緑の太陽を見たことがあるだろうか。
太陽の位置が低く、地球上の山脈などの陰からわずかだけ姿を見せているとき、
それまで赤かった太陽が、一瞬エメラルドグリーンの閃光を放つという。
その美しさと神聖さは、見る者を恍惚とさせるらしい。
1899年、今からちょうど100年前、有名なイギリスの物理学者ケルヴィン卿が、
科学誌ネーチャーに緑の太陽に関する記録を残している。
モン・ブランの日の出を見ているときにその不思議な太陽の光に出会った。
彼の場合は一瞬のできごとだったが、
その後南極の観測家が30分も続くものを見たという報告がある。
また、スエズ運河を航行する多くの人々が見たり、
緑に輝く光の内にある太陽が水色に澄んでいたなど、
外国ではかなり緑の太陽に関する報告があって、それほど珍しいものでもないようである。
しかし、日本での報告は乏しく、一生に一度見られるか否か――というものらしい。
湿度が少なく、空気が澄んでいる時 光の屈折率と、大気による散乱の特殊な調和によって
見られるという説があるが、正確なところはわかっていない。
この、日本で見られにくい緑の太陽の存在は、スポーツカーのそれと重なる。
スポーツカーは、欧州では広く受け入れられているが日本においてはまだ異端の存在の感がある。
しかし、着実に歴史を重ねれば、
いつの日か日本にもスポーツカーがひとつの文化を形成する日が来る。
緑の太陽との出会いは運に頼るしかないかも知れないが、スポーツカーの普遍化は違う。
そのために、NSXは新たな究極をめざして着実な進化を続けていく。 |