HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート

2017.09.13 Vol.176 Round 13
HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート

マルケスが最終ラップで大逆転。今季4勝目をつかみ取る

第13戦サンマリノGPは、今季3回目のウエットレースとなり、予選3番手からトップグループに加わったマルク・マルケスが、最終ラップに前を走るダニーロ・ペトルッチ(ドゥカティ)を逆転して今季4勝目を挙げました。断続的に雨脚が強くなる一日。Moto3クラスは完走15台、Moto2クラスも完走16台というサバイバルレースとなりました。MotoGPクラスも序盤は激しく水しぶきの上がる厳しいコンディションとなり、5台が転倒リタイア、完走17台というレースとなりました。

その中でマルケスは、ホルヘ・ロレンソ(ドゥカティ)、ペトルッチ、アンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ)らホームGPに闘志を燃やすドゥカティ勢とトップグループを形成しました。序盤トップに立ったロレンソは7周目に転倒リタイア。代わってトップに立ったペトルッチが首位を走り、マルケスとドヴィツィオーゾが追撃するという展開になりました。

終盤はドヴィツィオーゾが後退。ペトルッチとマルケスの一騎打ちとなり、最終ラップに勝負を賭けていたというマルケスが、28周目の1コーナーでペトルッチをパス、ラスト1周でファステストラップを更新する快走で、見事、逆転優勝を果たしました。

これでマルケスは199点を獲得し、今大会3位のドヴィツィオーゾと同ポイントとなり、2位以下のリザルトの差で総合首位に浮上。前戦イギリスGPでトラブルのためにノーポイントに終わり総合2位にダウンしていたマルケスですが、その遅れを一気に取り戻しました。

チームメートのダニ・ペドロサは、ウエットコンディションでタイヤの温度が上がらず、グリップしないタイヤとの格闘となりました。コース上の雨量が少なくなったレース終盤は、タイヤの温度が多少上がるようになり、ラップタイムも一気に改善。それまでより一周約4秒も短縮しましたが、中盤までの遅れが影響して今季ワーストの14位という残念な結果でした。

ジャック・ミラーが今季ベストタイの6位。チームのホームGPに気合満点のカル・クラッチローは、予選4番手からトップグループに加わるも転倒を喫し、再スタートを切って13位。ティト・ラバトは転倒リタイアでした。

今季、もっとも厳しいコンディションとなった第13戦サンマリノGPをRepsol Honda Teamのリビオ・スッポ監督が振り返ります。

―今季3回目のウエットレース。スタートからゴールまでウエットコンディションになったのは今大会が初めてでしたが、今大会の戦略はどういうものでしたか?

「すべてのプラクティスセッションは太陽の日差しが降り注ぐ中で行われましたが、日曜の午前中に雨が降り始めました。ウエットコンディションになると、このサーキットはとても滑りやすいことはMoto3とMoto2クラスを見てわかりました。マルクは午前中のウォームアップセッションで小さな転倒はあったものの最速だったので、どうすればウエットの中で速く走れるか分かっていました。そのため彼の戦略はトップグループについていって最後にアタックするというものでした。そして今回も彼は完ぺきな仕事をしました。しかし、ダニの方はこのようなコンディションの中で苦戦していたのは確かです。路面温度が低く、タイヤをきちんと温めることができず、これはレースでも同じでした」

―今大会のポジティブポイントと、ネガティブポイントを教えてください。

「ポジティブなことはもちろんマルクの優勝です。これで彼は残り5戦でドヴィツィオーゾと同ポイントとなり、チャンピオンシップのトップに戻ってきました。残りのシーズンが面白くなってきましたね。マルクはタイトル獲得の意欲を見せていますし、どのような状況でも速さがあるということを示しています。ネガティブなのはダニの結果です。昨シーズンのミサノで彼は優勝しました。今日、もし晴れていたら、すばらしいレースになっていたはずでした。残念ながらレインタイヤでは、あれ以上プッシュすることは不可能でした」

―レース中、ピットウォールから見ていた感想はどういうものですか?

「正直、とても長く感じました。ミスをしやすい状況で、実際に多くのライダーが転倒していました。そのため僕たちも常にハラハラしていました。最後にマルクがダニーロにアタックした時はとてもうれしかったです。ダニーロもすばらしいレースをしました。優勝したマルクが最終ラップにファステストラップを出したこともうれしく思います」

―これまでミサノはHondaにとって最も苦手なサーキットの一つでした。それが大会3連覇を達成。マルクは今季4勝目を挙げました。

「HRCは常にRCVを改善するために取り組んでいます。そしていい部分を維持し、マイナスの部分を減らすように心がけています。常に目標はすべてのサーキットで競争力の高いマシンを作ることです。私たちのスポーツでは、ライダーが大きな違いを生みます。昨年はダニが無敵でした。今シーズンはマルクがすばらしい仕事をしました」

―今大会のインサイドストーリーを教えてください。

「キアヌ・リーヴスが来てくれて、一緒に少し過ごせたことがとてもうれしかったです。彼は僕たちの世界に対して大変興味を持っていて、仕事の合間にMotoGPのレースを観に来てくれます。彼のモータースポーツに対する熱意は大きく、友人のガード・ホリンダーとともにArch Motorcycleというブランドを立ち上げ、ハンドメイドのすばらしいモーターサイクルを製造しています」

後半戦のスタートとなったチェコGP、オーストリアGPの2連戦で、優勝&2位とすばらしい結果を残してきたマルケス。しかし、後半の3戦目となったイギリスGPで今季3回目のノーポイントのレースとなり総合2位にダウンしました。その結果、総合首位のドヴィツィオーゾを9点差で追う形となりましたが、第13戦サンマリノGPで今季4勝目を挙げて、再び、総合首位に浮上。2年連続4回目のタイトル獲得に向けて、大きな一勝となりました。

「キャリアの中で最高のレースの一つ」と振り返るマルケス。最高のモチベーションの中で、次戦は、ホームGPとなる第14戦アラゴンGPに挑みます。アラゴンは、マルケスがシーズンを通して最も得意とするサーキット。2戦連続今季5勝目が期待されます。今大会、グリップ不足に苦しんだペドロサ、転倒再スタートとなったクラッチローも得意とするサーキットだけに、Honda勢の活躍に注目されます。

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