンジン馬力が低いのが乗りやすさの根本にあると思います。もちろんシャシーのセッティングで“扱いやすさ”を徹底追求したことも大きいですが。

乗りやすく安心感が高いからNSXは楽しい

さきほどの話で、シャシー馬力よりもエンジン馬力が高いクルマって、ストレートは気持ちいいけどコーナーは恐いんです。なんとなく「飛び出しそう」といった感じがある。その点NSXは、コーナーで補助輪がついてるような踏ん張り感があるじゃないですか。だから安心してコーナリングができるし、それが楽しさに繋がるのだと思います。
「パワーをねじ伏せる」なんていうのはプロの世界の話。一般のドライバーはパワーにもてあそばれてしまうんです。だから“300馬力300ニュートン(約30kgf・m)”くらいがいいんです。今のスーパースポーツは、簡単に400ニュートン(約40kgf・m)を越えてますからね。
一般のハイエンドドライバーであれば、せいぜい気持ちよく扱えるのは200馬力ですよね。だからNSXの300馬力でも行き過ぎなんです。
でもNSXは、その行き過ぎた馬力を扱いやすいようにシャシー性能をバンと上げてるので走って楽しいわけです。

「速さか?」「楽しさか?」進化の過程で選択を迫られる

マニュアルトランスミッションのクラッチを電子制御してクラッチペダルをなくした2ペダルのMTは、速く走るためのウェポンであって、楽しく走るための道具ではないですよね。クルマには、進化の過程で分かれ道があり、「速さか?」「楽しさか?」という選択を迫られるのではないでしょうか。
みんな新しさもあって何となく「速さ」の方に行ってしまいますが、その先にあるスポーツカーは、ストレートは気持ちいいけどコーナーはドキドキものですからね。結局電子制御で安定感を確保するという話になってきます。こうなると、速いけどクルマ本来の楽しさが薄くなっていくと思います。
一方、「楽しさ」の方角に向かうと、NSXのようなクルマが出てくるわけです。

あえていえば、ロータスなんかもライトウェイトでパワーを抑えてクルマを軽くする意味で「楽しさ」の選択なんです。
おそらく上原さんの中には、ブリティッシュライトウェイトスポーツのような考え方があって、それが上原流の設計者としての合理主義なんです。無駄な重量は1gも使わないし、無駄なエネルギーを1kWも使わない。以前読んだ零戦の本にありましたが、「馬力二乗の法則」というのがあって、馬力を2倍にしたら、機体を4倍にしないといけないと。NSXは、その法則でいえば、馬力を据え置き、クルマとして運動性能の効率を上げて速さを獲得する道を選んだわけです。

MTは楽しくてエコ

サーキットでも、MTで一周走ると軽く汗をかくのですが、2ペダルだと汗をかかないんですよね。ということは、2ペダルの方が周回を多くしないと同じよろこびは得られないんです。

MTだったら5周も走ったら一杯いっぱいになるけど、2ペダルは楽だから5周走っても余裕でしょ。つまりMTの方がエコなんです。そういう意味でもMTはいい。
「MTにMT減税を」って書いていたりします(笑)。

ゆっくり走っていても、シフトすること自体が楽しい

MTのシフトノブを、ゲートから抜いて次のギアの入り口まで持っていくと、スッと食いつくように入る。そういう感覚が気持ちいいですよね。しかもその前に「いつクラッチを踏むのか?」という自分の判断があるわけですから。回転計を睨みながら、リミッターが働く瞬間にクラッチを切って…というところを狙っているわけじゃないですか。

その行為が楽しいよね。クルマとの対話なんですよ。
だから、MT乗りの人は2ペダルに乗ってもすごく上手いんです。地図を読める人がカーナビを使うとものすごく便利なのと同じ。機械はまだその程度のものなんです。

NSXは人生のパートナーとなりえる希有なスポーツカー

今回、ここで述べたことをすべて含めてスポーツカーそれぞれの個性なわけです。ポルシェのRRの手なづけ方も、フェラーリの荒々しさも個性。NSXはそれを真似ず、まったく新しい個性を打ち立てたから世界が一目置いたわけです。批判するのではなく、お互いに認め合わなければいけないと思います。
でも僕に言わせれば、NSXは最高に楽しい。他に類をみない楽しさを持ったスーパースポーツだと思います。でも、いくらシャシー馬力の高いNSXでも、限界を越えて操作はできません。

ですから、オーナーのみなさんがNSXを楽しむコツとしては、自分とNSXとの対話をより緊密にできるよう安全な場所で走行を重ねることです。そして、おそらく霞がかかっていて見ることのできないNSXの走りのよろこびに満ちたエベレストの頂をめざして、楽しみながら一歩一歩登っていってください。NSXは、まさに一生モノです。

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