Livio Suppo Track Report Livio Suppo Track Report

Vol. 154

冷静な判断による見事な逆転勝利。ザクセンリンクで3年連続の1-2フィニッシュ

第9戦ドイツGPは、ウエットからドライへと変化する難しいレースとなりました。これで前戦オランダGPから2戦連続の“フラッグ・トゥ・フラッグ”のレース。タイヤの選択、マシンチェンジのタイミングなど、ライダーの判断はもちろんのこと、チームの総合力を問われるレースとなりました。

厳しい条件となった戦いで、今季4度目のポールポジションからスタートを切ったマルク・マルケス(Repsol Honda Team)は、ウエットコンディションではタイヤの選択がうまく決まらずペースが上がりませんでした。その結果、コースアウトを喫するなど9番手までポジションを落としましたが、先行するライバルたちに比べ、いち早くスリックタイヤを装着するマシンにチェンジ。その作戦が見事に的中し、すばらしい追い上げを見せて逆転勝利を達成しました。

マルケスがマシンをチェンジした18周目は、ライン上が乾いているだけというリスクの大きな路面コンディションでしたが、みるみる乾いていく路面を追い風に、ウエットコンディションでの遅れを一気に取り戻し、25周目にトップに浮上すると、あっという間に後続を引き離し、今季3勝目を挙げました。これでマルケスは、ドイツGP4連勝。125cc、Moto2時代を含め、7年連続ポール・トゥ・ウインを達成しました。

2位には、カル・クラッチロー(LCR Honda MotoGP)が入り、今季初表彰台を獲得。3年連続でHondaマシンの1-2フィニッシュとなりました。

予選10番手から決勝に挑んだダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)は、ウエットコンディションとなったウォームアップでトップタイムをマーク。決勝の走りに注目されましたが、思うようにペースが上がらず、6位に終わりました。ペドロサは、09年から15年まで3勝を含み7年連続でドイツGPで表彰台に上ってきましたが、不安定な天候の影響もあり、連続記録を更新することはできませんでした。

―今回も難しいレースになりましたが、今大会のレース戦略はどんなものでしたか?

「天候が安定していなかったので、展開を予測するのはとても難しいレースでした。朝のウォームラップではダニがファステストでしたし、マルクは大クラッシュしました。それを受けてグリッドでは、フロントタイヤにスーパーソフトを選択することにしました。それは、チームメートのダニ、そして、ホルヘ(ロレンソ選手)とバレンティーノ(ロッシ選手)も同じでした。

  しかし、スーパーソフトは、彼のライディングスタイルには合わず、ベストオプションとは言えませんでした。しかし、マルクはレース序盤、そのタイヤでできる限り、マシンをコントロールしていました。その後、ピットインしてマシンをスイッチするのですが、そのタイミングは完ぺきでした。もちろんスリックタイヤでの1周目は難しかったと思います。しかし、こういうことをやってのけるマルクの才能はずば抜けていますし、今回もそれを見せつけられましたね。

  一方、ウォームアップでトップタイムをマークしたダニは、残念ながら、そこで感じたようなフィーリングにはならず、苦労していました。しかし、その後も手堅くコントロールして6位でフィニッシュしました」

―今回のレースでよかったところ、悪かったところは?

「よかったのは、マルクがドイツGPで7連勝したことですね。完ぺきな仕事を成し遂げたと思いますし、我々は彼を祝福しなければなりません。メカニックたちの仕事もすばらしいものでした。ウォームアップでクラッシュしたあと、マシンを修復しなければならなかったのですが、完ぺきな状態に仕上げてコースに送り出しましたからね。

  悪かった点は特にありません。強いて言えば、決勝に向けて調子を上げていたダニが、不安定なコンディションとなったレースで十分に力を出せなかったことですね」

―レースをピットウォールから見ていて、どんな気持ちでしたか?

「“フラッグ・トゥ・フラッグ”のレースは、いつもハイテンションになりますね。レース序盤は、マルクがフロントタイヤに手こずっているのが分かったし、コンディションが変化すれば、マルクがマシンをスイッチするためにピットに戻ってくることは分かっていましたが、そのタイミングがいつなのかと思っていました。いつでもいいように準備はできていましたが、こういうときは、ミスは簡単に起こりえますからね。しかし、彼はミスをせず、勝利を手にいれました」

―マルクがコースアウトを喫し、9番手までポジションを落としたときのピットボックスの雰囲気はどうでしたか?また、そのとき、マルクはまだ勝てるチャンスがあると信じていましたか?

「まず言えることは、彼がとても素早く『オフロードモード』のスイッチを入れることができたということですね。その結果、あの危ない瞬間を回避することができたし、それを目の当たりにして、とてもうれしかったですね。今日のようなコンディションだと、なにが起こるか予測するなんて不可能なことですからね。しかし、マルクにとって不可能なことなどないということを我々は知っています。今大会も勝利を信じていました」

―今大会、何か、サイドストーリーはありますか?

「MotoGPマシンのロードバージョンである『RCV213V-S』のオーナーに会うことができたのはとてもうれしいことでした。彼はLCRチームのゲストとしてパドックを訪れていました。レース前にルーチョ・チェッキネロがカル・クラッチローのマシンの詳細を説明していました。レース用マシンとそのロードバージョンを見比べることは、オーナーにとって、とても興味深いことだったと思います」

マルケスは今季3勝目を挙げて8度目の表彰台に立ちました。その結果、今大会を終えて総合首位をキープするだけでなく、今大会15位に終わった総合2位のホルヘ・ロレンソ選手(ヤマハ)に48点差、総合3位で今大会8位のバレンティーノ・ロッシ選手(ヤマハ)に59点差としてシーズン前半を締めくくりました。

後半戦は、レッドブルリンクで初開催となる第10戦オーストリアGP、そして第11戦チェコGPの2連戦となります。マルケスにとっては2年ぶり3度目のタイトル獲得に向けて重要な2連戦。ペドロサにとっては、今季初優勝を目指す戦いとなります。

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