高城 稔氏(東京都杉並区在住オーナー)
歯学博士として電子顕微鏡、生化学、遺伝子工学などを駆使し、骨の形成に関する研究を行いながら、大学歯学部で解剖学の教鞭をとる大学教授。2人のご子息も手が離れ、高校生の娘さんを残すのみとなり、かねてからのスポーツカーへの憧れをNSXオーナーとなることで実現。最近タイプSへ乗り換えられ、サーキットドライブの楽しさにますます拍車がかかった。

 
NSXを購入するまで。
'66年に免許所得後、高城氏が初めて乗ったのはお父上所有のヒルマン。その後ベレットスポーツ、ホンダシビックに乗り継がれ、新登場のアコードを購入。アコードには充分に満足しながらも、米国留学のため'79年秋に友人に譲渡。2年7カ月を経て帰国。その頃偶然見かけたプレリュードのスタイルに関心を持ったが、車内スペースを考慮してビガーを購入。その後2人のご子息が免許を所得し、クルマを使う機会が増えたためプレリュードのMT車を追加購入。NSXには発表直後から大変興味をひかれていた。しかし、3人の子供達の教育にもまだまだ費用がかかる…。とはいえ、プレリュードを運転するほど、高城氏はNSXへの想いを募らせていった。
そうしてご子息から手が離れ、末の娘さんを残すのみとなった頃、奥様のひと言。「そのうちおじいちゃんになっちゃうから、乗りたいクルマに乗ったら」…これで決定。「タイプRかクーペか」迷った末、日常の使い勝手を考慮し快適性の高いクーペのMT車を購入された。

NSXの楽しみ方。
晴れてNSXのオーナーとなり、高城氏は、経済的・時間的・他様々な理由から趣味を変えることとなった。ゴルフや庭いじりなどをひとまず中止。スキーとジョギングは残したが、メインにドライビングを置いたのである。
休日は、道路がすいている早朝に奥多摩や湘南にNSXを駆ってドライブし午前中に帰宅。この楽しみを月に2回以上実行される。土曜に大学へ向かうときなど、日常の足としても頻繁にNSXを使われる。――そしてある日、NSXを走らせる高城氏の横でふたたび奥様のひと言。「思いきり楽しみたいのならサーキットへ行ったら?」。この至極適切な提案にさっそく高城氏は行動。筑波サーキットでのNSX走行会に参加し、自分の運転技術の未熟さを知るとともにサーキットドライビングの楽しさを覚える。その後、スキルアップのためにNSXオーナーズ・ミーティングのベーシック・コースを数回受講。黒澤元治講師の、「ドライビングに大切なのはスリップアングルを理解すること、すなわち“タイヤとの対話”である」というお話を拝聴した。当然ながら、最初のうちは“タイヤと対話する”余裕はまったくなかった。しかし、ミーティングに繰り返し参加し、オーナーズ・クラブへも入会。ますますサーキット走行の機会も増え、黒澤氏が力説したタイヤとの対話もほぼ実践できるようになられたという。

さらなる歓びを求めて。タイプSに乗り換える。
ドライビングアカデミーに参加した際、精巧なセンサーとコンピュータを搭載したタイプRによって、ドライビングを科学的に分析された。この時、サーキット走行でのクーペとタイプRの違いを実感。やはり、本格的にサーキット走行を楽しむならタイプRがいいのではと思う。しかしながら、「日常走行を考えるとタイプRとクーペの長所を兼ね備えたモデルが欲しい」と高城氏は考えた。まさにその時、タイプSがデビュー。発表・試乗会に参加した時には、すでに高城氏はタイプSへの代替を決意されていた。

タイプSの魅力。
「タイプSは、軽量化や排気量アップのみならず、トランスミッション・脚回り・ブレーキ・排気系などを大幅に性能アップさせながら、一般道での乗り心地を犠牲にしていないところがいいですね」と高城氏。自宅から鈴鹿へ往復されたが、クーペと比べてサスペンションの硬さをわずかに感じるくらいで非常に快適だったという。また、「トルクが厚いため一般道でも6速走行が可能だし、静かで燃費のいい市街地走行もできます。サーキットではタイプRに近い走行性能を発揮できるのが魅力」と高城氏は力説する。

スポーツカー乗りの心をわかっている。
誰もが、高性能を手にしたならそれを試したい。走る歓びをとことん追求したい。クルマの性能への満足感とともに、操る楽しさを手にして初めてスポーツカーを所有する歓びは満たされる。そうしたオーナーの思いを積極的にかなえてくれるのがホンダだった。「さすがレース好きの企業」と、高城氏は得心。「NSXを購入してよかった」と心から語った。そんな高城氏の未来は明るい。鈴鹿よりも身近なツインリンクもてぎでのミーティングも始まったからだ。もちろんすでに申し込み済み。それだけでなく1年間に参加可能なミーティングへの申し込みもスケジュール発表時点ですでに完了している。再びゴルフをはじめる機会は、さらに先送りされそうである。


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NSX Press vol.20は1997年9月発行です。