Honda Riders Close Up 〜ワークスマシンを駆って、世界に挑むライダー〜

Moto3 ジュール・ダニーロ Ongetta-Rivacold

Moto3 ジュール・ダニーロ Ongetta-Rivacold
Profile
生年月日
1995/05/18
出身地
イタリア
身長・体重
175cm・58kg
チーム(マシン)
Ongetta-Rivacold(NSF250RW)
2015年の成績
Moto3 総合26位

2016年シーズンの折り返し地点となる第9戦ドイツGPを、ジュール・ダニーロ(Ongetta-Rivacold)は9位でフィニッシュしました。その一つ前の第8戦オランダGPでは6位。シーズン前半戦の9戦を終えて、ランキングは13位につけています。フル参戦を開始して以来、今年は最も安定した成績を残していると言えるでしょう。


「今年は、かなり成長できていると思います。昨シーズンも滑り出しは悪くなかったのですが、いいときと悪いときの差が激しすぎて、何度も転倒してしまい、その結果、自信にも悪影響をもたらしてしまいました。今年は、プレシーズンテストは完ぺきではなかったのですが、開幕戦では11位のリザルトを残せました。その後も、何度もトップ10でフィニッシュしているので、だいぶよくなってきている手応えがあります。マシンも、今後さらに上位で戦えるものに仕上がっていくと思います」


ダニーロ自身は、昨年まで苦戦を強いられていたのは、いい成績を残そうと焦る気持ちが空回りしていたからだと分析をしています。


「14年はライバルメーカーのマシンで、苦戦が続きました。その後、今のチームへ移ってきてチームとマシンに恵まれることになりましたが、がんばっていい成績を残そうという思いが強すぎて、自分にプレッシャーをかけすぎたのかもしれません。シーズン初頭には無駄なミスや転倒が多く、3戦続けて転倒し、次のレースでポイントを取ったかと思ったら、その次でまた転倒、ということの連続でした。でも、昨年の教訓からたくさんのことを学べました。今年はチームも2年目で、なにをすればいいか、なにをしなくてもいいか、がすでに分かる環境なので、開幕からいいスタートを切れました」

ジュール・ダニーロ ジュール・ダニーロ

ダニーロの言葉は、特にここ数戦の成績に反映されています。第6戦イタリアGPで11位、第7戦カタルニアGPはトップグループを走行中に転倒に巻き込まれてしまいましたが、次戦のオランダGPで自己ベストリザルトの6位、第9戦ドイツGPでは9位と、確実に好成績を残す走りを実現しているのです。では、昨年までの苦戦から今年の安定感のある走りに変化した転機はなんだったのでしょうか? その秘密はブレーキングにある、とダニーロは明かします。


「フロントが決まるようになってきたので、コーナーの進入で自信を持って強くブレーキできるようになりました。これが最大の進歩だと思います。このハードなブレーキングで、前にいるライダーをオーバーテイクしやすくなり、レース中もだいぶうまく走れるようになったんです」


また、レースディスタンス全体を考慮し、落ち着いてレースを組み立てられるようになったことも、今の走りにつながっていると言えそうです。過去の経験から学んだことは、焦りすぎないことだと、ダニーロは話します。


「昨年は、例えばトップ10圏内で終えられそうなレースでも、終盤に転倒することが何度もありました。そうした経験は、確かに悔しいです。けれども、その悔しさから、もっと落ち着くことを学びました。レースは長く、序盤から焦ってもしょうがない、ということですね。焦りすぎると、かえってレース後半を駄目にしてしまいがちですから」


将来の夢はもちろん、世界チャンピオンになることです。


「そうじゃないと、ここを走っていません。最高峰はMotoGPなので、そこに到達するのはだれしもが夢見ていることだと思います」


ところで、ミラノで生まれたフランス国籍のダニーロは、両親が中国やチェコで暮らし、自身はネイティブレベルの英語力を備えており、国際色の豊かな環境で育ちました。レースをしていなければ、ダニーロは今ごろなにをしていたでしょうか?


「そうですね。スポーツは全般的に好きですが、もしライダーでなければ、金融や財務を勉強する方向に進んでいたかもしれません。国際バカロレアの学校に通っているころ、経済はやりがいのある科目でしたからね。だから、ひょっとしたらそっちに進んでいた可能性もあるかも、と思いますが、幸いにも僕はレースの道に進むことができました。もちろん、オフィスワークよりもこっちのほうがずっと楽しいですよ!」

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