曇り空の下で開催された、FIMモトクロス世界選手権全15戦の第10戦スウェーデンGP。MX1クラスではアントニオ・カイローリ(KTM)がウイナーとなり、一方のMX2クラスではスティーブン・フロサール(カワサキ)が総合優勝を果たした。Honda勢の中で最も輝いていたのは、またしてもエフゲニー・ボブリシェフ(CAS Honda Team)。このロシア生まれのMX1ルーキーは、CRF450Rを駆り、2戦連続で総合4位に入賞した。
どんよりとした暑さに覆われた土曜日のコースコンディションはドライだったが、日曜日の朝の降雨によって砂利混じりの緩い表面は、滑りやすくギャップだらけに一変した。天候の急変にもかかわらず、岩だらけの丘に面した会場には2万2000人の大観衆が集い、グランプリカレンダーの中でも重要で根強い人気のイベントであることをうかがわせた。
ボブリシェフは単独5位でヒート1のチェッカーフラッグを受けたが、ヒート2では三つどもえの2位争いを繰り広げた。22歳のボブリシェフは、クレメント・デサール(スズキ)、スティーブ・ラモン(スズキ)を相手に競り合ったが、3者が仕掛け合いを始めるとゼッケン777のボブリシェフは2人のベルギー人に挟まれて、あわや転倒というピンチにも直面した。レース終盤には大幅なタイムロスもあって4位に甘んじたが、今季のベストスコアに次ぐ得点を加算した。
総合9位(7位/12位)には、ボブリシェフのチームメート、ガレス・スワニプールが入った。タネル・レオク(LS Motors Honda)、ダビデ・ガルネリ(LS Motors Honda)、ジミー・アルバートソン(Honda Racing Martin)の3人が不運に見舞われた一方、スワニプールはHonda勢の中で2番手となり、彼自身にとってもまずまずのリザルトを得た大会となった。
5月にスペインのベルピッグで開催された第5戦カタルニアGPのウイナーであるレオクは、マシントラブルでヒート1をリタイア。コースへの慣熟という点で少々ハンディキャップを負ったが、ヒート2ではエストニアン・エクスプレスの異名に恥じないスピードを披露し、9位でフィニッシュ。総合では12位となる成績を収めた。
チームメートのガルネリは、両ヒートを通じて好スタートを決めた。しかし、ヒート1では序盤で2番手をキープしながら、転倒でクラッチレバーを壊してリタイア。ヒート2でも一時5番手を走り、好調をアピールしていたものの、またしても転倒。クラッチレバーを曲げてしまい、なんとか完走しての14位となった。
アルバートソンは、マシントラブルによりヒート1をリタイア。さらにヒート2では転倒で右手の中指を負傷した。
ボブリシェフは世界選手権MX1ランキング8位に浮上。7位のケン・ド・ディッカー(ヤマハ)に46ポイント差と迫っている。9位レオクに対しては4ポイントのリード。10位にはガルネリ、12位にはスワニプールがつけている。
7月中旬からはレース日程にも夏休みがあり、次回、第11戦リンブルクGPは8月1日、サンドの難所として恐れられているベルギーのロンメルで開催される。
エフゲニー・ボブリシェフ(MX1 5位/4位)「ヒート1ではスタートに失敗した。自分のゲートだけ倒れるのが遅かったようだし、2コーナーでラインをブロックされたことも響いた。かなり後方から7番手までばん回した後、単独走行になって前を行くマックス・ナグル(KTM)のことだけをマークする状況になった。同じようなライン取りだったけれど、ナグルの方が少し速かったので、ミスをしないで追いかけるのは難しかった。それでもナグルが転倒し、自分は5番手に上がった。ヒート2はもっとすごかった。カイローリの真後ろにつけながら、気持ちよく走ることができた。彼のラインがすばらしかったので、観察しながら学ぶことができた。カイローリがミスをしたときに少し接近したけれど、すぐに逃げられてしまった。その後はデサールを追いかけるレースになって、パッシングを試みたけれど、ちょうどそのときに後ろからラモンに仕掛けられ、デサールとの間に挟まれる形になった。デサールの攻略は予想以上に難しく、表彰台には上がれなかった。しかし、次戦以降で彼を上回る走りをしたいし、必ず実現できると思う。これからロンメルのサンドに備えて特訓しないといけない」
ガレス・スワニプール(MX1 7位/12位)「ヒート1についてはとてもハッピーで満足している。スタートもよかったし、全力を注ぎ込んで戦えた。昨日、今日とコースには手こずったけれど、いいペースを保ちながらトップグループに絡み、7位でフィニッシュできた。この戦果はうれしい。ヒート2のスタートはそれほどよくなかったし、集団の中を走るのは大変だった。あまりうまく走れなかったが、なんとか12位に入れたし、ランキングをひとつ上げることができた。次のロンメルは得意なコースだし、両親が応援に来てくれることになっている。過去にも母親が観に来るといいことがあったので、そんな幸運をまた再現したいと思っている」
タネル・レオク(MX1 29位/9位)「またしても不運……。土曜の予選レースはうまくいかず、したがって不利なグリッドから好スタートを決めることはできなかった。とにかくヒート1のスタートは7番手辺りで、そのポジション自体は悪くなかったけれど、最初の何個目かのコーナーのアウト側バンクで、マシントラブルで転倒してしまった。ヒート2ではもっとスタートが悪く、上位までばん回するのは大変だった。コースコンディションがかなり変わってしまったので、レーシングスピードでベストラインを探すのに時間を費やしてしまった。レース終盤ではうまく乗れたと思う」
ダビデ・ガルネリ(MX1 26位/14位)「ほかのライダーたちに対して大きなポイントリードをつけるレースになったはずだったのに、逆に差をつけられてしまった。ヒート1ではとても乗れていて、序盤の6〜7周は2番手をキープしていた。その後デビッド・フィリッパーツ(ヤマハ)と競り合った。ファステストラップも記録したけれど、その後に転倒でクラッチレバーを反対側に曲げてしまった。その状態でエンジンを再始動できず、リタイアせざるを得なかった。ヒート2ではヒート1ほどの好スタートではなかったけれど、悪くもなかった。序盤の何周か4番手にいたけれど、またミスをしてクラッチレバーを壊してしまった。ただし今度はギアを入れて走ることができた。もちろん、クラッチを使わずにこのコースを走るのは難しく、スローペースになってしまった」
ジミー・アルバートソン(MX1 27位/28位)「ヒート1ではエンジンのパワーが落ちて、最終的に止まった。すべてが改善されたヒート2では、18番手スタートから12番手まで追い上げ、目の前にいる上位グループに食らいついていた。ところがあるコーナーの立ち上がりで滑って、フェンスの外側に飛び出してしまった。手の指を切ってしまったけれど、応急処置も受けたし大丈夫。1週間以内には練習を再開できるはずだ」
MX1(レース1)
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム | 差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 222 | A.カイローリ | KTM | 39:45.425 | - |
2 | 25 | C.デサール | スズキ | 39:49.465 | +04.040 |
3 | 19 | D.フィリッパーツ | ヤマハ | 39:51.476 | +06.051 |
4 | 11 | S.ラモン | スズキ | 39:53.341 | +07.916 |
5 | 777 | E.ボブリシェフ | Honda | 40:15.967 | +30.542 |
6 | 2 | M.ナグル | KTM | 40:18.233 | +32.808 |
7 | 8 | G.スワニプール | Honda | 40:46.001 | +1:00.576 |
21 | 74 | I.スタインバーグス | Honda | 40:31.939 | +1Lap |
25 | 500 | M.ノーレン | Honda | 19:10.753 | +12Laps |
26 | 39 | D.ガルネリ | Honda | 19:50.414 | +12Laps |
27 | 702 | J.アルバートソン | Honda | 11:47.429 | +16Laps |
29 | 40 | T.レオク | Honda | 2:18.037 | +21Laps |
MX1(レース2)
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム | 差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 222 | A.カイローリ | KTM | 39:13.172 | - |
2 | 25 | C.デサール | スズキ | 39:15.715 | +02.543 |
3 | 11 | S.ラモン | スズキ | 39:17.632 | +04.460 |
4 | 777 | E.ボブリシェフ | Honda | 39:25.869 | +12.697 |
5 | 121 | X.ブーグ | カワサキ | 39:26.761 | +13.589 |
6 | 2 | M.ナグル | KTM | 39:36.195 | +23.023 |
9 | 40 | T.レオク | Honda | 40:06.207 | +53.035 |
12 | 8 | G.スワニプール | Honda | 40:24.355 | +1:11.183 |
14 | 39 | D.ガルネリ | Honda | 40:54.961 | +1:41.789 |
21 | 500 | M.ノーレン | Honda | 39:37.921 | +1Lap |
23 | 74 | I.スタインバーグス | Honda | 40:11.263 | +1Lap |
28 | 702 | J.アルバートソン | Honda | 15:44.417 | +16Laps |
MX2(レース1)
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム | 差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 183 | S.フロサール | カワサキ | 40:30.167 | - |
2 | 111 | J.ハーリングス | KTM | 40:45.226 | +15.059 |
3 | 89 | J.バン・ホービーク | カワサキ | 40:49.423 | +19.256 |
4 | 1 | M.ムスキャン | KTM | 40:54.847 | +24.680 |
5 | 21 | G.ポーリン | ヤマハ | 40:57.161 | +26.994 |
6 | 151 | H.クラッス | ヤマハ | 41:08.420 | +38.253 |
17 | 35 | N.ラーセン | Honda | 40:35.856 | +1Lap |
22 | 392 | F.ノレン | Honda | 40:58.150 | +1Lap |
27 | 95 | A.ジュスト | Honda | 42:38.252 | +1Lap |
32 | 264 | F.ベングトソン | Honda | 29:36.731 | +7Laps |
35 | 152 | P.ペトロフ | Honda | 24:13.227 | +10Laps |
36 | 260 | R.ニイェガード | Honda | 13:46.164 | +15Laps |
37 | 49 | E.ヘイビー | Honda | 12:09.009 | +16Laps |
MX2(レース2)
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム | 差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 94 | K.ロクセン | スズキ | 39:28.824 | - |
2 | 183 | S.フロサール | カワサキ | 39:33.248 | +04.424 |
3 | 21 | G.ポーリン | ヤマハ | 39:41.101 | +12.277 |
4 | 111 | J.ハーリングス | KTM | 39:45.334 | +16.510 |
5 | 1 | M.ムスキャン | KTM | 39:47.037 | +18.213 |
6 | 89 | J.バン・ホービーク | カワサキ | 40:18.338 | +49.514 |
17 | 392 | F.ノレン | Honda | 41:10.084 | +1:41.260 |
19 | 260 | R.ニイェガード | Honda | 39:39.193 | +1Lap |
20 | 35 | N.ラーセン | Honda | 39:45.247 | +1Lap |
22 | 152 | P.ペトロフ | Honda | 40:05.167 | +1Lap |
29 | 95 | A.ジュスト | Honda | 27:19.897 | +8Laps |
30 | 49 | E.ヘイビー | Honda | 22:47.963 | +10Laps |
ライダー(MX1)
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | A.カイローリ | KTM | 434 |
2 | C.デサール | スズキ | 367 |
3 | D.フィリッパーツ | ヤマハ | 331 |
4 | S.ラモン | スズキ | 315 |
5 | M.ナグル | KTM | 306 |
6 | X.ブーグ | カワサキ | 276 |
8 | E.ボブリシェフ | Honda | 223 |
9 | T.レオク | Honda | 219 |
10 | D.ガルネリ | Honda | 196 |
12 | G.スワニプール | Honda | 149 |
17 | J.アルバートソン | Honda | 82 |
26 | B.タウンリー | Honda | 25 |
39 | D.フェリス | Honda | 7 |
43 | R.ヒューズ | Honda | 4 |
44 | M.ポティセク | Honda | 4 |
46 | D.パーシン | Honda | 2 |
マニュファクチャラー(MX1)
順位 | マニュファクチャラー | ポイント |
---|---|---|
1 | KTM | 463 |
2 | スズキ | 417 |
3 | ヤマハ | 384 |
4 | Honda | 323 |
5 | カワサキ | 303 |
6 | アプリリア | 148 |
7 | TM | 145 |
8 | CCM | 11 |
9 | ハスクバーナ | 4 |
ライダー(MX2)
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | M.ムスキャン | KTM | 438 |
2 | K.ロクセン | スズキ | 355 |
3 | S.フロサール | カワサキ | 355 |
4 | J.ハーリングス | KTM | 326 |
5 | Z.オズボーン | ヤマハ | 275 |
6 | S.シンプソン | KTM | 268 |
18 | N.ラーセン | Honda | 63 |
38 | J.デコティス | Honda | 6 |
40 | F.ノレン | Honda | 4 |
43 | P.ペトロフ | Honda | 3 |
47 | A.ジュスト | Honda | 2 |
48 | R.ニイェガード | Honda | 2 |
51 | A.バティッグ | Honda | 1 |
マニュファクチャラー(MX2)
順位 | マニュファクチャラー | ポイント |
---|---|---|
1 | KTM | 482 |
2 | スズキ | 379 |
3 | カワサキ | 363 |
4 | ヤマハ | 346 |
5 | Honda | 80 |
6 | TM | 18 |