全15戦からなるFIMモトクロス世界選手権の第12戦チェコGPが、湿度の高い中で開催された。MX1クラスの優勝はアントニオ・カイローリ(KTM)だったが、CRF450Rを駆るHonda勢の中のベストフィニッシュは、トリッキーでテクニカルなコンディションに立ち向かった、エストニア出身のタネル・レオク(LS Motors Honda)だった。ギャップとワダチだらけとなったロケットサーキットで、レオクは、ヒート1でカイローリと堂々渡りあった末に優勝。Hondaにとって今季3勝目となるヒートウインを挙げた。
チェコ西部にあるロケットサーキットは、ハイスピードと滑りやすい路面で知られている。今年は週末まで大雨が降ったが、決勝が行われた日曜日だけは晴天となった。普段であれば急なアップダウンの硬質路面だったところも、大量の雨によって一変し、軟質でギャップだらけのコンディションとなった。コースサイドの斜面には2万1000人の観客が集い、総合結果トップ10内には2台のCRF450Rが入った。
悪天候の影響で土曜日の予選レースが中止され、代わりに実施されたタイムドプラクティスで、カタルニアGPウイナーのレオクは予選を2番手通過。決勝ヒート1では、倒れるゲートを前輪で叩き落とすほどの好スタートを見せ、オープニングから2位につけた。35分プラス2周によるレースの終盤になると、周回遅れが現れたが、25歳のレオクはラスト2周でカイローリの猛反撃をしのいでトップの座を死守した。ヒート2では1周目からリアブレーキが石を噛み込んだため、レオクはいったん止まって石を蹴り出さなければならなかった。この不運な出来事によって、レオクは中団まで順位を落とすが、粘り強い走りで猛追し、5位までばん回。この結果、総合3位で表彰台をゲットし、今季2度目のシャンパンを味わった。
総合7位には、ロシア出身のエフゲニー・ボブリシェフ(CAS Honda Team)が入賞した。1週間前にロンメルで腰を痛め、ベストコンディションではなかったものの、ボブリシェフは9位/7位に入った。新人のボブリシェフはヒート2で終始3位をキープしていたが、終盤になると負傷の痛みが出てきて、他車のアタックに耐えきることができなかった。
チームメートのガレス・スワニプールは総合17位だったが、本来であればもっと上位の成績を挙げられるはずだった。ヒート1では12位だったが、ヒート2では6位走行中にマシントラブルが発生し、リタイアを喫した。
アメリカ出身のジミー・アルバートソン(Honda Racing Martin)は、6月のラトビアGP以来初となるポイントを獲得した。先週のリンブルクGPのプラクティスで痛めた胸部は完治した。アルバートソンは総合18位だったが、ヒート2では励みとなる13位のリザルトを残している。
ゲストライダーの平田優は、イタリアのマーティン・ホンダのサポートを受け、出場2戦目にして最後となる今大会で30位/24位の結果を得た。
イタリア出身のダビデ・ガルネリ(LS Motors Honda)は、ヒート1序盤の転倒で背中を痛めてリタイア。ヒート2では出走を見合わせた。
MX2クラスではイタリアのルーキー、アレッサンドロ・バティッグ(Honda Racing Martin)がCRF250Rを駆り、依然としてヒザのケガと戦いながら30位/25位に入った。
シーズン終盤に差しかかった世界選手権のMX1ランキングでは、レオクが290ポイントで7位につけ、CRF450R最上位を維持している。6位のケン・ド・ディッカーを捉えるには、最低19ポイントが必要になる。ボブリシェフはランキング9位で、8位グザビエ・ボーグに対し6ポイント差、7位レオクとは20ポイント差である。以下、ガルネリ10位、スワニプール13位、アルバートソン17位となっている。
第13戦ブラジルGPは、新会場のカンポ・グランデで2週間後に開催される。
タネル・レオク(優勝/5位)「好成績に満足している。カイローリは周回遅れをかわすのに苦労していたので、それが自分にとってはアドバンテージになった。最後の2周は本当に難しく、いくつかミスもあったけれど、なんとかふんばることができた。ヒート2では谷底のテーブルトップの直前付近で、リアブレーキが石でロックしてしまった。蹴って直そうとして費やした時間で、ずいぶんポジションを失った。スタートそのものはよかったのに。今年は不運なことが多いけれど、反対によかったこともあったから、仕方がない」
エフゲニー・ボブリシェフ(9位/7位)「ヒート1はとてもきつくて、コーナーを読み違えていたせいもあって腕アガリを起こしていた。ロンメルで背中を痛めたあと、この1週間は全然練習できなかった。鎮痛剤を受けてずっと寝ていた。今日も痛みは残っていたので、なかなかペースを上げられなかった。ヒート2は中盤に背中を痛めるまではよかった。それ以降は同じペースをキープできなかった。部分的に無理しないで走ったところもあるし、痛みと戦いながらのレースだった」
ガレス・スワニプール(12位/28位)「ヒート1ではとてもうまくスタートが決まったのに、最初の2周を攻めきれずにポジションを失った。それでも何とかばん回して12位でフィニッシュできた。ヒート2ではもっといいスタートが切れた。20分間は5位をキープしていたし、ナグル(KTM)に抜かれてからも6位だった。残り4分というところで、マシンが止まってしまったのはアンラッキーだった」
ジミー・アルバートソン(24位/13位)「とても長い週末だったように感じた。でも、こうしてレースができるのはうれしかった。ヒート1では24位、ヒート2では13位。リザルトは上向きだし、ポイントも獲得した。あまり立派ではないことは承知しているし、このポジションが自分にふさわしいとは思っていない。それでも参戦してベストを尽すのが務めだし、今日は13位が精一杯やった結果ということだ。ブラジルGPが過ぎたら、体調がもっと回復しているだろうし、もっと好成績が残せるはずだ」
平田優(30位/24位)「またしてもきつい一日でしたが、MX1グランプリのレースを楽しむことができました。チームとホンダ・ヨーロッパに感謝しています」
ダビデ・ガルネリ(37位/欠場)「昨日のマディコンディションはいい感じで走れたし、予選では狙ったクリアラップで9位のタイムを出せた。決勝ヒート1では12位まで上がったし、トップ10入りも不可能ではないと思った矢先、コーナーでクラッシュして背中をひねってしまった。激痛で動けなかった。ドクターの診断では大したことはないようだが、週明けに精密検査を受けるつもりだ。ロケットは以前から好きなコースだっただけに、悔しくてたまらない」
MX1(レース1)
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム | 差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 40 | T.レオク | Honda | 39:08.429 | - |
2 | 222 | A.カイローリ | KTM | 39:11.886 | +03.457 |
3 | 25 | C.デサール | スズキ | 39:15.679 | +07.250 |
4 | 19 | D.フィリッパーツ | ヤマハ | 39:36.200 | +27.771 |
5 | 2 | M.ナグル | KTM | 39:38.359 | +29.930 |
6 | 11 | S.ラモン | スズキ | 40:01.760 | +53.331 |
9 | 777 | E.ボブリシェフ | Honda | 40:23.965 | +1:15.536 |
12 | 8 | G.スワニプール | Honda | 40:37.830 | +1:29.401 |
24 | 702 | J.アルバートソン | Honda | 40:14.953 | +1Lap |
27 | 95 | A.ジュスト | Honda | 40:44.682 | +1Lap |
30 | 66 | 平田優 | Honda | 39:46.078 | +2Laps |
32 | 221 | G.ビヒト | Honda | 27:12.917 | +8Laps |
36 | 74 | I.スタインバーグス | Honda | 18:09.690 | +12Laps |
37 | 39 | D.ガルネリ | Honda | 10:40.763 | +15Laps |
MX1(レース2)
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム | 差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 222 | A.カイローリ | KTM | 40:34.824 | - |
2 | 25 | C.デサール | スズキ | 40:37.861 | +03.037 |
3 | 11 | S.ラモン | スズキ | 41:41.602 | +1:06.778 |
4 | 2 | M.ナグル | KTM | 41:44.144 | +1:09.320 |
5 | 40 | T.レオク | Honda | 41:45.731 | +1:10.907 |
6 | 4 | K.ストリボス | スズキ | 41:46.665 | +1:11.841 |
7 | 777 | E.ボブリシェフ | Honda | 41:52.259 | +1:17.435 |
13 | 702 | J.アルバートソン | Honda | 41:05.029 | +1Lap |
21 | 95 | A.ジュスト | Honda | 42:09.225 | +1Lap |
22 | 74 | I.スタインバーグス | Honda | 42:13.377 | +1Lap |
24 | 66 | 平田優 | Honda | 41:00.414 | +2Laps |
28 | 8 | G.スワニプール | Honda | 31:55.952 | +5Laps |
32 | 221 | G.ビヒト | Honda | 17:55.023 | +13Laps |
MX2(レース1)
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム | 差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 94 | K.ロクセン | スズキ | 39:33.781 | - |
2 | 1 | M.ムスキャン | KTM | 40:04.707 | +30.926 |
3 | 111 | J.ハーリングス | KTM | 40:09.189 | +35.408 |
4 | 89 | J.バン・ホービーク | カワサキ | 40:11.330 | +37.549 |
5 | 11 | S.シンプソン | KTM | 40:26.749 | +52.968 |
6 | 21 | G.ポーリン | ヤマハ | 40:29.950 | +56.169 |
21 | 152 | P.ペトロフ | Honda | 40:43.997 | +1Lap |
26 | 36 | D.ウルリッヒ | Honda | 41:34.116 | +1Lap |
30 | 92 | A.バティッグ | Honda | 41:39.342 | +2Laps |
34 | 35 | N.ラーセン | Honda | 26:18.866 | +8Laps |
MX2(レース2)
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム | 差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | M.ムスキャン | KTM | 38:58.574 | - |
2 | 94 | K.ロクセン | スズキ | 38:59.090 | +00.516 |
3 | 21 | G.ポーリン | ヤマハ | 39:41.971 | +43.397 |
4 | 183 | S.フロサール | カワサキ | 39:56.928 | +58.354 |
5 | 89 | J.バン・ホービーク | カワサキ | 40:13.139 | +1:14.565 |
6 | 11 | S.シンプソン | KTM | 40:22.888 | +1:24.314 |
16 | 35 | N.ラーセン | Honda | 39:52.946 | +1Lap |
17 | 152 | P.ペトロフ | Honda | 40:03.791 | +1Lap |
20 | 36 | D.ウルリッヒ | Honda | 40:09.204 | +1Lap |
25 | 92 | A.バティッグ | Honda | 39:16.012 | +2Laps |
ライダー(MX1)
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | A.カイローリ | KTM | 531 |
2 | C.デサール | スズキ | 447 |
3 | D.フィリッパーツ | ヤマハ | 394 |
4 | M.ナグル | KTM | 382 |
5 | S.ラモン | スズキ | 376 |
6 | K.ド・ディッカー | ヤマハ | 309 |
7 | T.レオク | Honda | 290 |
9 | E.ボブリシェフ | Honda | 270 |
10 | D.ガルネリ | Honda | 213 |
13 | G.スワニプール | Honda | 182 |
17 | J.アルバートソン | Honda | 90 |
26 | B.タウンリー | Honda | 25 |
40 | D.フェリス | Honda | 7 |
43 | B.アンダーソン | Honda | 5 |
46 | R.ヒューズ | Honda | 4 |
47 | M.ポティセク | Honda | 4 |
50 | D.パーシン | Honda | 2 |
マニュファクチャラー(MX1)
順位 | マニュファクチャラー | ポイント |
---|---|---|
1 | KTM | 560 |
2 | スズキ | 497 |
3 | ヤマハ | 448 |
4 | Honda | 399 |
5 | カワサキ | 332 |
6 | アプリリア | 192 |
7 | TM | 145 |
8 | CCM | 25 |
9 | ハスクバーナ | 4 |
ライダー(MX2)
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | M.ムスキャン | KTM | 527 |
2 | K.ロクセン | スズキ | 449 |
3 | S.フロサール | カワサキ | 404 |
4 | J.ハーリングス | KTM | 391 |
5 | S.シンプソン | KTM | 329 |
6 | Z.オズボーン | ヤマハ | 313 |
18 | N.ラーセン | Honda | 80 |
38 | P.ペトロフ | Honda | 7 |
40 | J.デコティス | Honda | 6 |
42 | F.ノレン | Honda | 4 |
46 | A.バティッグ | Honda | 3 |
47 | R.ニイェガード | Honda | 2 |
51 | A.ジュスト | Honda | 2 |
53 | D.ウルリッヒ | Honda | 1 |
マニュファクチャラー(MX2)
順位 | マニュファクチャラー | ポイント |
---|---|---|
1 | KTM | 576 |
2 | スズキ | 473 |
3 | カワサキ | 424 |
4 | ヤマハ | 414 |
5 | Honda | 97 |
6 | TM | 34 |