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Honda Civic WTCC スロバキアリンク テストレポート
――スロバキアリンクで第2回目となるサーキットテストを実施。Honda Civic WTCCの着実なステップアップに手応えあり!

Honda Racing Team JASは、8月27日・28日の2日間、スロバキア南西部に位置し、今年4月に初めてWTCC(世界ツーリングカー選手権)が開催された一周5.9kmのスロバキアリンクにおいて、2度目のサーキットテストを実施しました。

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  • ティアゴ・モンテイロ選手(左)、アレッサンドロ・マリアーニ(右)

8月1日に行われたヴァレルンガでの前回のテストは、気温35℃を超える猛暑の中、エンジンルーム内のエアの流れや冷却系、オイル循環系などにさまざまな問題が発生しました。しかし、それから4週間という非常に短い期間で、エンジニアたちはすべての問題に対応してスロバキアでのテストに挑むことができました。

初めてのサーキットテストであった前回のヴァレルンガでは、エンジンや足回りの調整に多くの時間を要し、周回をあまり重ねられない状況でした。一例として、初日の夕方にはターボのブースト圧が低下して走行を中断せざるを得なくなりましたが、Hondaのエンジニアは夜を徹して狭いパドックでエンジンを降ろし、すべての部品を分解してチェックしました。その結果、全チームが共通で使用することが義務づけられているターボチャージャーのタービンブレードが破損していることを確認しました。ただちにエンジンの組み直しに取り掛かり、ターボユニットを交換できたときには、すでに夜が明けていました。それはHondaの開発領域ではない部分のトラブルではあったものの、今年2月に本格的なエンジン開発が始まり、10月には鈴鹿で初戦を迎えるという異例の開発期間の短さに加え、Hondaとして初めて挑む直噴ターボのレースエンジンという、未経験の領域へのチャレンジの難しさを全員に教えてくれた出来事でした。

それから4週間、エンジニアたちは常にレースのことを考えて、でき得るすべてのアップデートを行いました。その努力が実って、スロバキアでのテストでは、ほぼ計画通りに周回を重ね、燃料噴射、ターボなどのエンジン周りと、パワーステアリング、サスペンション、ブレーキなどの足回りを中心に、膨大な項目の調整を順調にこなすことができました。

1日目の午前中には、目標としていたラップタイムでの走行を早々に達成し、前回のヴァレルンガでは途方に暮れた感があった若いチームメンバーたちの表情も一転し、とても晴れやかになりました。

2日目は、雲一つない晴天に恵まれ、路面温度も前日より上昇した好コンディションの中を、ガブリエーレ・タルクィーニ選手がさらに目標を上回るタイムをマークして、開発の方向性が正しいことを確信しました。

このように、1回目に比べて、今回の2回目のテストでは大きく前進しましたが、これに安堵することなく、Honda Racing Team JASは鈴鹿での初戦に向け、さらに開発テストを重ねていく予定です。

コメント

ガブリエーレ・タルクィーニ選手 | 2012年開発ドライバー「いい手応えを感じています。エンジンは前回よりも低速からのピックアップが格段によくなり、ドライバビリティが向上しています。シャシーは剛性がとても高く、足回りのセッティングの変更にとてもシャープに反応しており、ポテンシャルの高さを感じます。このシャシーなら、ピークパワーはもっと欲しいくらいです。Honda、JAS、ドライバーの全員で、このマシンの潜在能力を刻々と引き上げているように感じています」

アレッサンドロ・マリアーニ | Honda Racing Team JASチーム代表「どんなワークスチームでも、開発を開始してから戦闘力のあるマシンを仕上げるまでには2〜3年はかかるのが普通です。我々は昨年末にこのプロジェクトを立ち上げ、異例の短期間で開発を進めてきました。鈴鹿ラウンドまでに、まだまだやることがたくさんありますが、今回マシンのポテンシャルの高さを確認することができたのはとてもよかったです。さらに、今回のもう一つの大きな成果は、イタリア人やほかの国籍のヨーロッパ人メンバーと、日本人エンジニアとの一体感が強くなったことです。我々はHondaワークスチームとして『勝つ』ことを目標に戦っていきます」

堀内大資 | Honda Civic WTCC開発プロジェクトリーダー「ヴァレルンガではさまざまな問題が確認できましたので、スロバキアまでにすべてを解決するのは、時間との厳しい戦いでしたが、若い開発メンバーたちは本当によくやってくれました。今回はラップも重ねられていい結果が得られており、チーム全体がいい雰囲気になってきています。エンジン性能は、鈴鹿ラウンドまでにもう一段アップデートする予定で、まだまだ鈴鹿までにやることは山積みですが、日本人とヨーロッパ人エンジニア、ドライバーが一丸となって、着実に改良を続けていきます」